奥さまは魔王女 2nd season 〜ジーナは可愛い魔女〜

奏 隼人

文字の大きさ
上 下
92 / 103

アレキサンドライト・ウェディング

しおりを挟む
チャペルへの扉が今、開いた…

バージンロードの中央あたりで待っている優也の元へ彼女は一歩一歩進んで行く。


その歩みはあの方を想うと時に重く…彼を想い浮かべるととても軽やかにも思えた…


スタイルのシルエットが美しい…Aラインのノースリーブドレスにウェディンググローブ…

ジーニャの褐色の肌と対照的な…だからこそ白い美しいドレスが誰よりも映えるのかもしれない…

ブーケを持った彼女は優也の元に着くと彼のエスコートに心を委ねるように…細い手を優也の腕に回した。



二人で祭壇のマザー・ハーロットの元へゆっくりと歩みを進めて行く…




ジーニャは自分の右側を上目遣いに見上げた…

「……!」

彼女は息を呑んだ…
そこにはずっと想い焦がれたあの方の姿があった…

しかし…すぐに優也の姿に変わった。




ジーニャはホッとして胸を撫で下ろした…

その時…彼女は自分の中に不思議な感情が生まれている事に改めて気付いた。

「わ、私…何故、優也様だった事にホッとしたんだろう?ここまでずっと…あの方を追い求めて…あと少しで手が届きそう…なのに…」

いつの間にか優也の方を向いて俯くジーニャ。

優也はニコッと笑いながら花嫁のヴェールを両手で上げた… 「えっ…?」





…口づけの代わりに優也はジーナの瞳を真っ直ぐ見つめて口を開いた…

…初めてバビロナ王宮で君に会った時、僕が今見つめている凛として冬の寒さにも負けない…夏の乾いた風にも弱さを見せない野生の白い花のような強さを持った瞳に吸い込まれそうになったよ…

僕が人間界やこちらの世界で仲間達に囲まれて楽しい時間を過ごしている間も…君は永い時間ときの海を彷徨っていたんだね…僕はその事を思い出すと心が震え出していつも涙が出そうになる…

でも…これからは僕達はずっと一緒だ…
君が笑ったら僕達も嬉しい…
悲しい事や辛い事はみんなで分け合える…

そんな世界を創りたい…今日がスタートだ…

僕達の夢に向かって進もう…

君は僕が守るよ…ジーナ…」




「ああ…」

ウェディンググローブを着けた両手で顔を覆うジーニャ…指の隙間から涙がこぼれ落ちていく…

…優也様…あなたは何故、あの方と同じ呼び方で私を…



優也は涙を抑えようとしているジーニャの手に彼女の錫杖についている宝石と同じ…アレキサンドライトの石が散りばめられたブレスレットを彼女の手首に着けてあげた…驚いてブレスレットを眺めるジーニャ…


「これは…なんて綺麗な…」

ジーニャは人間界のアクセサリーショップで見ていたブレスレットを思い出した。

そうか…優也様はあの時の事を…


「君と僕達の絆は確かにあっても見えないもの…だから今日、君と僕達の絆を確認した記念にこれを貰って欲しいんだ…

これからずっと続く永遠の絆を…」


この時…片時も忘れた事のなかった昔のバビロナの事を忘れて優也の誠実な言葉にジーニャはこれからのバビロナを夢見ていた…

「優也様…皆様…ありがとうございます。

これからはあなた達とずっと一緒に生きていきます…私達をどうかよろしくお願い致します…」

永い間…王族ではないがバビロナを守ってきた紛れもない立派な王女はみんなに祝福されて優也と…愛すべき仲間達と一緒に未来へ向かって生きていく絆を示した。

ジーニャやロジャーが流した…そして種族を超えた優しさに心が震えた人々が流した涙がマザー・ハーロットの杯に葡萄酒となって現れた…

「おお…葡萄酒が…さあ…次の婚礼に参ろうか…」

「それっ!」ジーニャが投げたブーケはジーナの手元へとやって来た…


「次はウチとやで…殿!」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

セレナの居場所 ~下賜された側妃~

緑谷めい
恋愛
 後宮が廃され、国王エドガルドの側妃だったセレナは、ルーベン・アルファーロ侯爵に下賜された。自らの新たな居場所を作ろうと努力するセレナだったが、夫ルーベンの幼馴染だという伯爵家令嬢クラーラが頻繁に屋敷を訪れることに違和感を覚える。

地獄の業火に焚べるのは……

緑谷めい
恋愛
 伯爵家令嬢アネットは、17歳の時に2つ年上のボルテール侯爵家の長男ジェルマンに嫁いだ。親の決めた政略結婚ではあったが、小さい頃から婚約者だった二人は仲の良い幼馴染だった。表面上は何の問題もなく穏やかな結婚生活が始まる――けれど、ジェルマンには秘密の愛人がいた。学生時代からの平民の恋人サラとの関係が続いていたのである。  やがてアネットは男女の双子を出産した。「ディオン」と名付けられた男児はジェルマンそっくりで、「マドレーヌ」と名付けられた女児はアネットによく似ていた。  ※ 全5話完結予定  

後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。  洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。  天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。  洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。  中華後宮ラブコメディ。

貴方にはもう何も期待しません〜夫は唯の同居人〜

きんのたまご
恋愛
夫に何かを期待するから裏切られた気持ちになるの。 もう期待しなければ裏切られる事も無い。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

27歳女子が婚活してみたけど何か質問ある?

藍沢咲良
恋愛
一色唯(Ishiki Yui )、最近ちょっと苛々しがちの27歳。 結婚適齢期だなんて言葉、誰が作った?彼氏がいなきゃ寂しい女確定なの? もう、みんな、うるさい! 私は私。好きに生きさせてよね。 この世のしがらみというものは、20代後半女子であっても放っておいてはくれないものだ。 彼氏なんていなくても。結婚なんてしてなくても。楽しければいいじゃない。仕事が楽しくて趣味も充実してればそれで私の人生は満足だった。 私の人生に彩りをくれる、その人。 その人に、私はどうやら巡り合わないといけないらしい。 ⭐︎素敵な表紙は仲良しの漫画家さんに描いて頂きました。著作権保護の為、無断転載はご遠慮ください。 ⭐︎この作品はエブリスタでも投稿しています。

処理中です...