ヒマつぶし

12.昨日、私は死にました。

昨日、私は死にました。

えぇ、真っ黒などしゃ降りの夜でした。

そうです。あの、山本ビルの屋上からです。
よくご存じで。

まぁ、夜の九時頃のニュースでちょっと取り上げられましたからね。見た人は見たかもしれない。

それにしても、アナウンサーさんは大変ですね。毎日、どこかしろで人が死ぬもんだから、簡単に死ぬとか口にしなきゃいけない。病みますよねぇ。

あ？お前がいうなって？はは、それも言えてますね。

はぁーー。。(タメ息)

飛び降りたときの気持ち？あぁ、気持ちは良かったですよ。絶好調です。

ひゅっと音がして、私は風を感じました。体と一緒に心も軽くなりましたね。

あぁ、そうだ。死ぬ前ってね、頭がありえないくらいのスピードで色んなことを考えるんですよ。生れたときのことから、今までやって来た失敗とかも、全部思い出す。

どこで間違っちゃったのかな。うまくいく方法はなかったのかなってね。
もうこんな状態なのに、どうやったら生きられるかってね。笑えるでしょう？

多分、いくら私が死ぬ気でも、体は生きようとするんでしょうね。こういうの、普通の人は走馬灯っていうんでしょうね。
僕にとっては、生命最後の悪あがきにしか思えなかったっすけどね。

…。

初めて、夜景が綺麗に見えました…。雨なのにね。走馬灯も諦めて、ほんっとうに最後の瞬間。
地面の方見ててもコンクリートばかりで面白くないから、前向いたときですよ。
ぶっちゃけ夜景なんか、ただの光の集団だと思ってたんですよ。
でも、命…。雨に滲んだ夜景の美しいこと、美しいこと…。
灯りの一つ一つに命を感じたんですよ。
めちゃめちゃ綺麗でしたね。

はぁー…、泣きましたね。俺も死ななきゃ灯りの一つになれたんかなーって。いつ間違えたんだーって。
なんか、死ぬ前に命が共鳴したのかなって思いました。
だって次の瞬間、グチャァって、自分の肉片が飛ぶ音がしましたから。

ん？ほんとは死にたくなかったのかって？
いや、死にたかったですよ。ほんとに来るしかったですし。

ただ、死ぬ前に誰か一人にでも必要とされたかったなぁ…なんて。

もう後の祭りですよね。どうしようもない。

ただ、私はこれからあの世にわたりますよ。

多分、自分で死んだので地獄に落ちるでしょうけど…。生きるよりも苦しむかもしれない。
でも、まぁいいんですよ。

地獄は当たり前に苦しむとこですからね。

ここみたいに、不公平じゃない。
眩しく輝いてる人も見なくてすみますから。

…、あぁ大変だ。時間だ。49日は限られてますからね。
閻魔さんに怒られちゃいます。急がなきゃ！

…。

ま、貴方も最悪死ねばいいですからね。

逃げたやつがいうのも何ですが

頑張って。