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Case1 僕とくまのぬいぐるみ
ペーターとアーコード2
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ぬかるんだ道をずっと歩き続けると、徐々に整備された道にかわっていった。疲れていた僕にとって通りやすい道はありがたい。
そして道をずっと歩き続けていくと、日が暮れる寸前に、目的地……森の奥の屋敷にたどり着いた。
「ついた。ここが私の家」
森の中から突然現れた木の家。しかも丸太を組み合わせて作った家らしく、ログハウスといったところだろう。
深い森の奥、ここだけ木漏れ日が差し込んでいて、その屋敷だけを明るく照らしていた。白い木材で作られているらしくて、より神々しく見える。かなり大きな屋敷だ。
差し込んだ太陽の光を浴びると、とても気持ちがいい。
「すごい……」
想像していた建物の数倍は大きい。
「こんなに大きな建物内が森の奥にあったなんて、知らなかった」
僕は地図を広げた。当たり前だが、個人宅の場所など書いていない。
「地図でいうと、この辺かな」
アーコードさんは僕が持っていた地図を指した。いわれた所とは随分離れてるじゃないか!
「さ、入って入って。君を歓迎しよう」
アーコードさんが先に屋敷の中に入ると、まず最初にぶわっと埃が舞った。真後ろで思い切り吸った僕は、咳き込んだ。
「ゲホ、ゲホッ!」
家に入った第一印象。
とにかく物が多い!
家の中というより、倉庫とか工房の類のようだ。
奥の棚にはびっしりと作業道具が置かれていて、僕を助けた時に投げたノミの類等、見たことのない道具ばかりだ。ほかにも小物や分厚い本など、僕の家にはないものばかりが置かれている。ただし、そのほとんどが埃にまみれ。
まあ、作業部屋と言えば聞こえはいいが、問題はその散らかしっぷりだ。床や壁は物であふれている。特に机の上には作業道具がとっちらかっていて、似たようなノミやナイフ、鉛筆、紙、消しゴムのカス……もうめちゃくちゃだ。
「全然掃除してないじゃないか」
「そう?気にしない気にしない」
気になるよ!ああ、今すぐにでも掃除したい!
「そこに座って。あ、コーヒーあるけどいる?」
アーコードさんはテーブルに散らかったものを腕でひと払いして、何事もなかったかのように二人分のコーヒーを持ってテーブルに置いた。この散らかしっぷりとは真逆な、白い陶器のコーヒーカップだ。
「いただきます」
僕は内心突っ込みたいのを抑えて椅子に座り、ミルクと砂糖を入れてコーヒーを一口飲む。口の中に温かいコーヒーの味が広がり、身体中が温かく循環して、ほっと一安心した。最後に水を飲んだのは、泥水の汚れを取った時だったか。まずかったけど。
「美味しい……っと、危ない」
喉に温かいコーヒーが流れた途端にまぶたが重くなり、コーヒーカップを落としそうになった。自分でも自覚していないくらい疲労がたまっていたんだろう。危ない危ない。
僕と向き合う形で、アーコードさんは構わずミルクも砂糖もなしでコーヒーを飲む。大人だ。
特に何かを話す訳でもなく、お互いコーヒータイムを味わった。
「コーヒーありがとうございます。とても美味しかったです」
「口に合ってよかった」
アーコードさんは空になったコーヒーカップを片づけると、もう一度僕と向き合った。
「さあ、コーヒーも飲んで一休みしたとこだし。それで―依頼の内容を聞こうかしら」
僕は思わず、ごくりと息をのんだ―アーコードさんの親しみやすい人柄から、仕事をする大人の表情になった。
表情が変わっただけなのに、散らかった物も視界の隅に置かれて、この部屋の空気までさあっと変わったような気がする。
―ついに、このときがきた。僕の願いを叶えてもらう時が。
「……」
黄金色の瞳が、満月のような怪しげな光を帯びる。その瞳に僕の何もかもを見透かされてるような感じがして、落ち着かない。
僕は、深呼吸をして、彼女にもう一度向き合った。
「僕が直してほしいのは、これです」
僕はリュックから慎重に取り出すと、アーコードさんは細い目を見開いた。
そして道をずっと歩き続けていくと、日が暮れる寸前に、目的地……森の奥の屋敷にたどり着いた。
「ついた。ここが私の家」
森の中から突然現れた木の家。しかも丸太を組み合わせて作った家らしく、ログハウスといったところだろう。
深い森の奥、ここだけ木漏れ日が差し込んでいて、その屋敷だけを明るく照らしていた。白い木材で作られているらしくて、より神々しく見える。かなり大きな屋敷だ。
差し込んだ太陽の光を浴びると、とても気持ちがいい。
「すごい……」
想像していた建物の数倍は大きい。
「こんなに大きな建物内が森の奥にあったなんて、知らなかった」
僕は地図を広げた。当たり前だが、個人宅の場所など書いていない。
「地図でいうと、この辺かな」
アーコードさんは僕が持っていた地図を指した。いわれた所とは随分離れてるじゃないか!
