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オニキス・ウェディング
しおりを挟む「全く…あやつは…わらわを…ちゃんと守護英霊だと分かっておるのか…いつも急に言いおって…フフッ…」
「お、おひい様…それにしては少し嬉しそうな…」
ダイナの言葉にエクスとパルテは吹き出しそうになるのを必死に堪えている…
「ええい!うるさいわ…お前達…さっさとわらわに道を示せ…」
チャペルへの扉が開くと…
バージンロードの中央あたりで待っている白いタキシード姿の優也の元へ一歩一歩進んで行く。
いつものゴスロリドレスでチャペルに入ったヴァルプルギスは…「おっと…」
胸の前で指を組んで神に祈りを捧げる…
白い羽が舞い…ヴァルは花嫁衣装姿になった…
ブーケを持った彼女は優也の元に着くと彼のエスコートに心を委ねるように…細い手を優也の腕に回した。
「よろしく頼むぞ…わらわのパートナーよ」
ヴァルプルギスと優也はマザー・ハーロットの元へゆっくりと二人で歩みを進めて行く…そして彼女の前に二人で並んだ…
マザー・ハーロットはヴァルプルギスに語りかける…
「まさか…お主のような伝説の魔女の婚礼の儀が見られるとは思わなんだわ…」
ヴァルプルギスは真っ赤になった…「違うのじゃ…こっ、これは…その…優也が…わらわに…」
僕は耳まで真っ赤になったヴァルが可愛くて…愛おしくて思わず彼女を後ろから抱きしめた。
「ゆ、優也…」
その時…僕は自分の中に不思議な感情が生まれている事に改めて気付いた。
黙って僕を見つめているヴァルの両肩の上に掌を置いて彼女を自分の方に向けた…
「ど、どうしたのじゃ…?」
優也はニコッと笑いながら口づけの代わりに瞳を真っ直ぐ見つめて口を開いた…
「…最初にさあ…ヴァルに誘拐された時は正直びっくりしたなあ…」
「あ、あれは…初めは人間だと聞いて奴隷にするつもりだったのじゃが…わらわの事を怖がりもせん、嫌がりもせん…
おまけにわらわの事を心配し始めた…そんなお主にとても興味が湧いたのじゃ…
魔法使いはわらわの強大な魔力と伝説の三魔女を連れている事ばかりを見てわらわを疎外してきた…
しかしの…優也…お前だけがわらわを自分の仲間と同じ目で見つめてくれた…
わらわはお前の大好きなこの世界を守るために命を擲った…
しかし後悔なぞこれっぽっちもした事は無い…そしてわらわはお主の守護英霊になり、お主と一つになる道を選んだのじゃ…」
「…君と一つになってから…僕は君に助けられてばかり…肉体も若返って…君の力を貸してもらって…
僕が無茶な事をしても君は呆れたフリをして僕をずっと見守ってくれている…
僕は君に助けてもらった事を思い出すと…今でも心が震えて涙が出そうになる…」
「わらわもじゃ…優也…」
これからも僕達はずっと一緒だ…
君が笑ったら僕達も嬉しい…
悲しい事や辛い事はみんなで分け合える…
そんな世界を創りたい…
また今日がスタートだ…
僕達の夢に向かって進もう…
君と僕はずっと一つだ…ヴァル…」
ヴァルプルギスはくるりと後ろを向いて優也に背を向けた…
「ああ…優也…そのとおりじゃ…」
肩を震わせて泣いているように見える彼女…
「ヴァル…いつもの君に戻ってよ…僕はいつもの君が大好きだ…!」
ヴァルプルギスはいつもの黒いゴスロリドレス姿に戻った…涙を指で拭ってから優也に向き直った…
「これで…良いのか…?」
優也は少し腫れた赤い目の彼女を見てクスッと笑った…そして黒い大きなオニキスが入ったブローチを彼女のドレスに着けてあげた…
「これからもよろしくお願いします!守護英霊殿!」
「全く…仕方ないのう…」
口先から出るのは天邪鬼な言葉だが…ヴァルプルギスの胸の内は感謝の言葉で溢れていた。
…優也…わらわこそ…よろしゅう頼むぞ!!
誰にも心を開かなかった孤高の魔法使いはみんなに祝福されて優也と…愛すべき仲間達と一緒に未来へ向かって進む絆を示した。
種族を超え…生と死まで超越した二人の絆に心が震えた仲間達が流した涙がマザー・ハーロットの杯に葡萄酒となって現れた…
「おお…これで…これで願いが叶うぞ…」
「やった~!ついにやったで…」
ピョンピョンと飛び跳ねるジーナ…
…ああ…ついに…ついに…あの方に逢える…
ジーニャの目にまた涙が浮かんだ…
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