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ネクロマンサー
しおりを挟む囲まれてしまった優也達にジリジリと詰め寄ってくる骸達…
ナギとフェンリルはお互いに視線を交わして頷いた…二人は魔法力を解放し始めた。
緑色のオーラに散りばめられた金色の粒子が 二人から大地に注がれていく…
「はぁぁぁぁぁぁ!」
「ムゥゥゥゥゥン!」
いきなり大地が雄叫びを上げて揺れ始める…
「ゴゴゴゴゴゴゴ…!」
僕達を取り囲んだアンデッド達…
しかし更にそのアンデッド達を取り囲むように地面から巨大な植物の根が飛び出した!
怯むアンデッド達…その巨大な根達はアンデッド達だけに絡み付き骸骨の身体を粉々に砕いた…
骸達は土へと還って行き、僕達は安堵の溜息を吐いた…微笑み合うナギさんとフェンリル…
しかし…
「誰よ!こんな…つまらない魔法を使って私達を襲わせたのは…」
愛ちゃんだけは悲しそうに表情を歪めて涙を浮かべた。
ミラールという国は神道に沿って生活し…命の尊さ、亡くなった生命の尊厳を大切に想っているそんな人々が暮らす国…
そんな故郷で育った愛ちゃんはクールな見た目とは裏腹に実は人や動物の命や死者に対して尊い気持ちを持って本当に真摯に向き合う優しい心の持ち主である…
高校生の頃、二人で肩を並べて帰る道すがら救急車のサイレンが聞こえた…
愛ちゃんは僕に呟くような小さな声で「私…将来、命を見守る…そんな仕事に就くの…
私なんかに出来るかどうか今は分からないけど頑張るわ…」と話してくれた。
その頃は僕も何気なくその言葉を聞いて
看護師さんや獣医さんが夢なのかな?でも真面目で成績優秀な愛ちゃんならきっとなれるよな!
と思っていた…
まさか魔法使いとは知らなかったから…
でも彼女の芯に秘めた優しさに僕は惹かれていたのかもしれない…
「こ~ら!ダーリン!アイさんに見とれてたでしょ!あーん…もう!私の事を見てよ…」
「ち、違うよ…ちょっと昔を…」
「昔?」
「な、何でもないよ…」
ティナと僕が自分の事で揉めているとは知らない愛ちゃんは不思議そうに僕達を眺めていた…
「な、何で…姉ちゃんがウチを…何かの間違いやろ…」
顔面蒼白のジーナに気づいた僕達は彼女に駆け寄った。
「ジーナ…顔色が悪いよ…どうしたんだい?」
「ウチの姉ちゃんはバビロナの第一王女にして闇魔法使いなんです…
そやけど残された者と死者を繋ぐ架け橋のような存在で誰からも信頼されとる自慢の姉ちゃんなんです…
なあ…殿!ウチの姉ちゃんは死者を操って人を襲わせるような事は絶対にしません!信じて欲しいんや!」
目を潤ませて僕を見つめるジーナ…とても嘘をついているような目には見えない…
その時だった…僕達の頭の中に女性の美しい声が直接テレパシーで語りかけてきた…
「ジーナ…ジーナなのね…」
「姉ちゃん…これは一体どういう事や…一歩間違えたらウチの大事な人を大変な目に遭わせてしまうとこやで…!」
「ゴメンなさい…また他国の侵略者がやって来たのかと勘違いしてしまって…
何とお詫びしてよいやら…皆様失礼致しました…」
ジーナはみんなの前に出て深々と頭を下げた。
「すんません!!姉ちゃんの非礼はウチからも謝ります…姉ちゃん!!姉ちゃんもちゃんと直接謝ってや!!」
「もちろんです…皆様…どうぞバビロナの神殿へお越し下さい。ジーナ…ご案内して差し上げてね…」
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