フィギュアな彼女

奏 隼人

文字の大きさ
上 下
72 / 92

力を奮い立たせる言葉

しおりを挟む
白い尾を引いて流星は更に加速していく…その星は終盤につれて逆に力強く輝きを増していった…

そしてステップシークエンスから最後のコンビネーションジャンプに向かう…


「な、なんて人なの…全く疲れを感じさせない…それどころか生命のエネルギーに満ち溢れている…」


力強いストレートからバックストレートにスイッチして渾身の力を込めて彼女は踏み切った…


ミキから教えてもらった全てをこの瞬間に全て出すようにリカは舞う…

一回…

二回…

三回…

四回…

一瞬の出来事…しかしあまりの美しさに観客は目に映し出されたその映像ヴィジョンを脳内に何度もリフレインさせる…


ミキのジャンプをトレースするのみではなくて彼女からのバトンを受け取ったかのような四回転クアドルッツ、三回転トリプルトウループのコンビネーションジャンプを決めた…

ネイルブレードの白い発光が再び虹色に変わってもう一度観客の目に織姫の舞を刻みつけてその心を鷲掴みにする…

「ああ……」

その美しさに涙する者さえいた…

ノーミスの演技でフィニッシュのポーズを決めた瞬間、会場中がリカの演技と演出に惜しみない拍手を送った…

「リ、リカ選手…二度の四回転クアドジャンプを決めた…そしてフィニッシュ…女子スケート界にとてつもない新星が現れました…!」


リカの瞳の輝きが収まり、観客席に手を振る…

視力に於いても常人を遥かに超えているリカの目はスタンド席に座るシズカの存在をすぐに見つけた…

そしてその膝にチョコンと乗っている愛すべき存在を…



「ムク…!」



ムクを見つけたリカの笑顔は更に輝いてそれを見た観客からは溜息が漏れる…



「はぁ…リカちゃん…可愛い…!」

「ああ…私、リカちゃんのサインも欲しくなってきちゃったなぁ…」

「あなたもリカさんみたいなあんな素敵なスケーターを目指して欲しいわ…!」

「はい!お母様…」


老若男女…親子連れ…様々な笑顔の花が咲き乱れる中、会場で一人…絶望感に包まれるミヤの姿があった。

「どうしよう…このまま滑っても彼女を超えることは出来ない…

例え…同じ滑りをしたところで明日には彼女はあの新しいジャンプを跳ぶわ…

私では到底敵わない…」



そんな彼女の肩にポンと手を置いた人物がいた…コーチのジュンだった。



「ミヤ…私もこんな歓声を聞かされて…あの娘の完璧な滑り…そしてあのダイスケ君のコーディネートとのコンビネーションの演技を見せられて正直、あなたと同じ気持ちよ…

でも…あなたはあなたのいつものスケートをなさい!どんなに遠回りだと思ってもどんなに不安でもあなたのやっていることをあなた自身が信じるのよ…私はあなたを信じるわ…!」

ジュンのその言葉ワードがミヤの透き通るようなブルーの瞳の中に荒々しい波を起こす…



「分かりました…私、自分の存在を証明する為に滑ります…

これからの私の道を自分で切り開いて見せます…」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

保健室の秘密...

とんすけ
大衆娯楽
僕のクラスには、保健室に登校している「吉田さん」という女の子がいた。 吉田さんは目が大きくてとても可愛らしく、いつも艶々な髪をなびかせていた。 吉田さんはクラスにあまりなじめておらず、朝のHRが終わると帰りの時間まで保健室で過ごしていた。 僕は吉田さんと話したことはなかったけれど、大人っぽさと綺麗な容姿を持つ吉田さんに密かに惹かれていた。 そんな吉田さんには、ある噂があった。 「授業中に保健室に行けば、性処理をしてくれる子がいる」 それが吉田さんだと、男子の間で噂になっていた。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

体育教師に目を付けられ、理不尽な体罰を受ける女の子

恩知らずなわんこ
現代文学
入学したばかりの女の子が体育の先生から理不尽な体罰をされてしまうお話です。

人違いで同級生の女子にカンチョーしちゃった男の子の話

かめのこたろう
現代文学
内容は題名の通りです。

【一話完結】3分で読める背筋の凍る怖い話

冬一こもる
ホラー
本当に怖いのはありそうな恐怖。日常に潜むあり得る恐怖。 読者の日常に不安の種を植え付けます。 きっといつか不安の花は開く。

猫屋敷先輩の怪奇奇譚

MOKO
ライト文芸
僕の先輩は少し変わった人だ。 本人は至って普通だと言ってるけど 多分、絶対普通じゃない。 彼と一緒にいると おかしな事ばかりが起きてしまう。 振り回されてばっかりなのに 何故か 離れられない腐れ縁になってしまった。 …トホホ

恋もバイトも24時間営業?

鏡野ゆう
ライト文芸
とある事情で、今までとは違うコンビニでバイトを始めることになった、あや。 そのお店があるのは、ちょっと変わった人達がいる場所でした。 ※小説家になろう、カクヨムでも公開中です※ ※第3回ほっこり・じんわり大賞で奨励賞をいただきました。ありがとうございます。※ ※第6回ライト文芸大賞で奨励賞をいただきました。ありがとうございます。※

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

処理中です...