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【18話】

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「失礼。それでも私達はそんな身分差の婚約は認めたくないのが現状でね。特に貴女には良い身分の方と婚約して欲しいのだよ」

絶望したようなフォッグ伯爵夫人に寄り添うように、フォッグ伯爵が割り込んできた。

「国王陛下の決定に異を唱えるというのですか?」

睨まれていたグレイが真っ直ぐにフォッグ伯爵を見据える。

「そういう訳では…」

「では、どういったおつもりですか?」

「それは、君さえ貴族としての意識を持ってミモザ様に婚約破棄をされれば…」

フォッグ伯爵が言い淀んでいると、宮廷楽団の奏でる曲が変わった。

国王陛下と王妃様、第二王子の入場みたい。

さすがに全ての貴族が口を閉じて、臣下の礼を取る。

私達も国王陛下達の登場する会場内部にあるバルコニーの方を向いてから頭を下げる。

第二王子が姿を表し、続いて国王陛下と王妃様が姿を見せる。

本来なら第二王子も婚約者を連れていなければならないのだけれど、第二王子の婚約者は幼すぎる為に公式の場に出てくる事はない。

第二王子の婚約者は隣の皇国の皇女で、第二王子の後ろ楯としては最高だけど、皇女はまだ産まれたばかり。

年の差は15歳。

皇女がデビューする頃には第二王子は三十路…。

貴族社会での政略結婚が当たり前とは言え、そこに愛が芽生える事を祈るしかない。

国王陛下の楽にしていいという言葉にそれぞれ楽な姿勢に戻る。

そして、デビューする新成人達へのお祝いの言葉を述べた国王陛下と王妃様がファーストダンスを踊り終わったら、次は私達が婚約者同士、或いは家族や血縁者と踊ってデビューを果たす。

婚約者同士は続けて踊る事で周囲から認識されるので、2曲から3曲連続で踊る。

「ミモザ様。私達もそろそろ踊りましょうか」

グレイが国王陛下と王妃様のダンスが終わったのを見て、私を促した。

「…一ついいかね?」

フォッグ伯爵夫妻がダンスホールに向かおうとする私達に立ち塞がる。

「…もしも、いずれかの王子殿下との婚姻を王命だと言われたら如何します?」

まだ続ける気かしら?

しつこいわね。

と思っていたら、急に音楽が止まった。

何事かとダンスホールを見ると、国王陛下がどうやら誰かと話をして音楽を止めたらしい。

「皆の者に伝えておこう。この度王家から出された招待状に少し不備があった事を報告する。ローズミスト侯爵家に送られた招待状に書かれていた第三王子の婚約者候補選抜の件だが、他の候補者に行き渡ってない事が判明した」

あら。

果敢にも国王陛下に直に聞いた強者が居たという事か。

それもすごいけど、不備という事で済ませるのね。

「この件に関しては問題が大きい為、第三王子の婚約者候補選抜自体を無かったものとする。折角の門出だ。皆、楽しむがいい」

その言葉を合図にまた音楽が流れ始めた。

無かったものとして、うやむやにしたわね?

まぁ、カクタス様と婚約しないですむならこれ以上話は蒸し返さないわ。
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