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≪本編≫

【本編34】

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同居生活も順調で、何事もなく3週間経った。

問題の人は4日前に仮釈放されたので、正式に護衛を頼んでいる。

それまで指導してくれていた護衛の相葉さんは、実は高千穂さんの義父の妹さんの旦那さんで、善意で特訓してくれていた事が解った。

というより、高千穂さんをゴリラにした原因の人物だったらしい。

義兄夫婦が養子だと紹介した瞬間“この子には護衛術を教え込まなければ危険だ!”と、謎の使命感が沸いたらしく、各武道を教え込んだという。

もちろん、その後知り合った十夜さんにも護衛術を教え込もうとしたけど、体力の問題で諦めざるを得なかったとか。

十夜さん、どんだけ体力無いの?

「いや、あのゴリラ達には付いていけないって!」

と、叫んでた。

まぁ、確かに…。

竜也さんは8年前の事件の後から、護身術を習い始めて暫くして嵌まったと言っていた。

この2人、めちゃくちゃバランスのいい細マッチョなんだよなぁ。

羨ましい。

竜也さんと高千穂さんは今までの特訓、俺はもしもの時の為の戦術アドバイス、十夜さんはただひたすら走れとw

各個人にあった特訓メニュー、筋トレと護身術をこなしていた結果、俺は理想的な体型とシックスパックを手に入れた。

それから、俺達は3週間前にペアを組んだとは思えない程仕事が入ってきていて、それなりに忙しい日々を送っていた。

「あ、しまった。荷物取りに行きたかったんだ」

唐突に十夜さんが言い出した。

「どこにです?」

「借りてるマンション。昨日帰った時に忘れもんして来たんだった」

俺は夕飯を作りながら話をする。

「さっき松本さんが交代の木村さんが来ないけど、帰らなきゃいけないから絶対に外出しないでって帰っちゃいましたよ?」

警察関係から紹介してもらった俺達に割り振られた護衛の人は、松本さん、上田さん、岡田さんの3人で、この人達は相葉さんの部下。

昼間は、俺に松本さん、高千穂さんに上田さん、竜也さんと十夜さんは職場が一緒なので2人に岡田さんが付いていた。

彼らとは違って、木村さんは民間の護衛会社の人で夜間専門の人。

相葉さんと2人で夜の護衛をしてくれている。

今日は昼の仕事がどうしても断れなくて、遅れると連絡があったので、部屋から出ずに居留守状態にして待つように言われていた。

「ぬ~。じゃぁ、しょうがないな。明日の朝で間に合うか?」

「何が欲しかったんです?」

「撮影スタジオの入構証」

「ちょっ!明日使うやつですか?」

よりによって一番要るものじゃないですか!

「そう」

十夜さんは巨大クッションを抱き締めてじたじたしている。

「朝焼けバックですから朝3時に出ますもんね。しかも、逆方向…」

スタジオと十夜さん達のマンションは真逆の位置にある。

「取りに行くなら1時には出ないとなんないからさ、出来れば今のうちに取りに行きたいんだよなぁ。あー、でもちぃも竜也も遅くなるって連絡来たし、行くなら電車だよなぁ…無理か」

今日は高千穂さんは卒論について大学に行っているし、竜也さんは常連のモンスタークレーマーに対応しているらしい。

そして、お持ち帰り出来るほど軽い十夜さんと、まだ護身術に自信の無い俺は、護衛の人がいないと外出も出来ない。

今日は、偶々俺が学校から十夜さん達の仕事場まで行って髪の毛を切ってもらったついでに、持ち帰れと竜也さんに言われて十夜さんだけ一緒に帰って来ていた。

最近は俺と十夜さんがセットでいる事が多いからだ。

竜也さんと高千穂さんに言わせると、自然な絡みが出来た方がペアとして良いだろうとの事。

十夜さんを構い倒すのは願ったり叶ったりだったけど、ぎこちないと竜也さんと高千穂さんから突っ込みが入る。

抱き締めたり抱えたりが日常になって、十夜さんも躊躇なく抱きついてきたりするので、漸くお墨付きを貰った。

今なら、端から見たらベタ甘なカップルに見えるだろう。

今日もテレビを見ながら足の間に十夜さんを抱えている。

所謂恋人座り?

竜也さんと高千穂さんがよくやってるやつだ。

「竜也さん達に電話します?」

「あー。護衛の人とは別々の車でしょ?久々の2人っきりだし、邪魔したくないかなぁ。と」

「…あ、ハイ」

なるほど。

恋人の時間か。

俺達も、今、2人っきり‥デスヨ?

とは、言えないけど。

「たぶんすぐに木村さんが来るから、取りに行ってもいいか聞いてみたらどうです?ただ、契約外かもしれないから行ってくれるか解りませんけどね」

「うーん。そうするか…」

ピンポーン♪

そんな話をしていたら玄関のインターフォンが鳴った。
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