フィギュアな彼女

奏 隼人

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ミキの胸騒ぎ

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二日目…運命のフリー演技の大会が幕を開けた…



星間大会と言っても企業所属選手などが参加していない学生杯はショート、フリー共に成績如何に依らず滑走順は同じである…

ミキとリカはロッカールームに向かう…

ドアを開けようとしたその時…着替え終わったヴェガスクールの選手達が出て来た。


「あら…おはよう!」

「おはようございます!」

「おはよう!リカちゃん…姐さん」



「こら!!姐さんはヤメろって言ったでしょ…おはよう!」

「おはようございます!」

他の選手達のピリピリした空気感の中、五人は意外に和気藹々わきあいあいと挨拶を交わした…

しかしそれ以上は無駄な会話は無かった。


相手の集中を乱さないように…そして自分のテンションやボルテージを徐々に上げていくことに全てを割いていた。


しかしミキはミヤを見て驚いた…彼女の後ろ姿を目で追いながらリカに話しかけた。


「ねぇ…リカさん…あの人…ミヤさんね…
昨日とは別人みたい…」

「はぁ…すみません…私には分かりません…ミヤさん…いつもと何処が違うんでしょうか?」



「…上手く説明できないけど…穏やかな水面に浮かぶ葉が風に揺られているような…わだかまりや迷いが一切無い…

ゾーンとはまた違った雰囲気…ああ…ダメよね、私ったら…ゴメンなさい…気にしないで…」




そうだ…私達には神様から貰ったギフトがある…それに私にもリカさんにも秘密兵器もあるわ…でも…何なの…この胸騒ぎは…



ミキは自信を持って会場に乗り込んだがいつの間にか不安な気持ちが頭から離れないようになっている自分に気づいた。


…フリーの演技が終わった後のキスアンドクライ…

キスクラは文字通り飛躍的な成長を遂げた選手達がコーチと抱き合って喜んだり…

今回、怪我や調整不足で実力を出し切れずにコーチに寄り添って涙を流す選手達がいたりと悲喜交々であったが、僕はリンクの上で様々な花を咲かせるプリンセス達を羨ましく思った。


渾身の演技に青春の全てを賭けて華々しく舞う…全てのプリンセスに笑顔を…僕は天を仰いで祈った…



いよいよカオリの滑走順が来た…



緊張はもちろんある…しかし…もう自分を見失う事は無い…



得たものは多い学生杯だった…辛くても毎日通い続けたリンク…自分を信じてアドバイスを与えてくれたコーチ…腹ペコになって一緒にクロワッサンに噛り付いた仲間達…そして生まれた星や全てに感謝してカオリのブレードは綺麗な弧を描いた…


そして生まれた星や環境は違っても同じような喜びや辛さを味わって来たからこそ分かり合えた先輩ミキに捧げるようにスピードに乗って思い切り地面を蹴る…



美しい放物線を描いたカオリのトリプルアクセルは会場中を魅了した…

笑顔で手を振りコーチの元へ帰って来た彼女を涙を浮かべてジュンは迎えた…


「おかえり…」


「ただいま!コーチ…ウチ、まあまあイケてたやろ…?」


カオリは笑顔で親指を立てた。


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