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≪本編≫

【本編25】

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引っ越し&撮影当日。

取り敢えず、本格的な格闘技講座は引っ越しの荷物が全て片付いてからになった。

ただ、筋トレだけは基礎を毎日やるように言われたのであの日から簡単な筋トレを続けている。

今日は撮影があるから荷物だけを運んで終わりにして、高千穂さんの運転で撮影スタジオに向かう。

「寒い~」

「11月ですからね。風邪引かないで下さいよ?」

スタジオの駐車場に着くと、十夜さんは一番後ろのトランクルームでYORUに着が…変身を始めた。

トランクルームは四方をカーテンで仕切ってあるけど、さすがに11月は寒いだろう。

というか、今日は特に寒い。

天気予報には12月下旬並の寒波だそうだ。

「あ、そだ。秀臣、秀臣。胸の作り方見るか?」

十夜さんは俺が胸に驚いていたのを思い出して、そんな事を言い出してカーテンの隙間から顔を出した。

「…遠慮します」

ちょっと、気になるけどね!

諦めきれてない今の状態で裸見るとか何の罰ゲーム?

…いっそ、胸が無い事を確認した方が諦めがつく?

そういえば、俺もYORUルールを教えてもらった。

①車を降りたら喋らせない、喋らない。
②車を降りたら女の子として扱う、振る舞う。
③必ずエスコートして周りを牽制する。
④一人きりにしない、させない。
⑤勧誘は全て断る。
⑥3人共名字は“月見月”を名乗る事。
⑦それについて聞かれたら兄弟で通す事。
⑧連絡先を聞かれても無視、もしくは高千穂さんに振る。

大体こんなもん。

今回からは勧誘されてもすでにウチと契約してるからスムーズに断れると、高千穂さんが喜んでいた。

「時々しつっこい人いるんだよ~。この前のリップのクライアントみたいに引き下がる人ばっかじゃなくてさ~。酷いとYORUに詰め寄る人もいるからね~」

「正直、蹴り飛ばしたかった…。あいつ、声出せないって解ってて迫りやがって」

「あの時は高千穂がペンを握り潰したトコで引いたがな」

さすが高千穂さんw

しかし、声が出ない人に迫るなんて最低な大人もいるんだな。

「今回のクライアントの大野さんは、この前の様子じゃ大丈夫そうだけどね~」

「餌付けされてたよな?」

「ケーキ美味しかった♡」

「あの人、子供好きで有名ですよ」

あのお菓子メーカーの人には、俺がモデルを始めた頃にお世話になっている。

本当に子供が好きで、撮影後にお菓子を沢山貰った事もある。

「「…子供……ぶっwww」」

「むっきぃぃ!」

竜也さんと高千穂さんが吹き出し、十夜さんはカーテンの向こうで怒り心頭だw

だけど、めちゃくちゃ笑顔全開でケーキ食べてましたもんね。

大野さんも周りの皆もニコニコしてましたよ。

YORUになった十夜さんがカーテンを開けると竜也さんが後部座席からトランクルームに移ってYORUメイクをする。

慣れているだけあって手早い。

今日はシックな感じのゴスロリ。

安定の可愛さだ。

それにしても、一体何着持っているんだろう?

今日からYORUのエスコートは俺が担当する事になった。

十夜さんと腕を組んで撮影スタジオに着くと、すでに大野さんから桜井さん、それにスタッフさん達が揃っている。

全員が前回と同じ人だった。

俺達は挨拶を済ませると、段取りを聞いた。

撮影は屋外と部屋の2パターン。

どっちも、好きに楽しくケーキを食べて欲しいと言われた。

動画の方は昔のサイレント映画のように字幕にするそうだ。

台詞は俺達の行動を見た後から考えるとの事なので、ホントに好きに楽しく恋人同士のように食べればいいらしい。

今回は何台かのカメラだけ回し、静止画は動画から抜粋すると言われた。

好きにケーキが食べられるのが嬉しいのか、十夜さんの目がまた輝いているw

「嬉しいのは解ったから、取り敢えず着替えに行こう?」

十夜さんは勢いよく首を縦に振った。
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