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【17話】
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「それとこれとは別問題です!」
不穏な空気になりかけた時、慌てたフォッグ伯爵夫人がまた叫んだ。
ちょっと、マナー違反じゃないかしら?
引き籠りの私だって、社交の場で大声を出すのはみっともないと知ってるわよ?
まぁ、疑惑の招待状問題から目を背けなきゃならないから、形振り構ってられ無いんでしょうけども。
「大体、貴方、使用人じゃない!侯爵家に取り入るなんてあり得ないわ!」
いや、どちらかと言えば取り入ったのはウチです…。
グレイが優しいのをいい事に、矢面に立ってくれるようにお願いしました。
「あり得ないも何も、国王陛下が認めて下さった婚約ですが?何か問題でも?確かに、元々護衛兼使用人として仕えてはいましたが、先日、職を失う覚悟でミモザ様に長年の想いを打ち明けたところ、快くお返事を頂きました。旦那様は「長い年月一緒にいれば、愛が芽生えてもおかしくはない」と、話を薦めて下さっていたのです」
グレイは青ざめているだろう私の手に反対の手を重ねて落ち着かせてくれる。
私はグレイに絡めた手に更に力を込めて、優雅に見えるように微笑んだ。
ざわざわと周りがうるさい。
ああ、またこれで“ブス”と言われるんだわ。
「ええ。わたくし、とある事件でずっと引き籠っておりました。そんなわたくしの傍にずっといてくれたグレイは、なかなか心を開かないわたくしを優しく見守り続けてくれましたの」
でも、もう“ブス”でもいいの。
この茶番を計画した時に、グレイが「ここまで来て言うのもまぬけだが、俺はちゃんとお嬢が好きだからこの話を引き受けたんだからな!」と真っ赤な顔で教えてくれたから。
学園生活が終わったら好きなだけ引き籠っても良いけど、簑虫は週に休日だけって。
どうしてもなりたい時は申告して、太らないように庭を散策してからだって。
グレイはそのままの私で良いんだって、無理に変わる必要はないと言ってくれたから。
まだ、怖いけれど、私はもう“婚約=殺される”の定義は間違っていると知っている。
「もちろん、駄目な時には諭して下さったり、毎日のように色とりどりの花を見に連れ出してくれたり、本当に何年もかけて、わたくしに笑う事を思い出させてくれたのです」
言い方を変えるだけでこんなに美談になるなんて、驚きだわ。
最初に会った時は、怒鳴られてシーツを剥ぎ取られたわね。
太るからと、毎日庭を散策させられていたのも良い思い出ね。
笑ったのは初めて会った時だけど。
「そんなわたくしが、グレイに恋心を抱いてもおかしくはなかったのでしょう。お父様は喜んで2人の仲を認めて下さいました。なので、本日、わたくし達がデビューするに当たって、婚約を発表する事に致しましたの」
グレイに話をする前に、両親は私に確認をしてくれた。
私は、グレイが引き受けてくれるならと了承した。
その後、グレイにも了承をしてもらい、お父様には「幸せになりなさい」と言われ、お母様は涙ぐんで祝福してくれた。
「もちろん、国王陛下に許可を頂いてのお披露目でございます。どなたにも否定される謂れはありませんわ」
私はフォッグ伯爵夫人に向かってしっかりと目を合わせて宣言した。
不穏な空気になりかけた時、慌てたフォッグ伯爵夫人がまた叫んだ。
ちょっと、マナー違反じゃないかしら?
引き籠りの私だって、社交の場で大声を出すのはみっともないと知ってるわよ?
まぁ、疑惑の招待状問題から目を背けなきゃならないから、形振り構ってられ無いんでしょうけども。
「大体、貴方、使用人じゃない!侯爵家に取り入るなんてあり得ないわ!」
いや、どちらかと言えば取り入ったのはウチです…。
グレイが優しいのをいい事に、矢面に立ってくれるようにお願いしました。
「あり得ないも何も、国王陛下が認めて下さった婚約ですが?何か問題でも?確かに、元々護衛兼使用人として仕えてはいましたが、先日、職を失う覚悟でミモザ様に長年の想いを打ち明けたところ、快くお返事を頂きました。旦那様は「長い年月一緒にいれば、愛が芽生えてもおかしくはない」と、話を薦めて下さっていたのです」
グレイは青ざめているだろう私の手に反対の手を重ねて落ち着かせてくれる。
私はグレイに絡めた手に更に力を込めて、優雅に見えるように微笑んだ。
ざわざわと周りがうるさい。
ああ、またこれで“ブス”と言われるんだわ。
「ええ。わたくし、とある事件でずっと引き籠っておりました。そんなわたくしの傍にずっといてくれたグレイは、なかなか心を開かないわたくしを優しく見守り続けてくれましたの」
でも、もう“ブス”でもいいの。
この茶番を計画した時に、グレイが「ここまで来て言うのもまぬけだが、俺はちゃんとお嬢が好きだからこの話を引き受けたんだからな!」と真っ赤な顔で教えてくれたから。
学園生活が終わったら好きなだけ引き籠っても良いけど、簑虫は週に休日だけって。
どうしてもなりたい時は申告して、太らないように庭を散策してからだって。
グレイはそのままの私で良いんだって、無理に変わる必要はないと言ってくれたから。
まだ、怖いけれど、私はもう“婚約=殺される”の定義は間違っていると知っている。
「もちろん、駄目な時には諭して下さったり、毎日のように色とりどりの花を見に連れ出してくれたり、本当に何年もかけて、わたくしに笑う事を思い出させてくれたのです」
言い方を変えるだけでこんなに美談になるなんて、驚きだわ。
最初に会った時は、怒鳴られてシーツを剥ぎ取られたわね。
太るからと、毎日庭を散策させられていたのも良い思い出ね。
笑ったのは初めて会った時だけど。
「そんなわたくしが、グレイに恋心を抱いてもおかしくはなかったのでしょう。お父様は喜んで2人の仲を認めて下さいました。なので、本日、わたくし達がデビューするに当たって、婚約を発表する事に致しましたの」
グレイに話をする前に、両親は私に確認をしてくれた。
私は、グレイが引き受けてくれるならと了承した。
その後、グレイにも了承をしてもらい、お父様には「幸せになりなさい」と言われ、お母様は涙ぐんで祝福してくれた。
「もちろん、国王陛下に許可を頂いてのお披露目でございます。どなたにも否定される謂れはありませんわ」
私はフォッグ伯爵夫人に向かってしっかりと目を合わせて宣言した。
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