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チュートリアル
しおりを挟む…その日、仕事を終えた優也は会社の駐車場に向かった。
「ウプッ…食べ過ぎて午後から仕事にならなかった…」
「全く…優也よ…お主は変わらず優しいのう…どうじゃ!わらわも実体化する故に一緒に恋路とやらを育んでみんか?」
頭の中に響いた声は伝説の魔法使い…ヴァルプルギス。色々あって今は僕の守護霊みたいな存在である…
「こりゃ、優也…英霊と言わんか!英霊と!
ダイナもエクスもパルテもお主達の恋愛ゴッコにうんざりしておるぞ…」
そう…ヴァルだけではない…実はティナ、ナギさん…愛ちゃんにもそれぞれの先祖にあたる伝説の魔法使い達が守護…英霊として彼女達に寄り添っている。
その恩恵を受けてか三十代の僕と愛ちゃん…二十代後半のティナとナギさんも全員の肉体が成人直後まで若返ってそれぞれの魔法力も桁違いにアップした。
魔法…そんなモノはおとぎ話の中だけだと思っていた…
それどころか、なんと人間の僕にも魔法が使えるのだ!何でも人間も昔は魔法が使えたらしい…
…と言っても人間界では殆ど不可能で、この世界と二分された世界…魔界での話だが…
魔法の源となるのは魔法因子と呼ばれる自然界に生み出される要素である。
僕達が空気を吸って二酸化炭素を生み出しているように魔法使いと呼ばれる種族の人々はそれを利用して不思議な現象を起こす事が可能なのである。
しかし火や水の元素を操るのが得意な種族や一部の人間のように予知が得意な者、道具などを作り出すのが得意な者など様々な種族に分かれていく過程で人間達は便利な道具を作り出す方へと特化して魔法と呼んでいる力を失ったのである。
そして魔法使いと呼ばれる種族と袂を別つ選択をし、それぞれの世界で暮らし始めた…
それでも昔は両方の世界に交流はあって互いを往き来する人々は珍しくはなかったらしい。
しかし…その世界を決定的に断絶してしまう出来事が起きてしまう…
そう!それが魔女狩りや魔女裁判である。
15世紀ヨーロッパ中世末に悪魔と契約してキリスト教社会の崩壊を目論む魔女が存在するという概念が生まれ、18世紀頃まで魔女裁判によって処刑された人々は全ヨーロッパで数万人にものぼった…
そんな中には本当に魔法使いもいただろうし、有らぬ疑いをかけられた同族間への迫害もあったであろう…
そんな人間達は魔法使い…魔族から見放されて交流は断絶となってしまった。(中には愛ちゃん達…ミラールの人みたいに能力の修業の為に身分を隠して人間社会に溶け込む人もいるらしいが…)
それから長い月日が経ち…そんな事など知らずに生まれて育った僕の前に一人の美しい女性が現れた…それが僕の最愛の妻…プラティナだ。
僕と彼女はいつの間にか愛し合い、二人の可愛い子供にも恵まれて幸せな時間を送っていた…
しかし家出して人間界に来ていた彼女は魔界に連れ戻される…
彼女を…ティナを追いかけて彼女の故郷、ジュエラ王国の王宮に乗り込んだ僕だったが、始めは義父のゴルド大魔王、義母のシルヴァ王妃は共に人間は醜いという価値観から彼女を自分達が選んだフィアンセと結婚させようとしたのだった…
しかし…命がけで彼女を守りたい気持ち、ティナの純粋な愛情が伝わって、僕達は結婚を許してもらえることになった…
こうして人間界、魔界の素晴らしい人々に支えられて僕達は毎日を過ごしているのであった…
「こりゃ!優也!お主…誰に説明しておるのじゃ!…全く…とにかくお主が大事に思っているあの乳の大きな娘以外にもお主を狙っておる女が沢山おるのだからな…まぁわらわもその一人じゃが…あまり優しくしたら更にお主にアタックしてくるぞよ…」
「ヴァル…仕方ないよ…みんな僕にとって大切な人達なんだから…」
「まあ…誰にも優しいのは問題じゃが…自分の周りの人を幸せにするのがお主の一番いいところじゃからな…」
「うん。ありがとう…ヴァル…」
こうしてドタバタだけど幸せな毎日を送っている僕は愛する家族が待つ自宅へと向かっていた…
フンフンフン…
鼻唄を唄いながらティナはキッチンで夕食の支度をしている…
ダイニングテーブルの上にはあの外海に浮かんでいたモノがチョコンと置かれていた…
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