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スウィート・ルーム

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淡いピンク色の照明とお香の香りのする部屋に通された僕は大きな天蓋の付いたベッドを見て少し圧倒されてしまった…

「き、綺麗な部屋ですね…僕なんかが入っていいのかな…?」

彼女はクスッと笑って…

「私がお連れしたんですから大丈夫ですよ…
どうぞおかけ下さい…」と手を差し出してくれた。

「ありがとうございます…あれ?」

僕は周りに椅子を探したけど見つからない…
高そうなペルシャ絨毯が敷いてあるなぁ…ここに座ろうかな?

その時…  「わっ!」 ドサッ!


ジーニャさんは僕の身体目がけて突進してきた…

ベッドの上で重なり合う僕とジーニャさん…

「うふふふ…」僕の身体の上で僕を見下ろしながら微笑んだ彼女…そして目を閉じてゆっくり僕に口づけた…

「…むぐぐ…」

最初は驚いて踠《もが》いていた優也もジーニャの美しさ…肌に触れた柔らかさ…お香の甘い香りに力が抜けていく…



「優也様…お願いです…私は魔法のランプを見つけて願いを叶えて貰ってバビロナを昔のように幸せな国にしたいのです。

そのためにあなた方に協力をお願いしたいのですが…私にはお返し出来る物がありません…

ジュエラとソーディアの前国王様達から気にしなくて良いと言われましたがそれではバビロナを統治している者としてはやはり気が済まないのです。

私の身体も心もあなたに捧げますので自由にして下さい…」


ジーニャは優也の身体を強く抱きしめた…

でも優也は気付いていた…
自分の身体に回された腕が震えている事を…



「ゴメン!」 

「きゃっ!」

優也はジーニャの身体を押し退けてベッドから立ち上がった。

ジーニャの心は悲鳴を上げた…耐えられず彼女は起き上がって叫んだ。

「やっぱり…あんな綺麗な奥さんと可愛い子供がいたら…私なんて…」


「違うよ…!!」今度は優也からジーニャの身体を強く抱きしめた…

「君は自分の全てをなげうってバビロナの為に…」

ジーニャは優也の顔を見て同時に二つの事に非常に驚いた。

ジッと見つめていると吸い込まれそうな瞳…ちょっと頼りなさそうに見えて側にいてくれるととても気持ちが落ち着く所…一緒にいればいるほどあの頃の大好きなあの人を思い出す…

しかし…今、ジーニャの目に飛び込んでいた優也は
あの人が見せた事のない表情をしていた。

優也は大粒の涙を流しながら自分を見ていた…


「君は何故そんなにバビロナの為に尽くすの?
王女としての責任感?それとも…?」

「私は…」

ジーニャの頭の中にあの人と一緒に過ごした幸せな日々が蘇る…

「私はバビロナが幸せになることが嬉しいんです…私の夢はその後で考えればいい事です」

「じゃあ…僕達はバビロナが幸せになるように頑張って魔法のランプを探すよ…だから…」

「だから…?」

「君は君自身が幸せになるように頑張ってみてくれないかな…?僕は君やジーナが心から喜んでくれたらお礼や見返りなんて何も要らないよ…」

「何故…?」 

「えっ?」

「何故…あなたは私に…ジーナに…そんなに優しくしてくれるのですか…?

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