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第三部 勇者への道

いざ緑塔へ

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ロットの口から赤塔の名前が出たことで桃塔の勇者は思案してやがて記憶にたどり着いた。

「ほおもしや、君はロットくんというのかね?」

「どうして俺の名前を?」

桃塔の勇者は赤塔からロットのことを聞いていたのだった。それは魔力が凄まじく、優しい心を持っていると。今はまだ弱いがいつか自分たちの助けになるときも来るかもしれないと。

「ほっほ。赤のやつにきいておるぞ。そして君の言うとおり、無理と言わずにやることが吉じゃ。何しろワシみたいなおじいちゃんでも勇者じゃからのう」

先程の凄まじい治癒魔法とはいえ、勇者とは剣も魔法も優れている印象があった。それなのに目の前の老人は明らかに体を動かすことは得意ではないことが明らかであったため、ロットも希望を少し持つ。

「たしかにおじいちゃんっすね」

「いやワシが勇者になったのは二十代じゃよ?」

若い頃の桃塔の勇者を知らないロットは若い頃は剣も実力があったんではないかと考えた。そうでなくっても勇者になる人は何かしらの才能があると言う考えがロットの中であったため思わず問いかける。

「でもそれは桃塔勇者様が治癒に長けていたからですよね?」

死以外は治して見せるなんて超人技は勇者にふさわしい。それに比べて自分には何があるんだろう、そう感じている。桃塔の勇者はそれを聞いて目を見開いて否定した。

「何を言う、才能なんぞ関係ないわい。それを言うならロット君は膨大な魔力、そちらのお嬢さんは魔力の絶対的なコントロールという才能があるだろう。誰しも一つや二つは才能があるものじゃよ。それにワシも勇者なりたての頃はただ治癒が上手い魔法使いじゃった」

優しく微笑む桃塔の勇者はそう語りかけた。つまり誰にでもチャンスがある。目指すことさえすれば。そう言われている気がしてロット達は勇気が湧いていた。

「あたしは避けるだけなら結構自信あるっすよ。あと食べること!」

「俺は一撃の威力だな。まあロットありきにはなっちまうが、それなら誰にも負けねえ」

エレナとパンチも乗り気になってきて得意なことを発言した。

「ほっほっほ。素晴らしいじゃないか。ぜひこの日取りに緑塔までおいで。当日はワシらも審査をするゆえ待っておるぞ」

桃塔の勇者は満足げにそう言うと、追加の号外を1枚拾い、ロットに手渡してどこかに飛んでいってしまった。記憶させた場所まで飛ぶ転移魔法の一つだ。

「じいさんさようならー!」

もはやエレナの中ではじいさんに落ち着いた桃塔の勇者は完全に見えなくなった。

「あれ?でも勇者は緑塔が決めるんじゃねえのか?」

パンチがそんな素朴な疑問をぶつける。

「事前に挑戦者を勇者様が厳選するってことじゃないの?でもまあそれなら他の勇者様も集結するなら面白そうね」

ケイトが推測で答えた。何しろ数年ぶりの勇者選考になる。ここ数年で勇者の待遇なども良くなった関係でかなりの数が塔に入ろうとするのだろう。それを現役勇者直々にテストするということだ。

そしてそれはきっとワシらという言葉から一人の勇者ではなく少なくとも複数集まることが示されており、行くだけで価値のある催しにおもえた。

「よーし、力試しにいってみっか!」

「出店とかあったら最高っすねぇ」

あるものは勇者という存在に夢を抱き、あるものは興味本位で、あるものは己の実力を知るために、あるものは一種のお祭り感覚で

それぞれ緑塔に思いを馳せて勇者になるため向かうことになった。ちなみに緑塔まではそれほどの距離はなく、腹ごしらえをこなした後に意気揚々と4人は旅立った。




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