「さ、入って入って。君を歓迎しよう」
アーコードさんが先に屋敷の中に入ると、まず最初にぶわっと埃が舞った。真後ろで思い切り吸った僕は、咳き込んだ。
「ゲホ、ゲホッ!」
家に入った第一印象。
とにかく物が多い!
家の中というより、倉庫とか工房の類のようだ。
奥の棚にはびっしりと作業道具が置かれていて、僕を助けた時に投げたノミの類等、見たことのない道具ばかりだ。ほかにも小物や分厚い本など、僕の家にはないものばかりが置かれている。ただし、そのほとんどが埃にまみれ。
まあ、作業部屋と言えば聞こえはいいが、問題はその散らかしっぷりだ。床や壁は物であふれている。特に机の上には作業道具がとっちらかっていて、似たようなノミやナイフ、鉛筆、紙、消しゴムのカス……もうめちゃくちゃだ。
「全然掃除してないじゃないか」
「そう?気にしない気にしない」
気になるよ!ああ、今すぐにでも掃除したい!
「そこに座って。あ、コーヒーあるけどいる?」
アーコードさんはテーブルに散らかったものを腕でひと払いして、何事もなかったかのように二人分のコーヒーを持ってテーブルに置いた。この散らかしっぷりとは真逆な、白い陶器のコーヒーカップだ。
「いただきます」
僕は内心突っ込みたいのを抑えて椅子に座り、ミルクと砂糖を入れてコーヒーを一口飲む。口の中に温かいコーヒーの味が広がり、身体中が温かく循環して、ほっと一安心した。最後に水を飲んだのは、泥水の汚れを取った時だったか。まずかったけど。
「美味しい……っと、危ない」
喉に温かいコーヒーが流れた途端にまぶたが重くなり、コーヒーカップを落としそうになった。自分でも自覚していないくらい疲労がたまっていたんだろう。危ない危ない。
僕と向き合う形で、アーコードさんは構わずミルクも砂糖もなしでコーヒーを飲む。大人だ。
特に何かを話す訳でもなく、お互いコーヒータイムを味わった。
「コーヒーありがとうございます。とても美味しかったです」
「口に合ってよかった」
アーコードさんは空になったコーヒーカップを片づけると、もう一度僕と向き合った。
「さあ、コーヒーも飲んで一休みしたとこだし。それで―依頼の内容を聞こうかしら」
僕は思わず、ごくりと息をのんだ―アーコードさんの親しみやすい人柄から、仕事をする大人の表情になった。
表情が変わっただけなのに、散らかった物も視界の隅に置かれて、この部屋の空気までさあっと変わったような気がする。
―ついに、このときがきた。僕の願いを叶えてもらう時が。
「……」
黄金色の瞳が、満月のような怪しげな光を帯びる。その瞳に僕の何もかもを見透かされてるような感じがして、落ち着かない。
僕は、深呼吸をして、彼女にもう一度向き合った。
「僕が直してほしいのは、これです」
僕はリュックから慎重に取り出すと、アーコードさんは細い目を見開いた。
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