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婚約者とその幼馴染の仲を私はこれ以上邪魔する気はありません、もうお別れです。

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 家同士の繋がりで、ある殿方と婚約した私。

 しかし彼は、大人しく地味な私にいつも素っ気なかった。

 そしてそんな彼にはとても明るく可愛らしい容姿の幼馴染が居て、彼は彼女の事を溺愛して居た。



 また彼女も、自分をお姫様のように扱ってくれる彼の事が大好きで…私と彼が二人で居ると、いつもその間に割り込んで来た。

 今日もせっかくお父様達が気を遣い私と彼を二人きりにしてくれたのに…彼女は図々しくも私の家に押しかけて来て、彼を街へ連れて行ってしまい…私は一人置いてきぼりにされるのだった。



 そうして私は彼女によって婚約者である彼との仲を邪魔されるのだが…しかし周りからは、何故か私の方が二人の仲を引き裂こうとするお邪魔虫だと思われて居た。

 恐らく、私より容姿の良い彼女の方が彼に釣り合って居るからそう思われるのだろう。
 
 また、彼が必要以上に彼女を溺愛する事もその一因だ。



 だから私は、この婚約を機に幼馴染の彼女と適度な距離を取って欲しいと彼にお願いしたが…彼は分かったと言うだけで、決してそれを実行する事は無かった。



 そんなある日、私は彼女の取り巻きの令嬢達からある事を言われた。

 それは、彼と彼女は本当はお互いに想い合って居るのに私がその仲を引き裂こうと彼女に陰で嫌がらせをして居る─。

 私のような地味女が美形の彼と婚約できたのは、彼の家に賄賂を渡したからだと言う事だった。



 令嬢達は、そんな汚い手を使ってまで彼を自分のものにしたいのか…二人を引き裂きたいのかと私を責めたが、お金はともかく嫌がらせについては全く心当たりは無かった。

 しかし令嬢達は、彼女の私物が盗まれたり壊されたりしている所を見た─。

 それに二人はあなたに邪魔されるのを恐れ、深夜に密会して居ると訴えた。



 その事を、令嬢達はまるでロミオとジュリエットのようだとウットリとし語って居たが…婚約者の私にとっては、それはただの浮気だとしか思えなかった。

 そこで私は自分にかけられた疑惑を晴らす為、そして二人の浮気現場を明らかにすべく行動に出た。

 

 家に帰宅すると、私は父の従者に二人の身辺調査をお願いした。

 するとその結果…彼女の私物が盗まれたり壊されたりしたのは、彼女の自作自演である事が分かった。


 
 また彼女は、自分の方が彼の婚約者に相応しいのだが…あの女が彼との仲を邪魔して来て上手く行かない─。
 
 あの女の父親が、自身の父親に賄賂を贈る所を見たと彼が話してくれたが…あの女は、そうやって無理やり彼の婚約者の座に収まっただけだと周りに嘘を広めて居た事まで明らかとなった。

 しかも彼女が嘘の噂を流して居る事を彼は気付いて居たが、溺愛する余りそれを黙認して居たのだった。



 成程そう言う事があったから、私は婚約者でありながら世間から二人の仲を裂くお邪魔虫だと冷たい目で見られて居たのか…。

 おまけに彼女を虐める悪女にまでされかけて、とんだ災難よ。

 そもそも私の父が彼の家にお金を渡したのは、賄賂ではなく事業を支援する為だったのに─。



 彼の家が困って居る所を助けてあげたと言うのに、賄賂だと言われる何て恩を仇で返されたようなものだ。

 これには私だけでなく、父も大層気分を悪くして居た。



 また二人が私に隠れ、街で真夜中のデートを楽しんで居る事も此度の調査で明らかとなった。
 
 報告書の中には二人が口づけを交わして居たと言う事も書かれており、これは立派な浮気だった。

 そして私はこれら全ての事が書かれた報告書を婚約者の彼に付き付け…あなたのような浮気者はこちらから願い下げだと婚約破棄を突き付けた。



 そして私の父は、今後彼の家の事業に一切協力しない事を彼に明言した。

 更に父は、二人に浮気の慰謝料を払うよう命じたが…彼女には、嘘の噂を流し私の名誉を傷つけたとしてその分も上乗せする事に─。



 するとそれを知った二人の両親は、自身の息子や娘のした事に激怒─。

 家の財産を損なわせ世間に悪評を立てられる原因を作った二人に、家からの追放を命じるのだった。



 その結果、彼は次期当主となるはずが田舎の親族の家に養子として送られる羽目に─。

 と言ってもそれは表向きで、彼は農場の働き手として奴隷の如くこき使われて居るらしい。



 また嘘を付いた彼女はその罪を償う為、修道院へと送られる事に─。
 
 すると彼女は、ただ彼と一緒になりたい一心でした事だと号泣したが…最早その涙に同情する者は誰も居なかった。



 一方、世間からずっと悪く見られて居た私だったが…今では二人の被害者だと同情や憐みの目で見られる事に─。

 するとそんな私に、ある殿方が是非自分が幸せにしたいと言って新たな婚約者に名乗り出てくれた。



 そんな彼とは、実は以前あるパーティーで出会って居て…婚約者が幼馴染ばかり気に掛け一人寂しくして居る私に気付いた彼は、気を遣って話し相手になってくれたのだ。

 内気でお喋りが得意では無い私を楽しませようとしてくれる彼の事は、ずっと記憶の中に残って居た。

 その為私は、そんな彼ならばとその気持ちに喜んで応える事に─。


 
 そうして交際を始めた私達はとても相性が良く、やがて周りからとてもお似合いだ…あの二人の仲は誰にも裂けないとまで言われるように─。

 

 今迄仲の良い二人の男女の仲を裂くお邪魔虫と思われて居た私が、そんな事を言われる立場になるとは…少し気恥ずかしいが、そのような殿方と結ばれる事が出来て本当に良かったわ─。
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