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あなたの笑顔でみんなが笑顔に
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次の朝、病院から連絡を貰ったジュンはミヤの病室へと向かった…
ノックしたドアの向こうから「どうぞ…」の声がした…
ドアを開けるとベッドの上にはいつものクールな表情の彼女がこちらを見つめていた…
「ミヤ…」
「コーチ…ご迷惑をかけてごめんなさい…」
「今はただ…あなたが無事で良かったわ…
でも貴方ほどの人がやるミスじゃ無い筈よ…」
「…はい…あの…コーチ!私が壁にぶつかりそうになった時、なぜリンクにマットが…?」
「アルタイルの男子部員の人が助けてくれたのよ…あなたのブレードから漏電しているのが見えて…機転を利かせてくれたみたいね…」
「そうですか…」
ミヤはミキと話していた男の子を思い出した…
「確か…前の遠征の時、道を教えてくれた子だわ…あの子が…」
その後、ミヤはメディカルチェックを受けて
異常なしと診断されたので退院する事になった。
ミヤの希望により、その足でジュンと二人でアルタイルスクールのリンクへと向かう…
彼女が第一室内リンクのシャッタードアを通り過ぎたその時…
「はっ!」
ミヤの目に飛び込んできたのは眼下に広がるリンクでとても美しいフォームでトリプルアクセルを跳ぶリカの姿だった。
…踏み切り、高さ、回転、着地と文句の付けようがない3Aだった…しかしミヤの目を惹きつけたのはリカのその表情だった…
…幸せそう…なんて嬉しそうな表情なんだろう…
「よっしゃよっしゃ…もうマグレなんて言われへんで!ウチのアドバイス聞いてから見違えるようやで!」
「はい!ありがとうございます!」
昨日の事故で協力した事もあってアルタイルチームとヴェガチームはフレンドリーな雰囲気に包まれている…ミキ以外は…
「フン…!」
彼女はそっぽを向いた。
「あっ!ミヤちゃんや!」
カオリの一言でみんなからの視線がミヤに向かって注がれる…
ミヤはリンクの側に来てそして深々と頭を下げた。
「皆さん…すみませんでしたぁ…!」
練習は再開され、準備を終えたミヤはリンクに一礼してから入った。
ふと視線を左にやると一人の男子部員が昨日自分がぶつかりかけた壁とリンクの床を掃除していた…
新設のリンクは広く邪魔になる訳では無いのだが…ミヤはその男子部員の所へ向かった。
「あの…」
「はい…?あっ!どうも…」
「昨日助けて下さったのはあなたですよね?お礼のご挨拶が遅れてすみませんでした…あの…お怪我をされたと伺いました…なんとお詫びをしたら良いか…」
申し訳無さそうに目を伏せたミヤにダイスケは
「大丈夫です。気にしないで下さい…それよりあなたはお体の具合はいかがですか?」
「私ももう大丈夫です。せっかくアルタイルに来たのだから少しでも練習したくて…今日は無理言って練習に参加させて貰いました…」
「そうですか…良かった…無理しないで頑張って下さいね!」
そう言ったダイスケの笑顔を見たミヤはホッとしたのと同時に年下とは思えないダイスケの大きな包容の器にあまり抱いたことのない感情を覚えた…
その感情が彼女らしからぬ発言を現実のものとした…
「あの…一つ教えて下さい…私はヴェガのスクール生です。事故は自分の責任で起こった事でした。あなた達アルタイルスクールには何の落ち度もない…なのに…何故あなたは私を助けて下さったのですか?自分を危険に晒してまで…」
「そうですね…僕も自分の安全を考えなかった事をコーチや皆さんに謝罪しました…ただ…」
「ただ…?」
「自分の夢の為に舞うあなた達が怪我してもう翔べなくなるなんて耐えられないです…
あなたの翔んでいるところ…あの時はあまりゆっくりと見られなかったけど…
きっとあなたの笑顔にヴェガのみんなも笑顔になるんだろうな…あなたの夢に自分の夢を重ねて…ってそう思って…
あっ!何言ってるんだろう…?ごめんなさい!練習…頑張って下さい!」
そう言うとダイスケは掃除道具を持って用具室の方に走って行った…
ミヤはダイスケの言葉に立ち尽くすばかりだった…
