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第二部 最大級の使い捨てパンチ

「つけてるね」「なぜわかった!?」

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それよりも今はもう一つ解決しておかないといけない問題があった。

「ところで、あれ、どうするっすか?」

エレナがその件に触れる。指差す方向は後方で1本の樹を指していた。

「ずっとつけてるわね」

ケイトも知っていた。二人は気の抜けた顔から一変、警戒心を強めた。

隠れているとは思えない大きな体躯が、エレナの指した木の間からはみ出ており不自然に目立っていた。

「さすがにロットも気づいたみたいね?」

ロットはケイトの言葉に内心腹を立てる。自分だって少しは成長して、これくらいの尾行には察することができるようになっていたのだ。

むしろなぜ気を抜いているように見えてエレナとケイトがこういうところは抜け目なくいることができるのかが疑問だった。

「船着場くらいからつけられてたよね」

おそらく後をつけ始めた一番初めをロットが言った。船着場では遠目に感じるだけだったが、その後もジュリの家から出るときも、ずっとついてきていた。

実のところそれよりも少し前から付けていたが、優しさからケイトは何も言わない。

「何もしてこないけど……そろそろ声をかける?」

そうとは知らないロットが聞いた。隠れ方があまりにも下手で、隠れているのがむしろ目立っている不審者は、もし寝込みなどを襲ってくるつもりだと不味いので危険が迫る前に声をかけておくことにした。

「寝込みに来られても困るからね。ちょっと、そこの人!」

「……」

声をかけられた相手は、自分が対象だとは思っていなかった様子で、隠れているつもりの木の陰から頭を出すこともなく、周囲を見回すだけだった。

「そこの木の陰に隠れてる人っすよ」

ようやく具体的に指摘されると、相手は驚いて周りを見回した後、焦りながら答えた。

「ききき、木の後ろには誰もおらんぞ!」

「返事したじゃないの」

ケイトが呆れた様子で言った。

「はっ、騙したな、ひきょう者め!」

相手は図星の焦りからか、顔を真っ赤にしながら姿を現した。長身の男で、金髪がツンツンと立っており、切れ長の目が鋭い印象を与える。

執事のような服装だが、酷く着崩しており、ネクタイも外れたままだった。

「あんたが馬鹿なだけでしょ?それにそんな大きな身なりで隠れられるはずないじゃない」

悪くいうとガラが悪そうな相手だが怯む様子なく。ケイトが冷ややかに言った。

「くっ、うるさい!こうなったら実力行使だ!」

案の定男は怒りに駆られて、腕をぐるぐる回しながらロットに向かって走り寄ってきた。しかし3人は落ち着いている。

「俺が相手するね」

ロットがケイトを守るように前に出た。剣の柄に手をかけ、構える。相手が素手であるのに対し、ロットは剣を持っている。

さすがに相手も怯んで一度は足を止めるだろう、その時に馬鹿なことはよせと話をしようと計画立てていたロットは

「はーっはっはー!ガキ相手でも容赦せんぞ!神の一撃ゴッドハンマー!」

無鉄砲に突っ込んでくる相手に崩される。
男は威勢よく叫びながら、巨大な拳を振り上げた。ロットはその迫力に少し怯みながらも、回避する時間は十分にあった。

「さすがに俺でも避けられ」

そう言いつつロットは後ろに飛び退いたが、それでも男は構わず地面を強烈に殴りつけた。

「っうわぁぁあ!?」

一撃の威力は3人の予想を遥かに超えるもので、衝撃で地面にクレーターができ、風圧によって吹き飛ばされたロットは木にぶつかり、呻いた。

「ロットになにするのよ!ファイアーボー!」

それを見たケイトが怒りに燃えた声で魔法を放とうとしたが、その瞬間エレナが彼女の腕を止めた。一体何事かとエレナを見るが、エレナは怒りでもなく困った顔をしていた。

「姐さん、待つっす」

「なによ!ロットがやられたのよ」

エレナの表情は気になったが、それ以上に仲間がやられたことにケイトは感情的になったが、エレナは冷静に指さして説明する。

「ロット君は気を失っただけですし、みてくださいよ。相手も何故か、ほら倒れたっす」

ケイトがその方向に目を向けると、男が白目をむいて仰向けに倒れていた。ケイトも唖然として口を開け、その場に立ち尽くした。

「なんでよ」

そして行き場のない魔力を霧散させて怒るべきか呆れるべきか、悩んだ。

「まあ詳しくは目が覚めたら聞きましょう」
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