14 / 55
第二章 欺瞞で顔を作って嘘をつく
4 開けていない匣
しおりを挟む
週に二回程度だった残業が、現在は毎日ある。そして休日出勤も当たり前になり、心身共に疲弊。そろそろ気分転換にフルートを吹きたいと思うようになっていた。
福岡くんのお母さんと初めて会ったあの日から、ちょうど三週間が経った。
忙しい仕事に身を委ねたおかげか、それは、もう一年前のように思える。むしろ、もうなかったことにできたらいいのに。
朝、夏希から『そろそろ練習の再開する?』と連絡が来たが、私はまだ返信できずにいた。
仕事で忙しい。
しかし、そんなことよりも懸念していることがある。それは私が学校に行けば福岡くんと会ってしまうかもしれないということ。
偶然でも会うのはまずい。
もし、また話すようなことがあれば、あのお母さんにどう説明すればいい?
私にはもう無理だ。あの人のことを考えると、植え付けられた怒鳴り声と傷つけられたことへの恐怖で体がすくむ。そんな状態で対面できるわけがない。
「眞野さん」
会社のパソコンをぼーっと眺めていると、声が聞こえた。
だが、なにを言っているのかわからなくて、話かけられたのは私ではないと思い込んでいた。私なんかに声をかけるのは、仕事を押し付けたい人間くらいだろう。
「眞野さん?」
肩を揺すられた。
その衝撃で我に返り、顔を上げると、すぐ隣に奈良栄先輩が立っていた。目の保養と呼ばれるほどの良い顔の持ち主で、尚且つ、嫌な顔せずに誰にでも仕事を手伝ってくれる先輩。
「あっ! 奈良栄先輩! すみません、なんでしょうか?」
ハハハと急いで笑顔を作ると、先輩はデスクに小包装されたチョコレートを置く。
「眞野さん、顔が疲れてるよ。手伝おうか?」
「チョコ食べて」そう勧められて手に取ってみると、それはアーモンドチョコだった。それを口に入れると甘いチョコレートが広がり、噛んだ瞬間にカリッと良い音が鳴る。香ばしいアーモンドだ。
「いつもありがとうございます。少しだけ、手伝ってもらってもいいですか?」
「いいよ。あまり無理しないでね」
甘いマスクに微笑まれて、コロッと堕ちない女なんているのだろうか。
彼の優しくて甘い言葉に、ほんのりと頬が熱くなる。
先輩は本当に優しい人だなぁ。仕事を覚えるのも、こなすのも早い。人柄が良いから人望もあるし、将来も有望。こんな人と結婚できたら、不満一つもない、自慢の夫になるに違いない。
パソコンと睨めっこしながら、そんなことを考える。
「ちょっと待ってくださいね。見積書を作ってほしいんですけど、それで……見積書の情報を、今から先輩のパソコンに送ります」
メールを開く。
数ある中で、どう見ても不要だと思われる営業のダイレクトメール、そしていかにも個人情報を抜き出そうとする迷惑メールが並んでいた。
私はコントロールキーを押しながら、それぞれのメールにカーソルを合わせてワンクリック。不必要なメールを一通一通選択していく。
「要らない……要らない……要らな」
クリックする指が止まる。一通のメールに目が止まった。
『出会いをお探しの方へ。目の前に現れた男性だけが全てだと思っていませんか? よく思い返してください。その人はあなたの大切にしているものを壊しませんか。傷付ける言葉を言いませんか。暴力は振るいませんか。そんな人と一緒にいては幸せになれません。あなたを大切にしてくれない悪い男はさっさと捨てて、ここで新しい出会いを見つけましょう』
新しい出会い、か。
もし。
もしも、だ。前に付き纏ってきたストーカーが彼氏だったらどうだろうか。
考えるまでもない。
——最悪だ。
そのメールも選択し、青色が付いた。
それにしても、あの付き纏いはなんだったのだろう。なにがしたかったのだろう。
特に被害があったわけではない。風呂場を覗かれたこともないし、変な郵便物が入っていたこともない。鍵もちゃんと締めてるから、部屋に入られた痕跡もない。
彼に気づかされるまでは、怖い思いを一度もしたことがなかった。
そういえば、元気かな——
「福岡くん」
誰にも聞こえない声量で、久方ぶりの名を呟く。
お母さんとの関係、あれから悪くなってないかな。
心配はしているが、連絡することはない。
「結局、連絡先は消せなかったな」
自分から消してとお願いしたくせに、指が動かなくて。スマートフォンの小さな画面に表示された『連絡先を削除』の文字を何度も見た。
何度もそれを押そうと、指を向けた。それと同じ数、指は逸れて『キャンセル』を押した。
何故?
