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ひとりに戻る魔女
しおりを挟む「テ、ティナ…ヴァル…ううっ!」
二人の声が耳に入ったのだろうか…偶然にも優也はプラティナとヴァルプルギス…二人の名前を口にした…
ヴァルプルギスはヴァルプルガに駆け寄った…
「もう…これしかないのじゃ…一刻の猶予も許さないぞよ…さあ…わらわを早くお主の中に取り込んでくれ…
そして優也だけは必ず助けてくれ…
頼む…この通りじゃ…」
「そ…そなた…それ程までにこの者を…」
ヴァルプルガは驚きで言葉を失っていた…
自分の分身とはいえ人間を毛嫌いしてバカにしていた彼女がこれ程一人の人間の男性を愛している…
そしてプライドが高く自分に頭を下げるなんて今までのヴァルプルギスから想像する事は全く容易でなかった…
ヴァルプルガは微笑を浮かべながら口を開いた。
「承知した…お主と一つになった後、全力で優也とやらを救うと約束しようではないか…」
「すまぬが頼んだぞよ…」
「駄目よ…きっと他にも方法が…」
「良いのじゃよ…もう…良いのじゃ…」
プラティナの呼びかけにそう呟いたヴァルプルギスはふと優也の顔を見る…
…優也…最後にお主の助けになれて本当に嬉しいぞ…
こんなわらわじゃが…もしも…いつか生まれ変わって出逢う事が出来たのなら…その時はまた抱きしめてくれぬかの…
「では…参るぞ…はぁぁぁぁぁぁ!」
ヴァルプルガは両手を天に向かって上げ、ヴァルプルギスはまるで祈るように両の掌を組んだ…
二人はみるみるうちに白い光に包まれた…
「う…うん…」
「ここは何処じゃ…?冥界…?」
突然目の前が開けた…優也がいる医務室である…
じっと自分の掌を見つめるヴァルプルギス…
「わらわは…どうしたのじゃ?…ヴァルプルガと一つになったのでは…?」
「一つになったぞ…」
ヴァルプルギスの頭の中に声が響く…
「……!」
「私はお前と一つになった…」
「な、何故じゃ?わらわは元々はこの世を呪い生まれてきたお主の悪意の塊…」
「違う…お前は私の憧れじゃよ…」
「………!!」
「生前の私は皆を正しい道に導く為に自分も他人も律する事が多かった…」
「………。」
「その自分が求める正義のために時には冷酷な判断となりうる行動を取らなくてはならなかった…
しかしの…心の中ではな、己の信念のためだけに全てを賭けてみたいと思っていたのじゃ…
そう…今のお主のようにな…ヴァルプルギス…」
「ヴァルプルガ…」
「今のお前は昔のように自分の生を憂いて勢いに身を任せこの世を滅ぼそうとする者では無く、自分自身が全てを賭けられる守りたい者の為に尽くしている…
そんなお前と一緒にもう一度この世を見つめ直してみたいと思うたのじゃ…」
目を閉じてヴァルプルガの顔を心の眼で見つめるヴァルプルギス…
「それにお前をここまで変えたこの者を私も助けたいとそう思ったのじゃ…
ヴァルプルギスよ…人間という種族はつくづく不思議な存在じゃな…
自分達の勝手で失うようなことをするかと思えばそれ以上に大切な何かを産み出す事も出来る…
魔法は使えぬが…きっと我等の目には見えない大きな力を持っているのじゃな…
さあ…私の全てはお前の中にある…
私はお前との約束を必ず全うする…
あの者を全力で救うのじゃ…」
「うむ…」
ヴァルプルギスは大きく頷いた…
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