ヒマつぶし

4.感染った

朝、鏡を見るとおでこに変な模様ができていた。黒い逆三角形のマーク。手で擦ってみても、水で洗ってみても全く剥がれない。

そういえば、昨日から頭がボーッとする。これと関係あるのだろうか。

熱を測っても通常どうり。

わからないけど、ダルいけど、
仕事にはいかなきゃ。

重い腰を上げて、何とか動き始めた。



職場。いつもと変わらない職場。

でも少しだけ違うとこがある。

みーんな、ダルそう。

目がトローンとして、熱があるみたい。

あのハゲた上司なんかおでこに何か貼ってるし……ん？

あれ、私と同じ模様じゃん！

あわてて自分のおでこを触る。

ハッと周りをよく見ると、みんなおでこに同じ模様がかかれている。

「何、、これ。。」

私が思ったのと同時に真横の女性が喋った。

同僚のマキちゃんだ。

「ほんとにね、、。ねぇ、昨日の雑誌かった？」

ふと猛烈に雑誌のことが喋りたくなった。

「雑誌？あぁ、かつお節のみそ汁飲んだわよ。美味しかったわぁ～。」

マキちゃんは意味不明な答えを返す。

「そうよねぇー、ファブリーズ美味しいよねぇ」

あれ？なんの話だっけ？
私もすでにダメみたいだ。
このせいなのかはわからないが、とにかくよくわからない。

「かつお節がさぁー。ヤバくて……」
マキちゃんもダメだ。
もう壁と会話している。

「資料はできたかね？」
「あんたなんか嫌いよ！離婚よ！」

……！？

気づけば、周りのそれぞれがぶつぶつと一人で会話していた。

「・・・。」

平和でいいなぁ、と思った。
えーと、平和って何だっけ？わかんないな。

でもあと少しだからいいなかぁ。

もう少し。もうすこしなんだよ。

なにがあとすこしなのかもわかんないけど、

「へいわでいいなぁー。」

そっとつぶやいた。

おしまい