そう訊かれると、明確に答えられない。考えても考えても、連絡先を消したくない答えを得られなかった。
パソコン画面に映る受信トレイ。その中にある削除ボタンを押した。
ここの受信したメールは躊躇わずに消去できるのに。
「ふくおかくんて、誰?」
「ひゃっ」
耳元に息がかかる。その吐息がくすぐったかったのと、言いようのない恥ずかしさで、頬を朱色に染めた。
勢いよく見上げると、そこには奈良栄先輩がいた。悪魔のように優しい笑顔で。
「えっと、わからないところがありました?」
任せた仕事の質問だろうか。そう思っていたのだが、
「いや? 眞野さんがなかなか見積もりの資料を送ってくれないからさ。待ってんの」
忘れてた!
自分のバカさ具合に目眩がした。
見積もりに必要なデータを添付したメールを新規作成し、アドレス帳から先輩の名前を選択する。そして送信ボタンを押すと、心を摘まれたような痛みが走った。
「ッ?」
なんだろう。そっと胸元に手を添える。心が、痛い。
「眞野さん、可愛いなァ」
名前を呼ばれた瞬間、ぞくりと体が震えた。心臓が握り潰されて血が吹き出したかと思った。これは——得体の知れない、恐怖だ。
冷や汗がこめかみ、そして首元まで流れていく。
周りの音が聞こえない。
息が、できない。
「眞野さん、大丈夫?」
カチリと魔法が解ける。
「すみません! えっと、ここの会社の見積書をお願いします! もう送りましたのでよろしくお願いします!」
なんだったんだ。さっきのは一体……。
「で、福岡くんて誰? 彼氏?」
パッチリ二重の彼は、悪戯っ子のように笑う。いつもの先輩だ。頭の中で彼が彼だと理解すると、安心した。
ホワイトムスクの甘い香水に頭の奥が痺れるような感覚に陥りながらも、電話の音で我に返った私は「先輩、顔が近いです」と両手で遠ざけた。
鼓動が速い。一呼吸置いた。
「別に彼氏じゃないですよ」
「じゃあ、なに?」
「なにかと言われたら……うーん、後輩、でしょうか?」
「そうなんだ! よかったァ」
安堵したような表情を浮かべるので、私は首を傾げる。
「どうして『よかった』んですか?」
「どうしてでしょーか?」
少年のような、屈託のない笑顔を向けられる。
先輩にとって、私は特別な存在?
「今日、仕事が終わったら時間ある?」
「えっと、はい。大丈夫です」
「じゃあ、また後でね」
これはデートというのでしょうか。
状況の変化に頭が追いつかず、しばらくの間茫然とした。すると、隣のデスクにいる同僚から肘打ちされる。
茶髪を団子にしている同僚は、なにかあった時に助けてもらうような関係ではないけど、話くらいはできる人。
「先輩とご飯?」
「さ、さあ」
「眞野さんに気があるんじゃない? 奈良栄先輩」
「まさかっ……んなわけないよ」
「独身同士、いいと思うよ? 結婚すればいいじゃん。私はもう結婚してるし、応援してあげる。結婚式、呼んでね!」
「いやいやいや、話が急すぎるし」
そう否定したものの、実際は確かにそうかもしれない。
私は三十三歳。先輩は私の三つ上。先輩も親から結婚の話を切り出されていてもおかしくない。母の言葉が蘇る。
『今は一人で生きていけるでしょうけど、歳を食えば独りだなんて不安ばかりなの、わかってる? 安定の生活を手に入れないと、後からつらい思いをするのはアンタよ⁉︎』
まるで呪いの言葉のようだ。どれだけ振り払っても、母の言葉がべったりとくっついてくる。
現実を見ろ、呪いはそう言っているかのように思えた。
福岡くんのお母さんと初めて会ったあの日から、ちょうど三週間が経った。
忙しい仕事に身を委ねたおかげか、それは、もう一年前のように思える。むしろ、もうなかったことにできたらいいのに。
朝、夏希から『そろそろ練習の再開する?』と連絡が来たが、私はまだ返信できずにいた。
仕事で忙しい。
しかし、そんなことよりも懸念していることがある。それは私が学校に行けば福岡くんと会ってしまうかもしれないということ。
偶然でも会うのはまずい。
もし、また話すようなことがあれば、あのお母さんにどう説明すればいい?