そして何故か…翔んでいるリカの幸せそうな笑顔が頭の中に蘇って来た…
「私のスケートで…みんなを笑顔に…」
ノックしたドアの向こうから「どうぞ…」の声がした…
ドアを開けるとベッドの上にはいつものクールな表情の彼女がこちらを見つめていた…
「ミヤ…」
「コーチ…ご迷惑をかけてごめんなさい…」
「今はただ…あなたが無事で良かったわ…
でも貴方ほどの人がやるミスじゃ無い筈よ…」
「…はい…あの…コーチ!私が壁にぶつかりそうになった時、なぜリンクにマットが…?」
「アルタイルの男子部員の人が助けてくれたのよ…あなたのブレードから漏電しているのが見えて…機転を利かせてくれたみたいね…」
「そうですか…」
ミヤはミキと話していた男の子を思い出した…
「確か…前の遠征の時、道を教えてくれた子だわ…あの子が…」
その後、ミヤはメディカルチェックを受けて
異常なしと診断されたので退院する事になった。
ミヤの希望により、その足でジュンと二人でアルタイルスクールのリンクへと向かう…
彼女が第一室内リンクのシャッタードアを通り過ぎたその時…
「はっ!」
ミヤの目に飛び込んできたのは眼下に広がるリンクでとても美しいフォームでトリプルアクセルを跳ぶリカの姿だった。
…踏み切り、高さ、回転、着地と文句の付けようがない3Aだった…しかしミヤの目を惹きつけたのはリカのその表情だった…
…幸せそう…なんて嬉しそうな表情なんだろう…
「よっしゃよっしゃ…もうマグレなんて言われへんで!ウチのアドバイス聞いてから見違えるようやで!」
「はい!ありがとうございます!」
昨日の事故で協力した事もあってアルタイルチームとヴェガチームはフレンドリーな雰囲気に包まれている…ミキ以外は…
「フン…!」
彼女はそっぽを向いた。
「あっ!ミヤちゃんや!」
カオリの一言でみんなからの視線がミヤに向かって注がれる…
ミヤはリンクの側に来てそして深々と頭を下げた。
「皆さん…すみませんでしたぁ…!」
練習は再開され、準備を終えたミヤはリンクに一礼してから入った。
ふと視線を左にやると一人の男子部員が昨日自分がぶつかりかけた壁とリンクの床を掃除していた…
新設のリンクは広く邪魔になる訳では無いのだが…ミヤはその男子部員の所へ向かった。
「あの…」
「はい…?あっ!どうも…」
「昨日助けて下さったのはあなたですよね?お礼のご挨拶が遅れてすみませんでした…あの…お怪我をされたと伺いました…なんとお詫びをしたら良いか…」
申し訳無さそうに目を伏せたミヤにダイスケは
「大丈夫です。気にしないで下さい…それよりあなたはお体の具合はいかがですか?」
「私ももう大丈夫です。せっかくアルタイルに来たのだから少しでも練習したくて…今日は無理言って練習に参加させて貰いました…」
「そうですか…良かった…無理しないで頑張って下さいね!」
そう言ったダイスケの笑顔を見たミヤはホッとしたのと同時に年下とは思えないダイスケの大きな包容の器にあまり抱いたことのない感情を覚えた…
その感情が彼女らしからぬ発言を現実のものとした…
「あの…一つ教えて下さい…私はヴェガのスクール生です。事故は自分の責任で起こった事でした。あなた達アルタイルスクールには何の落ち度もない…なのに…何故あなたは私を助けて下さったのですか?自分を危険に晒してまで…」
「そうですね…僕も自分の安全を考えなかった事をコーチや皆さんに謝罪しました…ただ…」
「ただ…?」
「自分の夢の為に舞うあなた達が怪我してもう翔べなくなるなんて耐えられないです…
あなたの翔んでいるところ…あの時はあまりゆっくりと見られなかったけど…
きっとあなたの笑顔にヴェガのみんなも笑顔になるんだろうな…あなたの夢に自分の夢を重ねて…ってそう思って…
あっ!何言ってるんだろう…?ごめんなさい!練習…頑張って下さい!」
そう言うとダイスケは掃除道具を持って用具室の方に走って行った…
ミヤはダイスケの言葉に立ち尽くすばかりだった…
そして何故か…翔んでいるリカの幸せそうな笑顔が頭の中に蘇って来た…
「私のスケートで…みんなを笑顔に…」
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