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第二部 最大級の使い捨てパンチ

「穴に落ちるのも慣れたわ」

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ロット達は罠によってさらに地下に落とされたが、ケイトの魔法によって衝撃は和らぎ、けが人は出さずに済んでいた。

また、ケイトの魔法の腕が上がったことによって前回の時のように魔力切れで眠ってしまうこともなく、消費が抑えられていた。

ロットは周りを見回す。地下とはいえ壁に明かりがあったため意外とよく見えた。石造りのコロシアムのような作りになっており、レリーフには魔物の姿が描かれている。

「あぁもう、穴に落ちるの久しぶりね」

そんな場所でケイトがお尻の砂を払いながら言った。

「うん。今回は骨がなくてよかったね」

ロットも身投げの穴に落ちたときのことを思い出し、それに比べると穴は浅かったため平然としている。レナは自身も今の状況に不安がないと言えば嘘であり、自分からみて子どもだと思っていた二人が余りにも平然としているためギョッとした。

「あんた達どんな冒険してんだい?」

「まあ冒険者って色々あるからね。それよりもパンチ、さっきあのひとが言ってたことは本当なの?」

普通の冒険者は中々穴に落ちないものよ、とケイトは心のなかで呟きつつも視線をパンチに送る。いつもなら騒いでいそうな彼は今も怒りが収まっていないのか拳を握っていた。

「あぁ。確かに作ったのはあの野郎だ。けど失敗っつうことで森に捨てられてたのをお嬢が拾って治してくれたんだよ」

「なら今度はあなたが助けなきゃね」

ケイトに言われて決意を改める。

「それにしてもここはどこなんだろう?」

辺りにはだれもいない。しかしパンチ達がいる地面は硬い砂地で赤黒く変色していたり明らかに骨らしきものがころがっている。

「これ、骨だよね」

ロットが地面のそれらに気がついた。身投げの穴のように骨の山とはなっていなかったのですぐに分からなかったが、むさぼり食われたのか、弄られたのかわからないがかなりくだけた骨だった。それが意味することを考え、嫌な予感を募らせた。

さらにはケイトが取り乱したりしないか心配で横目で見るが

「ま、考えてもしょうがないわ。それよりも上に登る方法を探しましょう」

ケイトが前向きにそう言った。

4人は突如響いた音に視線を向ける。観客席のようなところの扉が開かれ奴隷商人達がでてきた。その後ろには貴族の男がついてきている。

「ホーッホッホ、その心配入りません」

ケイトの声が聞こえていて、大げさな素振りを使いながら否定した。

「奴隷商!」

レナがすぐに臨戦態勢にはいるが、観客席と闘技場の中、どうやっても届かない距離にいる。魔法ならばと考えが出て、魔法を放つが見えない壁に阻まれて消えてしまう。対策もなく姿を現すわけがなかった。

「これからあなたたちには魔物と戦わせてあげましょう。それも特別ゲスト付きでね」

奴隷商人がそう言って、指を鳴らすと、ごろつきの男たちに引っ張られてカラカラと移動式の牢屋が運ばれてくる。中の人物2人は対照的だった。

「も、もうおしまいです」

ルミナリアはいよいよ自分たちが売られてしまうと前もみれないほど悲しんでいた。

「外ではなさそうっすね、あ!おーいロット君とねぇさーん、ルミナリアちゃんいたっすよー!」

一方でエレナはロットたちを見つけたことで嬉しそうに手を振っている。本当に捕まっているのかと疑いたくなるほどのん気な姿は場違いにちがいなかった。

「お嬢!!」

ルミナリアに気がついたパンチが叫んだ。見知った声にルミナリアもようやく顔を上げて現実を見た。

「ぱ、パンチ!こんなところまで助けに来てくれての!?」

ルミナリアは自分の助けが来ていると思っていなかったので驚く。しかし、自分なんかのために危険なことをしているパンチに心を痛めた様子で目を潤ませた。

「おうともよ、お嬢のためなら火の中にだって入るぜ!それとお嬢の病気を治す方法もわかったからこれで自由に生きられるぞ」

パンチはあくまで明るく言った。相当怖い思いをしているであろうルミナリアをこれ以上に悲しませないため。

魔力種を治す方法について何気なく触れたパンチだったが思わぬところで興味をひいた。

「なにっ?貴様らそれは本当の話か」

その様子にロットは、やはりルミナリアが魔力種に侵されているのを知って攫ったんだなと納得がいき、怒りが湧いてくる。それはケイトも同様で挑発するように言う。

「だーれがあんたなんかに教えるもんですか!教えてほしけりゃここから出してルミナリアさんも解放しなさい」

声を張り上げながらあっかんべーをした。明らかな挑発には乗らない貴族の男であったが、魔力種の真相には相当興味が惹かれていた。

「生意気な小娘よ。素直に答えればいいものの。奴隷商、あの小娘には話があるので殺すな」

そのため憎々しげに貴族の男はそう言い、奴隷商人は不敵な笑みを浮かべて手をこまねる。

「かしこまりました。それはお買い上げということでよろしいですかな?」

どこまでも商魂たくましい奴隷商人が商品でもないケイトを売ろうとする。その様子にケイトはムッとするが、貴族の男は気に入ったようだ。

「ふはははは、したたかな男よ。よかろう、追加で1000金貨払おう」

その太っ腹ぶりに目の色を変えた商人。

「流石でございます!しかし生け捕りとなるとあやつは不味いですね」

どうやら魔物をけしかけることはやめたらしい。少し思案した後に笛を鳴らすと、ロットたちのいる闘技場につながる扉が開かれる。
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