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エメラルド・ウェディング

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チャペルへの扉が開くと…

バージンロードの中央あたりで待っている優也の元へ一歩一歩進んで行く。



月桂樹の冠…森の中の精が泉から現れて出てきたと見まごうようなそのスピリチュアルな美しさ…

ブーケを持った彼女は優也の元に着くと彼のエスコートに心を委ねるように…細い手を優也の腕に回した。

「優也さん…少しお待ち下さいね…」


優しいナギの気持ちが良く分かっていた優也はナギからブーケを預かり笑顔で頷いた…

ナギは参列者から一輪一輪花を受け取った。
そして指をクルクルっと回して魔法でその花を束ねて花束にする…

彼女は優也とマサムネの前へ行くと…

「お父様…本当にいつもありがとうございます。
あなたの存在が無二の親友であらせられるゴルドおじ様だけではなく、私や優也さんだけでなく他の皆様方もどんなに頼りにされておられるか…

バビロナと私達が一つになった後もその知性溢れる眼差しでどうか皆を導いて頂けますようソーディア王女としてお願い致します…

そしてあなたのような父の元に生まれてきて私は幸せ者です…お父様…」

涙を浮かべながら花束をマサムネに渡すナギ…

マサムネさんは晴れ晴れとした笑顔で「ありがとう…皆の者よ…これからもバビロナと我々同盟国の為、老骨に鞭を打って頑張る所存じゃ…ナギや婿殿と共にな!」と参列者やバビロナの全ての人に思いを馳せて手を振った…


ナギは優也からブーケを受け取った…



「あなたは本当に心の優しい人だね…ナギさん!」

「ありがとうございます…優也さん…」





ナギは優也にそう言うと今まで我慢していた感情が涙となって頬を伝った…「うっ…うううう…」

優也はそんなナギを優しく抱きしめた…

「ナギ…」マサムネの目にも光る物が…

「鬼の目にも…とやらか?」

「うるさいわい!」



「まぁ!オホホホ…」



親友同士の掛け合いにシルヴァも笑顔を見せた。




やがてナギと優也は二人で祭壇のマザー・ハーロットへ向き直るとそちらの元へゆっくりと歩みを進めて行く…


マザー・ハーロットの前に立った優也とナギ…

そしてナギは自分の右側にいる優也を真っ直ぐに見つめた…トクントクン…

心音の響きを感じ…頰を紅潮させるナギ…


優也はニコッと笑いながら花嫁のヴェールを両手で上げた… 

「優也さん…」


…口づけの代わりに優也はナギの瞳を真っ直ぐ見つめて口を開いた…

…初めてエメラルダの森で君に会った時、あの時からずっと僕はあなたの絶え間なく降り注ぐような優しい愛に包まれているような気がします…

そんな優しい君が心を痛めながら国王となり皆を導く決心をした…僕はその事を思い出すと心が震え出していつも涙が出そうになる…

世界中を敵に回してもあなたを守ると言ったあの時の誓いは本当だし…今はソーディアの中にもその誓いを僕と同じように胸に刻んだ素晴らしい勇者もいる…」


優也は参列者席のレーヴァの方を見て頷いた…
レーヴァも優也に微笑んで会釈する…


「これからも僕達はずっと一緒だ…
君が笑ったら僕達も嬉しい…
悲しい事や辛い事はみんなで分け合える…

また今日が新たなスタートだ。

僕達の夢に向かって進もう…

君は僕が守るよ…ナギ…」


「ああ…あの時と同じ…」ウェディンググローブを着けた両手で顔を覆うナギ…指の隙間からまた涙がこぼれ落ちていく…

「…優也さん…ナギを一生…一生離さないで下さいね…」


優也は涙を抑えようとしているナギの月桂樹の冠の代わりにエメラルドが散りばめられた小さな可愛いティアラを彼女の頭にそっと載せた…驚いたナギは
優也の顔を見て涙を指で拭った。そして笑顔で…


「…似合いますか?」

「ああ…とても…素敵だよ」

「ありがとうございます…あら?」


ナギはふとチャペルの隅に目をやると…ブルブル震えているフェンリルを見つけた…

「フェンリルちゃん…?」

「ヒィィィィィ…ナギ!シィーッ!シィーッ!」

「ん?そこのオオカミよ…お前は何じゃ?」

マザー・ハーロットはフェンリルの存在に気付いた。

「ヒィッ!ア、アッシ?アッシですかい…?
マザー・ハーロット様…

アッシはフェンリルというジュエラのエメラルダの森に棲むケチな野郎で…」

「何故…精霊が魔法使いや人間と…?」

「…コイツらは他のヤツらとは違うんですよ…精霊のためにも一生懸命になって…涙を流し、喜び合う仲間なんです。アッシが保証します…」


「ふむ…このバビロナが望む世界がもう在ると言うのじゃな…」

マザーハーロットは深く頷いた。

ソーディアを束ねる立派な王女はみんなに祝福されて優也と…愛すべき仲間達と一緒に未来へ向かって生きていく絆を示した。

ナギやマサムネが流した…そして種族を超えた優しさに心が震えた人々が流した涙がマザー・ハーロットの杯に葡萄酒となって現れた…

「おお…また葡萄酒が…さあ…次じゃな…」



「えいっ!」ナギが投げたブーケはアイの手元へとやって来た…「おっと!」


「次はあたしとだよ!優也くん!」
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