奥さまは魔王女 2nd season 〜ジーナは可愛い魔女〜

奏 隼人

文字の大きさ
上 下
24 / 103

骸の棲む街

しおりを挟む
僕達は休憩を入れながら森の入り口から結構な距離を歩いた…

ようやく森を二つに分けた道が終わり、目の前が開けたと思った時…僕達の前に広がる景色に少し驚いた。



僕達が見下ろしているスリバチ状の盆地…海抜より低い土地の真ん中に古い巨大な宮殿らしき建造物が見える…

そして周りには少しの緑と城下町のような建物が立ち並んでいる…


「これが…バビロナ王朝…」



「やっと…やっと…帰ってきたんや…姉ちゃん…みんな…」


ジーナは涙を浮かべてバビロナの街を眺めていた…



「さあ…ご家族の元へ急ごうよ…」

「はい!」


僕の言葉にジーナは笑顔で頷いた。



バビロナ王朝には盆地を取り巻くようなスロープ状になった崖の道を歩いて下りていくしかない…


ただ道自体はそんなに狭くは無いので僕達は街を右手に見ながら変わらないペースで一歩一歩と歩みを進める…








バビロナ王宮では例の黒髪の美女がジーナ達が王朝の街の外れまで来た事を感じ取っていた…


玉座から立ち上がった彼女はニヤリと笑った…


「ああ…我が愛しのジーナよ…もうすぐ会えるのね…」


そして彼女に寄り添う男の影が彼女に語りかけた…


「妹さんが来るんだね…」


「ええ…きっとあなたも気に入るはずよ…」






優也達はどうにかこうにかバビロナの城下町の外れまで辿り着く事が出来た。


渇いた風が吹く…フェンリルやヴァルの言ったようにそこは遠い過去に滅び去った遺跡のような荒野の中の街…




「ここがバビロナか…とりあえず彼女が言うようにジュエラ王を騙る侵略者の手掛かりを探さないと…」


しかし人の気配が全く無い…

ここが故郷であるジーナでもキョロキョロ辺りを見回して以前とは様子が違う事が伺える。

何処から手掛かりを探して良いのか分からず僕達はそこに立ち尽くしていた…ただ…フェンリルだけは周りに不穏な気配を感じて警戒していた。



「優也…」

「ん?」


「…どうやら気をつけたほうがいいぜ…何者かに囲まれているような気がする…しかも歓迎ムードではないらしい…」



…ゴゴゴゴゴゴゴ…


その時だった…周りの土が一斉に盛り上がったかと思うとジーナのような民族衣装を着た男性の骸《むくろ》…

所謂いわゆるガイコツが現れた…そして今にも僕達に襲い掛かろうとしている…



「きゃあぁぁぁぁ!」

「な、なんだ…コイツら…」

「これは…闇属性の魔法…こんな数の骸を操るなんて…なんて魔法力!」



ジーナは呟いた…

「う、嘘やろ…この力は…⁉︎」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

人生を共にしてほしい、そう言った最愛の人は不倫をしました。

松茸
恋愛
どうか僕と人生を共にしてほしい。 そう言われてのぼせ上った私は、侯爵令息の彼との結婚に踏み切る。 しかし結婚して一年、彼は私を愛さず、別の女性と不倫をした。

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

セレナの居場所 ~下賜された側妃~

緑谷めい
恋愛
 後宮が廃され、国王エドガルドの側妃だったセレナは、ルーベン・アルファーロ侯爵に下賜された。自らの新たな居場所を作ろうと努力するセレナだったが、夫ルーベンの幼馴染だという伯爵家令嬢クラーラが頻繁に屋敷を訪れることに違和感を覚える。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

10年間の結婚生活を忘れました ~ドーラとレクス~

緑谷めい
恋愛
 ドーラは金で買われたも同然の妻だった――  レクスとの結婚が決まった際「ドーラ、すまない。本当にすまない。不甲斐ない父を許せとは言わん。だが、我が家を助けると思ってゼーマン伯爵家に嫁いでくれ。頼む。この通りだ」と自分に頭を下げた実父の姿を見て、ドーラは自分の人生を諦めた。齢17歳にしてだ。 ※ 全10話完結予定

【完結】お飾りの妻からの挑戦状

おのまとぺ
恋愛
公爵家から王家へと嫁いできたデイジー・シャトワーズ。待ちに待った旦那様との顔合わせ、王太子セオドア・ハミルトンが放った言葉に立ち会った使用人たちの顔は強張った。 「君はお飾りの妻だ。装飾品として慎ましく生きろ」 しかし、当のデイジーは不躾な挨拶を笑顔で受け止める。二人のドタバタ生活は心配する周囲を巻き込んで、やがて誰も予想しなかった展開へ…… ◇表紙はノーコピーライトガール様より拝借しています ◇全18話で完結予定

地獄の業火に焚べるのは……

緑谷めい
恋愛
 伯爵家令嬢アネットは、17歳の時に2つ年上のボルテール侯爵家の長男ジェルマンに嫁いだ。親の決めた政略結婚ではあったが、小さい頃から婚約者だった二人は仲の良い幼馴染だった。表面上は何の問題もなく穏やかな結婚生活が始まる――けれど、ジェルマンには秘密の愛人がいた。学生時代からの平民の恋人サラとの関係が続いていたのである。  やがてアネットは男女の双子を出産した。「ディオン」と名付けられた男児はジェルマンそっくりで、「マドレーヌ」と名付けられた女児はアネットによく似ていた。  ※ 全5話完結予定  

主役の聖女は死にました

F.conoe
ファンタジー
聖女と一緒に召喚された私。私は聖女じゃないのに、聖女とされた。

処理中です...