奥さまは魔王女 2nd season 〜ジーナは可愛い魔女〜

奏 隼人

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トンベリの枝

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「全く…失礼しちゃうわね!わざわざ私達に関係のないバビロナの事を心配して来たのに…」

愛ちゃんはジーニャさんの対応に大変憤慨しているようである。

無理もない…ミラールは元々この件とは関係ない上、色々尽力してくれているにもかかわらず骸が襲ってくるわ、無事にジーナを送り届けたのにお引き取り願えますかって…



神殿の外に出た僕達は一旦例の海岸まで帰ることにした…そこから鏡を使ってジュエラへ帰るつもりだ。

僕達は手を繋いで円になり、その中にフェンリルが入る…ティナがダイナさん譲りのテレポート魔法で全員を海に移動させようとした。

その時、僕の側に突然ヴァルが実体化して現れた…


「すまぬ…お主ら…ちょっと良いかのう…」

「どうしたんだい?ヴァル…」

「ちょっとそこの木の下の枝をわらわに見せてくれんか?」


ヴァルはナギさんの背後にある木を指差した…


「これですか…?」

ナギさんはヴァルに小さな木の枝を手渡した…


「ふむ…やはりこれはトンベリの…エクスよ!」



ヴァルの呼びかけにナギさんの側に伝説の三魔女の一人…エクスさんが現れた。


「おひい様…これは…」

「やはりな…」


二人が深刻な表情で見つめ合う中、ナギさんが不思議そうな表情で「あの…一体その木の枝は…?」と尋ねた…



自然や森が大好きで動物や植物に博識な彼女が知らないあの枝は一体何なんだろうか…?



「詳しい事はジュエラに帰ってから話す!エクス!ご苦労であった」


「ははっ!」


エクスさんはナギさんの中に戻り、僕達は全員、海岸へと瞬間移動した…


そしてティナ達と鏡を使ってジュエラへ戻ろうとしていたその時だった。


「おーい!殿ー!」


聞き覚えのある可愛い声…ジーナも海岸に瞬間移動テレポートしてきたらしい。僕達の元へ急いで駆け寄ってきた…


「はぁ…はぁ…はぁ…間に合った…」


「ジーナ…お姉さんと会えて良かったね…
短い間だったけど一緒に居れて楽しかったよ…元気でね…」


「殿…」


笑顔で握手をしてジーナとお別れしようと思った次の瞬間、彼女から意外な言葉が返ってきた…


「殿…聞いて下さい!!何か…違うんです…あれはいつもの姉ちゃんやない!!誰かにそそのかされてるに決まってる…

なぁ…殿…ウチ、どうしたらええんやろ…?」



優也は少し困った表情で「…でも…君の姉さんの言
う事にも一理あるよ…僕達はよそ者だからね。お礼は言われても口出しは出来ないのも事実だ…」

「嫌や!!嫌や!!このまま殿と別れるのも嫌やし、姉ちゃんが悪い奴にそそのかされてたらウチは一人でどうすればええんや…」


ジーナの訴えかけるような瞳に僕は暫く考えて「…愛ちゃん…」と呼びかけた。


愛ちゃんは何も言わなくてもフッと笑って頷いてくれた…

そして指をパチンと鳴らして紫の小さな風呂敷包みを僕に手渡してくれた。


「…ジーナ…僕達がジュエラに帰った後、この鏡を君の壺の中に入れておいてくれないか?そして何か困ったことがあったらいつでもジュエラに来てくれたらいい…」

「…分かった…殿と暫く離れるのは嫌やけどウチ、我慢するわ…」

そう言ってジーナは無理矢理優也の首に腕を回して口づけた…


「ん~ん…殿…愛してます…」

「ムグムクムグ…」


「なっ…!」

「ちょっ!何してるのよ…!」

「早く離れなさい!!」


優也は驚いてジーナから後退りし、逆に三人の王女は凄い剣幕で彼女に詰め寄った…

「アンタら…ケチケチしたらアカンで…ウチほどではないけどまあまあ見れる女なんやからドンと構えとかんとな…!!

じゃあ…殿!またね!」

台風のように僕の前に現れた可愛い魔女は一旦故郷…姉のもとへ帰って行った…


そして僕達も心残りはあるにせよ一旦ジュエラに…そして人間界へと戻ることにした…
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