奥さまは魔王女 2nd season 〜ジーナは可愛い魔女〜

奏 隼人

文字の大きさ
上 下
7 / 103

バビロナから来た娘

しおりを挟む
「お、お嫁さん…⁉︎」

「ホホホ…優也!またややこしいのが増えたな…」

「もう…ヴァル…人ごとのように言わないでよ…」



「殿…誰と話したはるんですか?」

「えっ⁉︎そ、それは…」



「おお…そうか…仕方ないのう…」

ヴァルプルギスは優也の身体から抜け出して実体化した…

「わっ!小悪魔みたいなんが殿の身体から出てきよった…」

「…優也…この口の悪い娘を転送魔法で次元の果てに送ってやっても良いか?」


「まあまあ…えーっとジーナさん…だっけ…?君は何処から来たの…?何故壺の中に…?」



優也が矢継ぎ早に質問をするとジーナは困ったように苦笑いして…目を伏せて悲しい表情を浮かべた。


「ウチはバビロナから来ました…今はこれだけしか言えません…」


「バビロナ…」


ヴァルプルギスは目を細めた…



その時、リビングにティナが入って来た…


「あっ…すみませんでした…ダイナさん…」

僕はダイナさんにお礼を言って会釈をすると


「ダーリン…私です…ティナです…」


ダイナさんが身体を借りている時とは違う…僕には分かった。

間違いなく僕の愛する妻…プラティナだ…


「気が付いたんだね…ティナ…これには訳があるようなんだ…」


「分かってるわ…ダーリン…ダイナ様を通じて全て伺いました。

その…嫁になるって所以外は理解出来ましたわ…」



そう言ってティナはふくれっ面を見せた…

「コホン…」僕は小さく咳払いをした…



「ジーナさん…訳ありのようだから何か力になれることがあったら協力させてもらうよ…

但し、僕は君の言う…その…殿になったり君にお嫁さんになってもらうことは出来ないんだ…

ご覧の通り、僕には愛する妻も子供もいる…君は美しいからこれからいくらでも愛してくれる人は現れるよ…」



僕はティナの前でキッパリと言い切った。

「ダーリン…」

ティナは機嫌を直したのか僕に寄り添って手をギュッと握ってきてくれた…




しかし彼女も負けてはいなかった…




「殿…バビロナでは一夫多妻は当たり前。

男として立派な甲斐性を持ってるお人がモテるのは当たり前の話やと思います。

ウチはそんなん気にしません。殿に壺の栓を開けて頂けたのがウチの主人たる資格がある証拠ですから…」




「ううう…ハァ…」




僕はティナと顔を見合わせて大きなため息を吐いた…



「じゃ、じゃあ…これだけは教えてくれないかな?君は何故壺の中に入っていたの?」




僕の問いに彼女は少し考える素振りを見せてからゆっくりと口を開く…




「ウチの殿に隠し事をするのは良くないし…

分かりました!殿には本当の事を言います…

実はウチはバビロナから逃げて来たんです。ウチの姉ちゃんがウチを壺に入れて魔法で栓をして海へと逃がしてくれて…ううう…」


僕はティナの顔を見た…

嫁の件では良く思っていないであろうティナも…優しい心を持っている彼女はジーナさんの境遇を察して気の毒に思っているに違いない…

僕も全く同じ気持ちだ。




僕は彼女の背中に手を当てて「ゴメンね…辛い事を思い出させたね…」と彼女を慰めた。


「うわぁぁぁん!」


彼女は大きな声で泣くと僕の首に手を回して抱きついてきた…


「やっぱり…ウチの殿は優しいお人やわ…
間違いあらへん…ウチは決心しました…このお人に一生付いていきます」

プラティナは血相を変えて僕から彼女を引き離す…

「ちょっとあなた!ドサクサに紛れて何やってるのよ!ダーリンは何で逃げたのか聞いているのよ…早く答えなさいよ…」


「何やねん…うるさいなぁ…

ウチよりちょっと早く殿に見初められたと思って…この際やからハッキリ言うとくけどな、殿の事を一番大事に出来るのはウチや!あんたやないで。

