上 下
6 / 69
≪本編≫

【本編6】

しおりを挟む
【十夜side】

俺は電話を掛けに行く振りをして駐車場に向かった。

は~。呼び出された時は何かと思ったけど、まさかの再会&お仕事依頼。

くっそダサいコンセプトに感謝だな♪

ってか、YORUが憧れの人って…じゃぁ、何であの時来なかったんだよ…。

いや、今は急ぐか。

俺は撮影所の駐車場に止まっている一台のハイエースに近付いて窓をノックする。

「…何だ?忘れ物か?」

竜也が顔を出しながら鍵を開けてくれる。

俺は後部座席のドアをスライドして開けると、車に乗り込んだ。

「眼鏡はどうした?」

「あ。んと、取り敢えず」

今回は俺を捜す連絡網が竜也に回ってきて、そのまま配達された。

前回同様こうして車で待っていてくれる。

「カクカクシカジカでYORU出動案件。隊員は速やかに集合せよ!」

「解った」

竜也は全く説明してないのに電話をかけ始めた。

『もしもーし?』

電話の相手はちぃ、佐倉高千穂。

こっちも遠い親戚に当たる、大事な幼馴染み。

「YORU案件、詳細はこれから」

竜也はそれだけ言って携帯を置いた。

『は~い』

「で?」

「うん。実はね…」

俺は呼ばれてからの一連の流れを話した。

『社長さん、昔のままいい人だね』

「だな」

「うん。探してるのがYORUなら助けたい。じぃちゃんの教えに従って“困ってる女性は出来る範囲で助ける!”を実行しようと思う! 」

『僕は賛成だよ。近いからそっち向かうけど、移動中だから連絡はそっちでよろ~』

そう言ってちぃは電話を切った。

「爺さんの教えには従わないとな。一応聞くが、あいつに避けられる可能性もあるが…いいんだな?」

俺達3人は秀臣が8歳の時に全員会っている。

もちろん、その時に母親である社長さんにも会っていた。

社長さんは秀臣と仲良くしていた俺達に「いつも、秀臣と遊んでくれてありがとう」ってよく差し入れをくれた。

「…うん。きっと大丈夫な気がするから。頼んでもいい?」

「お前が決めたなら問題無い。その事務所の連絡先は解るか?」

「ん、これ社長さんの名刺」

竜也に名刺を渡すと、後部座席に移って電話を始めた。

俺も車の一番後ろのトランクルームに行って、YORUになる為に車の四方のカーテンを閉める。

幻でもツチノコでもCGでもねぇよ?

高校の卒業祝いだと言ってじぃちゃんにプレゼントされたのは、意味不明な事に女性用下着1ダースだった…。

そして、専門学校に入学した時にじぃちゃんが祝いだと言ってプレゼントしてくれたのがゴシックロリータと呼ばれる女性用衣装が一式…いや、段ボール一箱…。

じぃちゃんに頭が上がらない俺は、言われるまま女装するしかなかった…。

いや、途中から全員ノリノリだったけどさ…。

その女装写真をじぃちゃんが冗談で広めたせいで、YORUとゆー名前でモデルをやる羽目になったのは18歳の時だ。

それ以来、時々女装してモデルをしていた。

何故かモデルをやった商品が馬鹿売れするという偶然が重なり、YORUを使うと商品が売れるという意味不明なジンクスが付いてしまい、依頼が殺到。

幻だと言われたのは、もちろん素性が明らかにならない事もあったが、中々連絡が取れない事が要因だった。

俺の携帯がパンクして繋がり難くなり、面倒になった俺がそのまま携帯を解約したせいだろう。

…だからって、CGは無いわww

今は伝を辿って竜也か、ちぃに辿り着かない限り、依頼は受けない事にしている。

2人が居ないとYORUは不完全だから。

俺達は3人でYORUになる。

今回は特例だ。

昔お世話になった人に恩を返せるなら、女装だって何だってするさ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

