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本当に愛しているなら
しおりを挟むジーナは一頻《ひとしき》り泣いた後…
「さあ…これで分かったやろ…ウチに関わるとみんな石にされてしまうで…自分達の事は自分で何とかするわ…」
そう言って無理矢理に笑顔を作った。
そして優也に向かって…
「殿…今までウチを大事にしてくれてありがとう。ウチ…殿と出会えてホンマに幸せやった…
これ以上は別れが辛うなるからお願い…このまま帰って下さい…ううう…」と泣くのを堪えようとしたが…
溢れてくる涙をどうする事も出来ずにその場に両手で顔を覆い隠したまま、しゃがみ込んでしまった…
すると…
「おい!姉ちゃん…随分と勝手な言い草だな!」
ナギの横からフェンリルが現れたかと思うとジーナの側に駆け寄った…
「姉ちゃん…アンタ…本当に優也が好きなのか?」
「何言うてんねん…アンタもウチと同じ精霊なんやったら少しは気持ちが理解出来るやろ…?
ウチは殿の事を死ぬ程愛してるわ…!」
「ふーん…死ぬ程ねぇ…俺には少しもそうは見えねえなぁ…」
「何やて?」
「だって…本当に死ぬ程愛してるんだったら自分が例え嫌われていたって好きなヤツの側に居たくてたまらねぇんじゃないのか?」
「い、犬コロに何が分かるねん…
そらウチだって出来る事なら大好きな殿のお側に居させてほしいわ…
そやけどウチは犬コロ…アンタと一緒でバケモンの類や…
殿だってバケモンに愛してるなんて言われたら…イヤな筈やで…」
「ふうん…じゃあ何で優也は俺と一緒にいるんだよ…
そりゃあ今は故郷のエメラルダの森が大好きなナギの側についているがな、優也は俺の事をバケモンだなんて一度も思った事は無いと思うぜ…」
「えっ…?」
「俺は元々、身勝手な魔法使いも人間も大嫌いだった…だから誰も来ない森に気ままに動物達と棲んでいたんだ…そこに優也達が遊びに来た…
最初は〝ああ…またうるさい奴らが来た〟って思ったさ…
でも子供を連れてやってきた優也は昔からこの森に仲間として過ごしてきた者のように森の全てに優しくしてくれた…
俺はその時思ったのさ…
全部を一括りにしちゃいけない…
魔法使いにも人間にもそして俺達精霊にだって良いヤツ、悪いヤツはいる…
優也は見た目や違う種族だからという理由で嫌いになったりするヤツじゃないぜ…
そんな優也だからお前も好きになったんじゃないのかよ…?
一体、優也のどこを見てきたんだよ…全く…」
フェンリルに諭されてジーナは優也の顔をじっと見つめた…
「ジーナ…」
優也はまたジーナの大好きな笑顔を見せる…
悲しみの冷たい涙は、心を震わせる熱い涙に変わって彼女の頰を伝う…
「と…の…ゴ…メン…なさ…い…ウチ…ヒック…ウチ…うううう…」
ジーナは優也の胸に飛び込んだ…嗚咽するほど泣きじゃくる彼女にプラティナが歩み寄る…
「ティナ…」
優也にナギやアイもまたキャットファイトが始まるのかと心配した…しかし…
プラティナはそっとジーナに寄り添い…彼女の髪を撫でた…
「私ね…ダーリンが毒に侵されて帰ってきて本当に心配だったわ…」
その言葉を聞いたジーナは申し訳無さそうに身をすくめた…
「…でもね、ダーリンを心配していたのと同じ位、あなたやバビロナが心配だった…
その時はダーリンを何とか救いたいと必死だったけど…もし、こんなにダーリンと早くバビロナに来られなかったら私は一人でもあなたを救いに来るつもりだった…
まあ…私が一人で来ても何にも出来ないけどね…
私はダーリンを愛してるわ…だから彼の想いを理解して彼が喜ぶようにしてあげたい…
だからあなたもダーリンの事が好きならもっと彼の事を理解して信じてあげて欲しいの…」
ジーナは真剣な眼差しでプラティナを見つめて頷いた…微笑んで顔を見合わせる優也達…
「パァン!」
実体化したヴァルプルギスはプラティナの後ろに回り彼女のお尻を叩いた…
「乳嫁よ…お主…なかなかやるではないか…!!
少しだけ見直したぞ…」
プラティナは凄い形相で怒鳴り声を上げる…
「ちょっと…痛いわね…何するのよ…
断っとくけど…だからってあなたも彼女もダーリンに近づくのを公認したわけじゃないからね!!
あくまでダーリンは私だけのモノよ!!分かった?」
…そして頬を膨らませた…
「優也…前言撤回じゃ…」
僕はヴァルの呆れたような表情に笑わずにはいられなかった…
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