私にはもう無理だ。あの人のことを考えると、植え付けられた怒鳴り声と傷つけられたことへの恐怖で体がすくむ。そんな状態で対面できるわけがない。
「眞野さん」
会社のパソコンをぼーっと眺めていると、声が聞こえた。
だが、なにを言っているのかわからなくて、話かけられたのは私ではないと思い込んでいた。私なんかに声をかけるのは、仕事を押し付けたい人間くらいだろう。
「眞野さん?」
肩を揺すられた。
その衝撃で我に返り、顔を上げると、すぐ隣に奈良栄先輩が立っていた。目の保養と呼ばれるほどの良い顔の持ち主で、尚且つ、嫌な顔せずに誰にでも仕事を手伝ってくれる先輩。
「あっ! 奈良栄先輩! すみません、なんでしょうか?」
ハハハと急いで笑顔を作ると、先輩はデスクに小包装されたチョコレートを置く。
「眞野さん、顔が疲れてるよ。手伝おうか?」
「チョコ食べて」そう勧められて手に取ってみると、それはアーモンドチョコだった。それを口に入れると甘いチョコレートが広がり、噛んだ瞬間にカリッと良い音が鳴る。香ばしいアーモンドだ。
「いつもありがとうございます。少しだけ、手伝ってもらってもいいですか?」
「いいよ。あまり無理しないでね」
甘いマスクに微笑まれて、コロッと堕ちない女なんているのだろうか。
彼の優しくて甘い言葉に、ほんのりと頬が熱くなる。
先輩は本当に優しい人だなぁ。仕事を覚えるのも、こなすのも早い。人柄が良いから人望もあるし、将来も有望。こんな人と結婚できたら、不満一つもない、自慢の夫になるに違いない。
パソコンと睨めっこしながら、そんなことを考える。
「ちょっと待ってくださいね。見積書を作ってほしいんですけど、それで……見積書の情報を、今から先輩のパソコンに送ります」
メールを開く。
数ある中で、どう見ても不要だと思われる営業のダイレクトメール、そしていかにも個人情報を抜き出そうとする迷惑メールが並んでいた。
私はコントロールキーを押しながら、それぞれのメールにカーソルを合わせてワンクリック。不必要なメールを一通一通選択していく。
「要らない……要らない……要らな」
クリックする指が止まる。一通のメールに目が止まった。
『出会いをお探しの方へ。目の前に現れた男性だけが全てだと思っていませんか? よく思い返してください。その人はあなたの大切にしているものを壊しませんか。傷付ける言葉を言いませんか。暴力は振るいませんか。そんな人と一緒にいては幸せになれません。あなたを大切にしてくれない悪い男はさっさと捨てて、ここで新しい出会いを見つけましょう』
新しい出会い、か。
もし。
もしも、だ。前に付き纏ってきたストーカーが彼氏だったらどうだろうか。
考えるまでもない。
——最悪だ。
そのメールも選択し、青色が付いた。
それにしても、あの付き纏いはなんだったのだろう。なにがしたかったのだろう。
特に被害があったわけではない。風呂場を覗かれたこともないし、変な郵便物が入っていたこともない。鍵もちゃんと締めてるから、部屋に入られた痕跡もない。
彼に気づかされるまでは、怖い思いを一度もしたことがなかった。
そういえば、元気かな——
「福岡くん」
誰にも聞こえない声量で、久方ぶりの名を呟く。
お母さんとの関係、あれから悪くなってないかな。
心配はしているが、連絡することはない。
「結局、連絡先は消せなかったな」
自分から消してとお願いしたくせに、指が動かなくて。スマートフォンの小さな画面に表示された『連絡先を削除』の文字を何度も見た。
何度もそれを押そうと、指を向けた。それと同じ数、指は逸れて『キャンセル』を押した。
何故?
そう訊かれると、明確に答えられない。考えても考えても、連絡先を消したくない答えを得られなかった。
パソコン画面に映る受信トレイ。その中にある削除ボタンを押した。
ここの受信したメールは躊躇わずに消去できるのに。
「ふくおかくんて、誰?」
「ひゃっ」
耳元に息がかかる。その吐息がくすぐったかったのと、言いようのない恥ずかしさで、頬を朱色に染めた。
勢いよく見上げると、そこには奈良栄先輩がいた。悪魔のように優しい笑顔で。
「えっと、わからないところがありました?」
任せた仕事の質問だろうか。そう思っていたのだが、
「いや? 眞野さんがなかなか見積もりの資料を送ってくれないからさ。待ってんの」
忘れてた!
