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第二部 最大級の使い捨てパンチ

「頭と呼びな!」

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 こうして、パンチが巻き起こした騒動も含め、ロットたちは見事に山賊たちを制圧したのだった。洞窟の根城に降り立つと、ロットたちは山賊たちの多くが気絶しているのを目にした。

 地面に転がっている者もいれば、震えながら身を寄せ合っている者もいる。意識がある者たちも、痺れと恐怖から立ち上がろうとしない。静寂が一瞬の間だけ場を支配した。

「て、てめぇ、俺ごとやりやがったな……」

 パンチは、少し焦げたような姿で、ケイトに抗議する。髪型も無残に爆発したようになっていた。ケイトはそんな姿を見て、ほんの少し口角を上げる。

「あら、さすがに丈夫ね。」

「でも、これで一網打尽っすね」

 悪びれる様子のないケイトとエレナは軽く肩をすくめて、パンチにあっさりとした口調で言い放った。パンチは怒りに体を震わせたが、言い返す間もなく、やがて怒っているのも馬鹿らしくなりますため息を一つだけついた。

 突然高いところから女性の声が響き渡った。

「あんた達、あたいの大事な手下どもになにしやがんだい!覚悟はできてんだろうね!」

 その声に反応し、ロットたちや山賊までも全員が振り返る。そこには山賊のリーダーと思しき女性が、岩場の上から睨みつけていた。彼女の姿は、まさに荒々しい山賊の風格を漂わせていた。赤髪は一つにまとめられ、胸元を強調したワイルドな服装が目を引く。

「エレナ、危ない!」

 ケイトが叫ぶが、その女性は、岩場から軽やかに飛び降りると、鋭い槍を手にしてエレナへと突進してきた。

「獲物は槍っすね……おっと!」

 エレナは冷静にその突きを避け、軽く身をかわす。女性はその身のこなしに驚いた様子もなく、むしろ楽しそうに、二ヤリと笑った。

「今のを避けるか。なかなかやるようだね。」

 その言葉を受け、エレナは少し得意げに笑い返した。

「いやぁ、それほどでもないっすけどねっぐぅれくどあ!」

 だが、その瞬間、エレナの背後から魔法攻撃が飛び込んできた。油断していたエレナは、突然の衝撃に弾き飛ばされ、地面に転がる。

「エレナ!」

 ロットは叫びながら駆け寄ろうとするが、エレナはすぐに立ち上がり、ほとんどダメージを受けていないことを示した。

「ってて……魔法も達者なんすね……」

 レナは槍を構え、再び攻撃態勢に入る。その瞳には、戦闘に対する自信と決意が宿っていた。

「あんたたちみたいな下賤な奴らには、あたしは負けないよ!」

 その声に応えるように、気絶していた山賊たちが次々と意識を取り戻し、応援の声を上げた。

「いいぞー!姉御ー!」 「頑張れレナちゃん!」 「ファイトーレナの姉御ー!」

 彼らの声援に、レナは恥ずかしそうに顔を赤らめながらも、振り向いて叫んだ。

「てめぇら、あたいのことは『頭』と呼べって言ってんだろ!」

「いいぞー!頭ー!」「頑張れレナちゃん!」「ファイトーレナの頭ー!」

 取ってつけた頭とまんざらでもなさそうな女、レナ。ケイトはそのやり取りを冷ややかに見つめ、手を掲げて魔法を放とうとする。

「どっちが下賤よ。悪人はあんたたちでしょ」

レナは槍を構え直し、反論した。

「確かに盗みはやるが、それはてめぇらクズがあたしらを使い捨てにして貯めた汚ぇ金だろうが!」

「ファイアーボール!」

ケイトは迷わず火の玉を放った。

氷菓子アイスボックス!」

レナもすぐさま反撃に出た。槍先から氷の玉が放たれ、二つの魔法が空中で激突する。

ロットはその光景に目を見張った。

「打ち消された?」

ケイトの魔法と互角の力を持つレナに、ロットは驚きを隠せなかった。その間にもレナは再び槍を振りかざし、攻撃を仕掛けてくる。

「おらおらおらぁ、まだまだやるわよ」

今度は槍での攻撃だ。レナの槍が蛇のようにしなやかに動き、ロットに迫る。だが、ロットも剣を構え、技で応戦した。

突獅とっしん

 二人の武器が激しくぶつかり合い、火花を散らす。その隙を狙って、パンチが拳を振り下ろしながら突撃してきた。

「うぉぉぉぉぉお!!!りゃぁぁぁあ!!!」

「はっ、ノロマだねぇ」

レナは素早く身をかわしたと思ったが、パンチが地面を叩きつけた瞬間、爆風が周囲に広がった。

「きゃああ!?」

レナは爆風に吹き飛ばされ、地面に叩きつけられた。そして案の定パンチはふらふらと大の字に倒れた。

「パンチ、本当に一撃で魔力切れるんだね……」

ロットがつぶやくと、ケイトも少し寂しそうに頷いた。

「なんか、悲しいかな、親近感が湧くわね……」

パンチは、体質上全ての魔力を一撃に込めるしかなく、その代償として魔力切れで倒れ込んでしまったのだ。レナは、地面に倒れたまま苦しげに咳をしながらも、彼らを睨みつけた。
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