【2部まで完結!】使い捨てっ子世にはばかる!?~妹が最強の魔王になるかもしれない~

うろたんけ

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第一部 無駄な魔力と使い捨て魔法使い

「私の気持ちは?」

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私はとても身体が弱く、よく体調を崩しては兄がお世話をしてくれていました。

兄には内緒ですが、六歳より七歳、七歳より八歳になったときのほうが体調を崩すことが多くなって、その辛さも増しているような気がしています。

それでも辛いときは兄が
「ソイル、お兄ちゃんが側にいるからな、がんばれ」
ってたくさん励ましてくれると身体が楽になって今日までこうして生きてこれました。



そして九歳の誕生日の夜。



やっぱり誕生日はとっても体が重いです。

そしてわかりました。

今日はいつもと違って兄の励ましだけではだめなこと。

兄の励ましは嬉しいけれどそれだけでは身体の中がモヤモヤとするこの感じが晴れることはないと実感していました。

そして遠のく意識の中、兄が嵐を物ともせず村長の家へ向かう姿に頼もしさと申し訳無さを感じながら目の前が真っ暗になりました。



そして目が覚めると兄が号泣していました。


「うぅ、ソイル。目が覚めてよかった。お兄ちゃん頑張るからなぁ、お前が大きくなれるよう頑張るからなぁ」

「ロットよ、ワシがソイルのことは責任を持って守るからのぉ。老い先短いワシの命に変えても守り抜くからのぉ」

そして笑うとシワシワになる村長がその顔でそう答えていました。

二人で抱き合って泣いています。

え、一体どういう状況ですか?

質問するまもなく、扉が開いて見知らぬ男性が入ってきました。

その男性もこの光景には面食らったみたいでギョッと後退りする姿があります。


「な、なにをしているのかな?」


引きつりつつも笑顔です。

そんな男性を見ていると目が会いました。

思わず頭を下げます。

私はどうしてか知らない人と話せません。咄嗟に声は出ませんでした。

こんにちわって言うだけなのに難しいな。

「ソイルちゃん、目覚めて何よりだよ。調子はどうかな?」

この人は私のことを知っているようです。

誰なんでしょう。

知らない人に声を出そうとすると喉がぎゅってなってしまうので困っていると兄が涙を拭いながら遮るように立ってくれました。

号泣していて顔がぐしゃぐしゃでしたがやっぱり兄は頼りになります。

 「僕かい?僕は赤塔の勇者と人は呼ぶよ」

勇者様!すごい、絵本とかに出てくるあの勇者様ですか。有名人さんです。

「うん、僕のことを知らない人はいないんじゃないかな?」

ん?私今何も言ってないような。

「妹は知らない人相手に話すのはちょっぴり苦手なんです。

でも見た感じ、いつもみたいにつらい時期は抜け出したみたいなんでひとまず大丈夫だと思います」

兄が普通に話しています。そうですよね、きっとたまたま。

「そっか、じゃあ今日はもう一日休んで、明日出発としよう」

男の人はそう言うとまた部屋を出ていきました。

出発?そう疑問を抱いていると兄の頬をつたって私の手の甲にしずくがポタポタとこぼれ落ちてきました。

顔をあげるとまた号泣です。

「お、お兄ちゃん。なんで泣いてるの?」

知っている人だけになったら声が出るようになりました。

「うぅ、ソイルそれはな……」




泣きじゃくりながら話す兄と村長からなんとか私が眠ってしまっていた間のことを聞きだすと、

どうやら私は一年後に死んでしまう、それを止めるために兄が先程の男性、勇者様と聞いて驚きですがその方と一緒に旅に出るようです。

私はなんとなく自分があんまりたくさん生きられないだろうことはわかっていましたが、一年はなんだか寂しいなと思いました。

でもそのために兄が勇者様についていって危ない目に合うのは嫌だなとも思いました。

だからそんなことしないでって伝えると更に泣かれ、兄想いの優しい妹に育って嬉しいやらさすがワシの村の子じゃ、やら村長にも褒められました。

最終的には兄は私のためにたびに出てしまうようですとっても寂しいです。

それにしても、兄も村長も普段は本当に頼りがいのあるかっこいい人たちなのにすぐ泣くんだから。

身体のだるさも残っておらず、今までで一番身体が軽い気がするほど体調の良い私は、話を終えたあとお兄ちゃんと一緒に家に帰ることにしました。

兄は勇者様との旅支度を整え、私は村長の家に移り住む準備です。

元気な私にお兄ちゃんはとても喜んでくれていましたが、私は自分が元気になることよりも兄が私のために犠牲にならないことがとっても嬉しいです。



……そうだ!私も旅についていって、できることを頑張ろう。

聞くと勇者様はとっても優しくてすごい人みたいだし、もし私に何かあっても村長より勇者様のほうがなんとかしてくれそうだし、

お兄ちゃんには犠牲になってほしくない気持ちは本当だけど、あと一年しか生きられないかもしれないなら何よりお兄ちゃんと一緒にいたい。

明日勇者様にお願いしてみよう。

もちろん兄は反対するだろうけど勇者様さえ説得すればなんとかなるはずだから。

なので身支度は村長の家用ではなく旅をするために整えました。兄には内緒です。

途中兄が手伝おうとしてきましたが女の子の身支度を手伝うのはたとえ兄であっても許しません。

少ししょんぼりする兄でしたがパンツを見られるのはそろそろ恥ずかしい年頃なんです。

そして夜、最後になるかもしれないと思っている兄と一つの布団でに眠りました。

とってもあったかくて優しくて、大好きな匂いです。

一体どんな夢を見ているのか

「ソイル、そんなやつと結婚はみとめん」

とか寝言を言う兄は本当にバカで、でもとても優しくて、とてもあったかくて、とても大切な私の自慢のお兄ちゃんです。
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