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どうして
しおりを挟む「うん……」
ジィィィィィ……
通学バッグのファスナーを開けて…
私は中に入っているピンクのペンケースをじっと見つめる…
あの日……私は何も出来なかった…
何も出来なくて…ただ…そこに佇んで…
じっと雨を眺めていた…
……どうしよう……
バッグから折り畳みを出そうとした時、ペンケースを土砂降りの雨の中に落としてしまった。
その時…
なす術もなくその場に佇んでいた私の横をすり抜けて…
自分が濡れてしまうことなど全く躊躇しない様子であなたは真っ直ぐにペンケースが落ちている場所へ向かい…それを拾い上げると…
親友の京子にそのペンケースを手渡してニッコリと微笑んだ。
「あ、ありがとう…ございます…
結衣！！ほら…良かったね…」
「う……うん。」
私は想像もしていなかった出来事に呆気に取られてただ…京子から手渡された私のペンケースを見つめていた。
「ねぇ…ちゃんとお礼…言わないと…あれ？」
「はっ…！」
京子の言葉でふと我に返った私は急いでハンカチを取り出そうとした…
でも……
私達が振り返るとあの人は…このペンケースと同じようにずぶ濡れのまま改札を抜けて人混みの中へ消えて行った…
その日からずっと…
私は自責の念に囚われ続けていた。
どうして……あの時……
だから私は…今日もこうして駅の改札に彼の姿を探している。
目をしっかりと見て。
自分の言葉でハッキリとお礼を言うために。
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