傷だらけの僕は空をみる

猫谷 一禾
BL
傷を負った少年は日々をただ淡々と暮らしていく。 生を終えるまで、時を過ぎるのを暗い瞳で過ごす。 諦めた雰囲気の少年に声をかける男は軽い雰囲気の騎士団副団長。 身体と心に傷を負った少年が愛を知り、愛に満たされた幸せを掴むまでの物語。 ハッピーエンドです。 若干の胸くそが出てきます。 ちょっと痛い表現出てくるかもです。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

目が覚めたら囲まれてました

るんぱっぱ
BL
燈和(トウワ)は、いつも独りぼっちだった。 燈和の母は愛人で、すでに亡くなっている。愛人の子として虐げられてきた燈和は、ある日家から飛び出し街へ。でも、そこで不良とぶつかりボコボコにされてしまう。 そして、目が覚めると、3人の男が燈和を囲んでいて…話を聞くと、チカという男が燈和を拾ってくれたらしい。 チカに気に入られた燈和は3人と共に行動するようになる。 不思議な3人は、闇医者、若頭、ハッカー、と異色な人達で! 独りぼっちだった燈和が非日常な幸せを勝ち取る話。

【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】

彩華
BL
『俺、そんな目でお前のこと見れない』 高校一年の冬。俺の初恋は、見事に玉砕した。 その後、俺は見事にDTのまま。あっという間に25になり。何の変化もないまま、ごくごくありふれたサラリーマンになった俺。 そんな俺の前に、運命の悪戯か。再び初恋相手は現れて────!?

学園と夜の街での鬼ごっこ――標的は白の皇帝――

天海みつき
BL
 族の総長と副総長の恋の話。  アルビノの主人公――聖月はかつて黒いキャップを被って目元を隠しつつ、夜の街を駆け喧嘩に明け暮れ、いつしか"皇帝"と呼ばれるように。しかし、ある日突然、姿を晦ました。  その後、街では聖月は死んだという噂が蔓延していた。しかし、彼の族――Nukesは実際に遺体を見ていないと、その捜索を止めていなかった。 「どうしようかなぁ。……そぉだ。俺を見つけて御覧。そしたら捕まってあげる。これはゲームだよ。俺と君たちとの、ね」  学園と夜の街を巻き込んだ、追いかけっこが始まった。  族、学園、などと言っていますが全く知識がないため完全に想像です。何でも許せる方のみご覧下さい。  何とか完結までこぎつけました……!番外編を投稿完了しました。楽しんでいただけたら幸いです。

いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜

きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員 Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。 そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。 初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。 甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。 第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。 ※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり) ※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り 初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。

十七歳の心模様

須藤慎弥
BL
好きだからこそ、恋人の邪魔はしたくない… ほんわか読者モデル×影の薄い平凡くん 柊一とは不釣り合いだと自覚しながらも、 葵は初めての恋に溺れていた。 付き合って一年が経ったある日、柊一が告白されている現場を目撃してしまう。 告白を断られてしまった女の子は泣き崩れ、 その瞬間…葵の胸に卑屈な思いが広がった。 ※fujossy様にて行われた「梅雨のBLコンテスト」出品作です。

家事代行サービスにdomの溺愛は必要ありません!

灯璃
BL
家事代行サービスで働く鏑木(かぶらぎ) 慧(けい)はある日、高級マンションの一室に仕事に向かった。だが、住人の男性は入る事すら拒否し、何故かなかなか中に入れてくれない。 何度かの押し問答の後、なんとか慧は中に入れてもらえる事になった。だが、男性からは冷たくオレの部屋には入るなと言われてしまう。 仕方ないと気にせず仕事をし、気が重いまま次の日も訪れると、昨日とは打って変わって男性、秋水(しゅうすい) 龍士郎(りゅうしろう)は慧の料理を褒めた。 思ったより悪い人ではないのかもと慧が思った時、彼がdom、支配する側の人間だという事に気づいてしまう。subである慧は彼と一定の距離を置こうとするがーー。 みたいな、ゆるいdom/subユニバース。ふんわり過ぎてdom/subユニバースにする必要あったのかとか疑問に思ってはいけない。 ※完結しました!ありがとうございました!

処理中です...