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聖堂の秘密

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「儀式…こんな薄暗い所で…」

バビロナ空中庭園か…

僕の頭の中のイメージと言えば…



「そうですね…こんな所でする儀式なんて黒魔法の契約のような…

とても魔法使いと精霊の為に
建てられた神殿ではありませんね…

本当ならもっと二つの種族の為…
これからの未来を作り出す為の…」



「たとえば婚礼の儀…じゃな!」 


「わっ!」


僕の横で実体化したヴァルが呟いた…

「何を驚いておるのじゃ…優也…わらわはお主のパートナーじゃぞ…」

「そうだけど…最近、急に現れるから…」

「こら~!ダーリンのパートナーは私よ!」


揉めている僕達に呆れ顔の愛ちゃんがジーニャに尋ねる…

「この神殿は元々、結婚式場なの…?だからイミテはあなたをここに連れて来たのかしら…」



「いえ…こんな大きな聖堂もあるのでそれだけの為に建てられたのでは無いと思うのですが…」


「そうね…とにかく隈無くまなく手掛かりを探してみましょう…話はそれからよ…」



僕達は聖堂の中を調べ始めた…「おや…?」

聖堂の一角の床に鉄板のような蓋がされている場所がある…

「ジーニャ…あそこは…?」

「あれは洗礼の儀を行う…プールのような場所です…

祈りを捧げた水…聖水を満たしてそこに入って神の祝福を受けるのです…」


「一応調べてみようか…まぁ…ここがこんなに薄暗いのだから地下にそんな設備があるとは思えないけど…」

そう言いながら僕は鉄板を引っ張ってずらす…

「よいしょ…これでいいかな?」

僕達の眼前に地下に続く階段が現れた。

「確か…階段を下りて行くと洗礼の儀を行うプールがあります…」

「暗くて分からないな…」

ナギはニコッと笑って指をパチンと鳴らした…

明るく発光するこけを壁に発生させて見る見るうちに辺りは明るくなった。

そこは25メートルプールくらいの大きさだろうか…階段はプールの中へそのまま続いていた。


「ありがとう…ナギさん!」


ナギさんはニコッと微笑んでくれた…



…マズいなぁ…意外な伏兵登場やで…この姉ちゃん…地味やのに何で殿の側にいるんか不思議やったけど…殿から安定の信頼感やんか…誰も敵を作らんと目的を果たす…も、もしかしてプロか?

…ウチもプロには敵わんわ…このままじゃ殿を…くそっ!

心穏やかでないジーナは左手の拳《こぶし》で壁をドンと叩いた…


ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…

足元が覚束おぼつかないほどの揺れが僕らを襲う…

「な…何だ…地震か…?」

「ダーリン!あれを見て!」 

「えっ?」


みんなの方を向いていた僕が振り返ると…プールの水が恐ろしい勢いで減っていく…
そして暫くするとプールの水がすっかり空になってしまった…

「一体…どうしたんだろう…?」

ジーナはさっき叩いた壁のレンガが一つ凹んでいるのを見た…


「あっ…これや!殿…!」


僕達は階段の踊り場のレンガを調べた。

「なるほど…ここが水を抜くスイッチになってたんだね…さっきの揺れは水が抜ける時の振動…」

「あっ、ダーリン!あそこを見て…」

ティナが指差したのはプールの丁度向かい側にある大きな四角い穴だった…

もう一度プールに降りた僕達はその穴を覗き込んだ。手摺りの付いた階段が下まで続いているようである。

「この下に何があるのか…?」

「もう一度、明るくしますね…」

ナギさんの気遣いに頭を下げた。


「すみません…お願いします」



「あっ!」 


「おおっ!」 


「まあ…!」



階段を降りていった僕達が見た物は…
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