ウチは殿にお話しさしてもうてます…外野は黙っといてや!」



「な、何ですって!」

ジーナとプラティナの一戦はヒートアップの様相を見せてきた…




「まあまあ…それで何故…その…バビロナから逃げなくちゃいけなくなったの?」

僕の質問に一旦、二人は落ち着いた…



「ある国の国王と名乗る人物が突然ウチらの国…バビロナを襲ってきたんです…」



「ある国…?」


「はい…ウチは何とかしてその侵略を止めんとアカンのです…」



「その国王とは…?」




「…確かジュエラ国王と名乗っていました…」




「な、何だって…!」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

セレナの居場所 ~下賜された側妃~

緑谷めい
恋愛
 後宮が廃され、国王エドガルドの側妃だったセレナは、ルーベン・アルファーロ侯爵に下賜された。自らの新たな居場所を作ろうと努力するセレナだったが、夫ルーベンの幼馴染だという伯爵家令嬢クラーラが頻繁に屋敷を訪れることに違和感を覚える。

貴方にはもう何も期待しません〜夫は唯の同居人〜

きんのたまご
恋愛
夫に何かを期待するから裏切られた気持ちになるの。 もう期待しなければ裏切られる事も無い。

【完結】お飾りの妻からの挑戦状

おのまとぺ
恋愛
公爵家から王家へと嫁いできたデイジー・シャトワーズ。待ちに待った旦那様との顔合わせ、王太子セオドア・ハミルトンが放った言葉に立ち会った使用人たちの顔は強張った。 「君はお飾りの妻だ。装飾品として慎ましく生きろ」 しかし、当のデイジーは不躾な挨拶を笑顔で受け止める。二人のドタバタ生活は心配する周囲を巻き込んで、やがて誰も予想しなかった展開へ…… ◇表紙はノーコピーライトガール様より拝借しています ◇全18話で完結予定

地獄の業火に焚べるのは……

緑谷めい
恋愛
 伯爵家令嬢アネットは、17歳の時に2つ年上のボルテール侯爵家の長男ジェルマンに嫁いだ。親の決めた政略結婚ではあったが、小さい頃から婚約者だった二人は仲の良い幼馴染だった。表面上は何の問題もなく穏やかな結婚生活が始まる――けれど、ジェルマンには秘密の愛人がいた。学生時代からの平民の恋人サラとの関係が続いていたのである。  やがてアネットは男女の双子を出産した。「ディオン」と名付けられた男児はジェルマンそっくりで、「マドレーヌ」と名付けられた女児はアネットによく似ていた。  ※ 全5話完結予定  

10年間の結婚生活を忘れました ~ドーラとレクス~

緑谷めい
恋愛
 ドーラは金で買われたも同然の妻だった――  レクスとの結婚が決まった際「ドーラ、すまない。本当にすまない。不甲斐ない父を許せとは言わん。だが、我が家を助けると思ってゼーマン伯爵家に嫁いでくれ。頼む。この通りだ」と自分に頭を下げた実父の姿を見て、ドーラは自分の人生を諦めた。齢17歳にしてだ。 ※ 全10話完結予定

後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。  洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。  天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。  洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。  中華後宮ラブコメディ。

乙女ゲームの世界だと、いつから思い込んでいた?

シナココ
ファンタジー
母親違いの妹をいじめたというふわふわした冤罪で婚約破棄された上に、最北の辺境地に流された公爵令嬢ハイデマリー。勝ち誇る妹・ゲルダは転生者。この世界のヒロインだと豪語し、王太子妃に成り上がる。乙女ゲームのハッピーエンドの確定だ。 ……乙女ゲームが終わったら、戦争ストラテジーゲームが始まるのだ。

処理中です...