自分のバカさ具合に目眩がした。
見積もりに必要なデータを添付したメールを新規作成し、アドレス帳から先輩の名前を選択する。そして送信ボタンを押すと、心を摘まれたような痛みが走った。
「ッ?」
なんだろう。そっと胸元に手を添える。心が、痛い。
「眞野さん、可愛いなァ」
名前を呼ばれた瞬間、ぞくりと体が震えた。心臓が握り潰されて血が吹き出したかと思った。これは——得体の知れない、恐怖だ。
冷や汗がこめかみ、そして首元まで流れていく。
周りの音が聞こえない。
息が、できない。
「眞野さん、大丈夫?」
カチリと魔法が解ける。
「すみません! えっと、ここの会社の見積書をお願いします! もう送りましたのでよろしくお願いします!」
なんだったんだ。さっきのは一体……。
「で、福岡くんて誰? 彼氏?」
パッチリ二重の彼は、悪戯っ子のように笑う。いつもの先輩だ。頭の中で彼が彼だと理解すると、安心した。
ホワイトムスクの甘い香水に頭の奥が痺れるような感覚に陥りながらも、電話の音で我に返った私は「先輩、顔が近いです」と両手で遠ざけた。
鼓動が速い。一呼吸置いた。
「別に彼氏じゃないですよ」
「じゃあ、なに?」
「なにかと言われたら……うーん、後輩、でしょうか?」
「そうなんだ! よかったァ」
安堵したような表情を浮かべるので、私は首を傾げる。
「どうして『よかった』んですか?」
「どうしてでしょーか?」
少年のような、屈託のない笑顔を向けられる。
先輩にとって、私は特別な存在?
「今日、仕事が終わったら時間ある?」
「えっと、はい。大丈夫です」
「じゃあ、また後でね」
これはデートというのでしょうか。
状況の変化に頭が追いつかず、しばらくの間茫然とした。すると、隣のデスクにいる同僚から肘打ちされる。
茶髪を団子にしている同僚は、なにかあった時に助けてもらうような関係ではないけど、話くらいはできる人。
「先輩とご飯?」
「さ、さあ」
「眞野さんに気があるんじゃない? 奈良栄先輩」
「まさかっ……んなわけないよ」
「独身同士、いいと思うよ? 結婚すればいいじゃん。私はもう結婚してるし、応援してあげる。結婚式、呼んでね!」
「いやいやいや、話が急すぎるし」
そう否定したものの、実際は確かにそうかもしれない。
私は三十三歳。先輩は私の三つ上。先輩も親から結婚の話を切り出されていてもおかしくない。母の言葉が蘇る。
『今は一人で生きていけるでしょうけど、歳を食えば独りだなんて不安ばかりなの、わかってる? 安定の生活を手に入れないと、後からつらい思いをするのはアンタよ⁉︎』
まるで呪いの言葉のようだ。どれだけ振り払っても、母の言葉がべったりとくっついてくる。
現実を見ろ、呪いはそう言っているかのように思えた。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説

隠れドS上司をうっかり襲ったら、独占愛で縛られました
加地アヤメ
恋愛
商品企画部で働く三十歳の春陽は、周囲の怒涛の結婚ラッシュに財布と心を痛める日々。結婚相手どころか何年も恋人すらいない自分は、このまま一生独り身かも――と盛大に凹んでいたある日、酔った勢いでクールな上司・千木良を押し倒してしまった!? 幸か不幸か何も覚えていない春陽に、全てなかったことにしてくれた千木良。だけど、不意打ちのように甘やかしてくる彼の思わせぶりな言動に、どうしようもなく心と体が疼いてしまい……。「どうやら私は、かなり独占欲が強い、嫉妬深い男のようだよ」クールな隠れドS上司をうっかりその気にさせてしまったアラサー女子の、甘すぎる受難!
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

包んで、重ねて ~歳の差夫婦の極甘新婚生活~
吉沢 月見
恋愛
ひたすら妻を溺愛する夫は50歳の仕事人間の服飾デザイナー、新妻は23歳元モデル。
結婚をして、毎日一緒にいるから、君を愛して君に愛されることが本当に嬉しい。
何もできない妻に料理を教え、君からは愛を教わる。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ヤンデレエリートの執愛婚で懐妊させられます
沖田弥子
恋愛
職場の後輩に恋人を略奪された澪。終業後に堪えきれず泣いていたところを、営業部のエリート社員、天王寺明夜に見つかってしまう。彼に優しく慰められながら居酒屋で事の顛末を話していたが、なぜか明夜と一夜を過ごすことに――!? 明夜は傷心した自分を慰めてくれただけだ、と考える澪だったが、翌朝「責任をとってほしい」と明夜に迫られ、婚姻届にサインしてしまった。突如始まった新婚生活。明夜は澪の心と身体を幸せで満たしてくれていたが、徐々に明夜のヤンデレな一面が見えてきて――執着強めな旦那様との極上溺愛ラブストーリー!
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる