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新しいスタート
しおりを挟む「はい…私や妹、ロジャー将軍や王朝のみんなを当時の王子…シャブリヤール様が逃してくれました。
みんなバビロナと同じ運命を辿る必要は無い…
生きて幸せになって欲しいと…
私は幸せになるというのはあの頃のバビロナの幸せな暮らしにみんなが帰る事だと思っているのです。
だけど…このままではどうしようも無い…
死んでしまった他の者は生き返らない…
救ってくれる人も現れない…どうしたら良いのか…
先程、優也様に何でも願いを叶えてくれる魔法のランプを一緒に見つけて下さいとお願いしました。
それで優也様の願いを叶えてもらって代わりに私達を良い方向に導いて頂こうと思っております…
お父様達からもどうぞお口添えを宜しくお願いしたいのですが…」
ゴルドとマサムネはまた顔を見合わせて…笑い始めた。
「な、何が可笑《おか》しいのですか?」
「王女よ…申し訳無いがその提案は無理だ…飲めないよ…」
「そうですか…やはりそれを対価に我々を守ってくれと言うのは筋違いな話でしたか…」
ジーニャは大きく息を一つ吐いて天を仰いだ…
「ああ…そうじゃな…!その通りだ!」
マサムネも同じように言い切った…
「では…私と妹を優也様達の家来として…」
ジーニャがそう言いかけた時にゴルドがジーニャの話を遮った。
「ちょ、ちょっと待ってくれ…お前さんに一つ言わなきゃいけない事がある…」
「は、はい!」
ジーニャはなんとか条件を呑んでもらおうと必死だった…
スゥーっと息を吸ったゴルド。次の瞬間…
「こんの 馬鹿者がぁーっ!」
周りの木々までビリビリと響いて揺れる位の大きな声でジーニャを怒鳴りつけた…
「えっ…?」
「よいか…?王女よ…わが最愛の息子や娘達を小さく見ないでほしい…
お前さんが今、ワシ達に言った事を婿殿に話したとしてもきっと首を縦には振らん…
それはバビロナを…お主達を自分達の仲間だと認めて、大切に想っておるからじゃ…
お主が本当に心から願っている事を彼奴らにぶつけてみるのじゃ…
願いを叶える代わりになんてそんな損得は抜きできっと喜んでお主達の力になる事を約束するじゃろうて…」
「ああ…」ジーニャの目から大粒の涙が流れ出す…
マサムネもまるで自分の娘に語りかけるようにジーニャの顔を覗きこむ…
「ワシらもあなた方バビロナ王朝にお願いがある…
トンベリの木やこのバビロナの大自然の恵み…
それを我々に分けて欲しいのじゃ…
但し、それは未来の為じゃ…」
「未来の…ため…?」
「そう…我々が昔、乱獲という間違いをして失ってしまった掛け替えのない宝物がこの国にはある。
直ぐには無理かもしれんが…近い未来、我々の国を昔のように…こんな自然の宝物に囲まれる国にもう一度甦らせてみたいと思う…
バビロナの大自然の恵みに力を借りて、我々ももう一度…大切なスタートを切りたいのじゃよ…
ミスちゃんやリル君…後世に自慢できるような豊かな国にしていきたい…
バビロナのような豊かな国にな…だから今日、バビロナと我々の国は一緒に新しいスタートを切るのじゃよ…」
そう言ってマサムネはジーニャにもう一度笑いかけた。
「わ、わ…た…し…うううう…」
ジーニャは生まれて初めて心の底から嬉しい涙が溢れ出して上手く話すことが出来なかった。
ゴルドはまるで我が娘に語りかけるように囁く…
「今日からバビロナ王朝はワシら…ジュエラ、ソーディア、ミラールの同盟国じゃ。
今回のようにバビロナを狙ったりする輩がいたらワシらが許さんわい!飛んでくるからの!」
「は、はい…宜しくお願い致します…」
長い間…凍りついていたジーニャの心が優しい温かい心に触れて幸せに向かって今、走り出そうとしていた…
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