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ジェットコースター

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その頃…ホテルの一室では優也がスーツのジャケットを脱いでベッドに横たわった弓に付き添っていた。


「先生…本当に病院に行かなくて大丈夫ですか…」

弓の顔を覗き込む優也…


「ううっ…」

弓は苦しそうにうめき声を上げながらおもむろにシャツのボタンを外し始めた…


はだけたシャツから黒い下着と白い肌がチラリと見えた…


「わわっ!!」


慌てて視線を逸らして後ろを向く優也…




弓は自分の胸元を右手で探ってペンダントのチャームに辿り着いた。


そしてチャームを捻りだすとチャームはペンダントから外れて…

彼女は中からカプセル状の薬を取り出した。


弓は力を振り絞るようにベッドの上で起き上がった…


「お、お水を…」


「はっ、はい!!」


慌てて洗面所に向かう優也…

すぐにコップの水を用意して弓に手渡した。


…コクコク…ゴクン…


…はぁ~っ…


薬を飲んで精神的にも落ち着いたのか…

荒い息づかいは穏やかになり、しばらくはベッドに横になってはいたものの…顔色もみるみるうちに良くなってきて……


終にはベッドの上に座って衣服の乱れを直してジャケットを羽織り始めた…


「あの……先生……」


「ああ…ありがとうございました。

さあ…もう済みましたから出ましょうか…」



ニッコリ微笑みかける弓。





…済みましたって……何も始まってませんけど。



…グゥ!!!




安心したのと疲れたので僕のお腹の虫がなった。


「ア、アハハハハハハ……」


「……じゃあ…お昼にしましょうか…?

私もお腹が空きましたし……」




………えっ、お腹が空いた……⁉︎



優也はさっきまで苦しそうだった弓の表情を思い出して…首を傾げた。




あんなに苦しそうに…輝夜先生、持病をお持ちなんだろうか…?

それに一体、あの薬は…?













……ズルズルズルズル!!!



「ああーっ!!!

美味しい!!生き返るわぁ!!」



「はぁ……」



な、なんなんだ…この人…

さっきまでベッドの上で苦しんでいた人と同一人物とは思えない…



浮かない顔の優也を見て…


「あら、食べないの…?

ここのおうどんはコシがあって最高よ…」



「いやいや…驚いてるんですよ…

そりゃあそうでしょ!!

先生みたいに綺麗な方が急に具合が悪くなられて、どうしようかと右往左往してたら薬を飲まれてからはみるみるうちに回復されて…

今はうどんを美味しそうに食べておられる…


まるでジェットコースターに乗ってるみたいな気分ですよ…」


…優也の言葉に弓は一旦箸を置いた。


「ゴメンなさいね…驚かしてしまって…

でも…だから少し休めば治るって言ったと思うけど…

仕方ないのよ…体質だから…」


「い、いや…

別に責めているわけではありませんよ…」


申し訳無さげにポツリポツリと話す弓の様子に優也はハッと我に返った。


「で、どうだったの…⁉︎」

「な、何の話ですか…⁉︎」



「仙石さん…

私とホテルに一緒に入ってドキドキした…?」


おくれ毛を耳にかけながら、弓はイタズラっぽくニヤリと笑った。



「な……!!!」


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