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お袋の味?

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…コトコトコトコト…


鍋のガラス蓋が音を立て始めた…


「もう少し…もう少し…」


…コトコトコトコト…



「もういいかしら…」



火を止めてガラス蓋を取って中を覗いたサブリナ…





「あっ…」


彼女は悲しそうな表情《かお》でその場に崩れ落ちた…


鍋の中のじゃが芋はよく煮込まれてつゆが良く染みて美味しそうな色をしていた…



ただ、美味しそうなのはよく染みたつゆの部分だけではなく…煮崩れて割れた部分からホクホクとした白い顔もとても魅力的だった…が…






…ああ…せっかく綺麗に盛りつけた器を優也様に食べて頂きたかったなあ…




彼女が煮崩れで調理を失敗したと嘆いていたその時…



「うわぁ…美味《うま》そう…」


お玉で崩れかけたじゃが芋や他の具を掬《すく》って器へと入れていたのは…


「ゆ、優也様!!」


サブリナは優也に駆け寄った。


「い、いけません!!

それは…失敗作で…

どうぞ王女様やそちらのお客様の料理をお召し上がりになって下さい…

申し訳ございません…」




しかし優也は彼女のその言葉を笑い飛ばした。


「あはは…失敗作⁉︎

この肉じゃが、ウチのお袋の作った肉じゃがと
瓜二つだよ!!」



「ゆ、優也様の…お母様…⁉︎」



「そう。ウチのお袋さ、昔から濃い味付けでさ、親父の好みなのかな?

小さい頃から食べてた肉じゃがにソックリだよ!!

…特にこのじゃが芋なんかね!!」


そう言ってじゃが芋を箸で掴んで口に運ぶ優也…



「うーん…よく味が染みてて…

やっぱりソックリだよ!!ありがとう!!」



優也の嬉しそうな顔にさっきまでとは違う感情の涙が湧き上がるのを必死に堪えた…



マーブルは鍋の中を覗き込んで…



「フン!!こんな失敗作の料理の何処が美味しいって言うのかしら…


自分のロケットのペンダントを私にくれて…


掛け値無しに私の事を心配してくれた男性だと少しは見直していたのに…


結局、誰にでも優しい…優柔不断な男だったのね…」



「おねーちゃん!!」


ふと横を見ると…小さな男の子…リルがマーブルを見上げていた…



「なあに?…坊や…」


「ぼうやじゃないよ…リルっていうんだよ…

あのね…おねーちゃんのにくじゃが…

ぼくももらっていいかな?」




…なによ…フフ…この子、小さいのに本当に美味しいものが分かるのかしら…



「あら、勿論よ…」


彼女はリルからお皿を受け取ってそこに自分の作った肉じゃがを盛りつけた…


「はい!!どうぞ…お代わりもあるから沢山食べてね…」


マーブルが笑顔で手渡したお皿をリルは受け取ってそれを一口頬張った…



「うーん…おいしいんだけど…

ママのつくったにくじゃがのほうがおいしいや…」



「リ、リル…

…ゴメンなさい…この子ったら失礼な事を…


き、きっと私の料理を食べ慣れているからですわ…」



「い、いえ…良いんですのよ…

オホホホホホホホホホホホホ……」




…こ、このガキ…


よくも私の料理をディスりやがったなあ…
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