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聞こえてきた会話
しおりを挟む到着した電車の車内をキョロキョロと見渡すと彼らは対面のドアの左側の手摺りを掴んで会話を続けていた。
私はさりげなくそのドアの右側へと身を寄せ、彼らと同じように手摺りを持ち…彼らに背を向けるようにして聞き耳を立てた。
その時…私はハッとして……
「…何やってんだろう…私…
名前も知らない人なのに…
こんなこと…」
「それでさあ…合コンで良い子がいてさあ…
専門学校の子で泉ちゃんっていうんだよ…
もうちょっとで付き合えそうなんだけどさぁ…
おい!!翔…聞いてんのかよ…」
「ああ…聞いてるよ…」
私の耳がピクンと動くのを感じた。
彼の友人らしき人が確かに彼の名前を呼んだのだ。
……翔と。
嬉しかった……!!
ひょっとしたら名前じゃなく、ニックネームなのかもしれない。
でも…私は…
他人から見たらそんな些細なことかもしれないけど優しい彼のことを少しでも知る事が出来て…
まるで天にも昇ってしまいそうな気持ちだった。
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