1 / 103
帰ってきた魔王女
しおりを挟むおだやかに晴れたある日…魔界を取り巻く外海の荒々しい波間に小さな何かがプカプカと浮かんでいた…
潮の流れに乗ってそれは自然とジュエラ王国の方角に向かっていた…
…数日後…
「ティナ~!ティナはおらんか~!」
ジュエラ王宮の廊下を大声を上げながら
ゴルド前国王が駆けて行く…
ダイニングフロアでランチの準備をしていたプラティナはゴルドの声のする方へ顔を出した。
「はいはい!お父様…どうされたので…まあ!プッ…アッハッハッハ…」
「…笑い事じゃないぞ…ティナよ…」
ゴルドの眉間の上には大きな目玉の落書きが
油性マジックペンで描かれていた…
「ワシがちょっと昼寝をしておるとこの有様じゃよ…
リル君のイタズラにも困ったもんじゃ…段々とエスカレートしておるぞよ!
お前と婿殿で一度ガツンとじゃな…」
「まあ…お父様がリルに直接仰ってくだされば宜しいじゃないですか…?」
「バカモン!そんな事を言って…もし『じいじ…キライ!』なんて言われたらどうするんじゃ!今までのワシとリル君の絆が水の泡と消えてしまうじゃないか…!」
「はあ…」
プラティナは一つ大きなため息を吐いた…
そしてそっと視線を上げるとゴルドの額の目玉の落書きが目に入ってくる…
「アッハッハッハ…お父様…お腹が痛いですわ…」
「……ハァ…」
娘に笑われて今度はゴルドが大きなため息を吐く…
その頃…優也は会社の食堂で三つのお弁当を前に大きなため息を吐いていた…
「はあ…」
いつもの可愛いうさぎの絵が描かれたお弁当箱、小さな籐のカゴに大きな重箱…
優也は今朝の事を思い出していた…
「じゃあ…行ってくるよ…ティナ!」
「はい!ちょっと待ってね…あなた!!」
パタパタパタ…玄関で靴を履いた優也に奥からルームシューズを履いたプラティナが駆け寄る…
「ダーリン…今日もお仕事頑張ってくださいね。その…なるべく早く帰って来て欲しいです…」
顔を真っ赤にして優也の側で呟くプラティナ…
「勿論だよ…僕も早く帰って来て君に会いたいから…」と僕はティナを抱きしめた。
「本当に?嬉しい…はい!これ…お弁当です!」
「毎日ありがとう!じゃあ…行くね…」
「あっ…ちょっと待って…あなた…」
二人は口唇を重ねる…
ダイニングテーブルに着いて朝食を食べていたミスとリルはそれぞれため息を吐いた…
「はあ…」
「はあ…」
「パパとママ…よくあんなにいっしょにいるのにあきないね…」
「しかたないわよ…ふたりは『おしどりふうふ』なんだから…」
「おねえちゃん…おしどり…なんとかってなに?」
「あたしもよくしらないんだけど…なかよしってことよ…」
「なるほど…」
二人はまた朝食にがっついた…
0
お気に入りに追加
6
あなたにおすすめの小説
夫を愛することはやめました。
杉本凪咲
恋愛
私はただ夫に好かれたかった。毎日多くの時間をかけて丹念に化粧を施し、豊富な教養も身につけた。しかし夫は私を愛することはなく、別の女性へと愛を向けた。夫と彼女の不倫現場を目撃した時、私は強いショックを受けて、自分が隣国の王女であった時の記憶が蘇る。それを知った夫は手のひらを返したように愛を囁くが、もう既に彼への愛は尽きていた。
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
娼館で元夫と再会しました
無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。
しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。
連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。
「シーク様…」
どうして貴方がここに?
元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
選ばれたのは美人の親友
杉本凪咲
恋愛
侯爵令息ルドガーの妻となったエルは、良き妻になろうと奮闘していた。しかし突然にルドガーはエルに離婚を宣言し、あろうことかエルの親友であるレベッカと関係を持った。悔しさと怒りで泣き叫ぶエルだが、最後には離婚を決意して縁を切る。程なくして、そんな彼女に新しい縁談が舞い込んできたが、縁を切ったはずのレベッカが現れる。
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる