110 / 119
私の婚約者と自身の夫を亡くした親友は、ただならぬ関係にあったのでした。
しおりを挟む
私の親友が、未亡人になった事を理由にこの地に帰って来た。
「私、寂しくて仕方なくて…今日も話し相手になってくれる?」
親友は、今日もまたそう言って涙を浮かべ私と婚約者の住む家を訪ねて来た。
私は、そんな彼女をまたかと冷めた目で迎えたが…私の婚約者は、彼女が来るのを心待ちにして居たようで喜んで出迎えた。
「そんな水臭い事言うなよ…君はこいつの親友なんだし、遠慮しなくていいんだ。俺も、君と話が出来るのが楽しいし…君の気持ちが落ち着くまで、いくらでもここに来てくれて構わないから。」
「ありがとう…あなたって本当に優しい人ね。私の夫は、そんな気遣いが出来るような人じゃなかったから…。私を置いて先に死んじゃうような男では無く、あなたのような人と結婚して居れば良かった。」
美しい親友のこの一言に…私の婚約者は、頬を真っ赤に染め鼻の下を伸ばした。
何よ、その締まりのない顔…。
私は、そんな彼を呆れた目で見た。
思えば彼女は、昔から男を喜ばすような事を簡単に言ってのける女だった。
そしてそれに引っ掛かり、そんな彼女の虜になる男達を私は何人も見て来た。
だから、私の婚約が決まった時…彼女が既に結婚し別の地に越して居た事に、心から安堵したものだ。
旦那さんの死は気の毒だけれど…こんなふうに誘惑じみた事を言いに毎日来られたんじゃ、正直いい迷惑だわ─。
そんなある日、またいつものように彼女が家にやって来たのだが…偶々彼女の好むお茶菓子が切れて居た事で、婚約者に街に買いに行くよう私は命じられた。
仕方なく街に出た私だが…指定された彼女が気に入って居る店は遠く、面倒になった私は近くの店で似たお菓子を買う事に─。
こちらがそこまで彼女に気を使う必要がどこにあると感じたからだ。
そして、予定よりだいぶ早く家に戻る事になった私だが…リビングから婚約者と彼女の淫らな声が聞こえて来て、思わずその場で固まってしまった。
「…あなたがこのまま、私のものになってくれたらいいのに。」
「俺だってそうしたいよ。あんな地味な女、君と違い抱く価値も無いからな。家同士の約束で仕方なく婚約しただけで、俺はあいつなど本当は愛して居ないんだ。」
婚約者のその言葉に、私は家を飛び出した。
二人の関係もショックだが…まさか、彼にそんなふうに思われて居たとは─。
私は悲しいと思うと同時に、私を裏切った彼や親友がとても許せないと思った。
するとそんな私の元に、身体中傷跡だらけの男性が話しかけて来た。
そして、私の元に親友が行って居ないかと言う。
「あなたは、一体…?」
「私は、あの女の夫です。死んだ事になって居ますが…本当は違うんです。」
親友の夫だと名乗る男性は、そう話すとある事を語り始めた。
彼は、商売であちこちを回って居たが…ある日家を出る際、妻である彼女に手作りのジュースを渡されたと言う。
疲れが取れると言われ、道中喜んでそれを口にした彼は…何故か急に眠くなり、山道から滑落…かろうじて一命は取り留めたものの、長い間ふもとの村で厄介になる事に─。
そしてやっとの思いで回復し、家に辿り着けば…自分は既に死んだ事になっており、家も土地も人手に渡り、妻である彼女も消えて居たと言う。
「その後、妻の行方を調べる内に色々分かったんですが…彼女は俺の知らぬところで男遊びを繰り返し、借金を重ねて居ました。その返済を迫られ…俺を殺し、主が消えた家と土地を売り払い金を手にする事でそれを返済しようとしたのです。」
それを聞いた私は、彼女の凶悪さに心底恐ろしくなると同時に…これを機に彼女と縁を切る事を決めた。
そして、そんな彼女を愛し関係を持った彼とも別れる事を決意したのだった。
その後、私はすぐに彼女の夫を連れ家に引き返し…未だ行為にふけって居た二人の元へ突入した。
すると、自分の夫がとっくに死んだと思って居た親友はその場で腰を抜かし…婚約者は私に土下座して来た。
しかし私は、そんな彼を決して許さなかった。
「あなたがそうやって私を繋ぎ止めようとするのは、私の家の支援金が目当てでしょう?あなたの私に対する気持ちは、もう分かって居るんですから!あなたとはもう婚約破棄します。当然今後は支援金は出ません…むしろ、あなたに慰謝料を請求させて貰います!」
私の言葉に、彼はその場にガクリとその場に崩れ落ちた。
そして、親友はと言うと…君のやった事は殺人未遂に当たると夫に責められ、憲兵に突き出される事に─。
彼女には、これから長い牢屋での暮らしが待って居るだろう。
すると彼女は、親友のよしみで助けろと私に訴えて来たが…私はもうあなたの親友ではない、今後二度と関わらないと言えば、大粒の涙を流し号泣するのだった。
その後、彼女は一生牢に入る事が決まり…元婚約者は、今回の事で父親から縁を切られ実家を追放となった。
私の家からの支援金が無くなった事で、彼の家は随分苦しむ事になったから…そんな扱いを受けても仕方ないわね。
一方、私はと言うと…元親友の夫を気の毒に思い、せめて傷痕を少しは目立たなくしてくれる名医を紹介してあげた。
するとその事に大層感謝した彼が、私の事をその医者に語ったらしく…そのような優しい女性に是非会いたいと言う医者の希望で、私達は一度会う事に─。
医者と言うだけあり、彼はとても賢く真面目な人で…私はすっかり彼の虜になった。
また、彼も私を一目で気に入ってくれ…私達は交際を始める事に─。
そして交際から一年で、私は彼と結婚する事となった。
まさか、自分が医者の妻になれる日が来るとは…。
親友と婚約者に裏切られるという不幸に遭い、この先良い事など無いだろうとまで思って居たと言うのに…こんな素敵な方と結ばれる事が出来て、私はとても幸せだわ─。
「私、寂しくて仕方なくて…今日も話し相手になってくれる?」
親友は、今日もまたそう言って涙を浮かべ私と婚約者の住む家を訪ねて来た。
私は、そんな彼女をまたかと冷めた目で迎えたが…私の婚約者は、彼女が来るのを心待ちにして居たようで喜んで出迎えた。
「そんな水臭い事言うなよ…君はこいつの親友なんだし、遠慮しなくていいんだ。俺も、君と話が出来るのが楽しいし…君の気持ちが落ち着くまで、いくらでもここに来てくれて構わないから。」
「ありがとう…あなたって本当に優しい人ね。私の夫は、そんな気遣いが出来るような人じゃなかったから…。私を置いて先に死んじゃうような男では無く、あなたのような人と結婚して居れば良かった。」
美しい親友のこの一言に…私の婚約者は、頬を真っ赤に染め鼻の下を伸ばした。
何よ、その締まりのない顔…。
私は、そんな彼を呆れた目で見た。
思えば彼女は、昔から男を喜ばすような事を簡単に言ってのける女だった。
そしてそれに引っ掛かり、そんな彼女の虜になる男達を私は何人も見て来た。
だから、私の婚約が決まった時…彼女が既に結婚し別の地に越して居た事に、心から安堵したものだ。
旦那さんの死は気の毒だけれど…こんなふうに誘惑じみた事を言いに毎日来られたんじゃ、正直いい迷惑だわ─。
そんなある日、またいつものように彼女が家にやって来たのだが…偶々彼女の好むお茶菓子が切れて居た事で、婚約者に街に買いに行くよう私は命じられた。
仕方なく街に出た私だが…指定された彼女が気に入って居る店は遠く、面倒になった私は近くの店で似たお菓子を買う事に─。
こちらがそこまで彼女に気を使う必要がどこにあると感じたからだ。
そして、予定よりだいぶ早く家に戻る事になった私だが…リビングから婚約者と彼女の淫らな声が聞こえて来て、思わずその場で固まってしまった。
「…あなたがこのまま、私のものになってくれたらいいのに。」
「俺だってそうしたいよ。あんな地味な女、君と違い抱く価値も無いからな。家同士の約束で仕方なく婚約しただけで、俺はあいつなど本当は愛して居ないんだ。」
婚約者のその言葉に、私は家を飛び出した。
二人の関係もショックだが…まさか、彼にそんなふうに思われて居たとは─。
私は悲しいと思うと同時に、私を裏切った彼や親友がとても許せないと思った。
するとそんな私の元に、身体中傷跡だらけの男性が話しかけて来た。
そして、私の元に親友が行って居ないかと言う。
「あなたは、一体…?」
「私は、あの女の夫です。死んだ事になって居ますが…本当は違うんです。」
親友の夫だと名乗る男性は、そう話すとある事を語り始めた。
彼は、商売であちこちを回って居たが…ある日家を出る際、妻である彼女に手作りのジュースを渡されたと言う。
疲れが取れると言われ、道中喜んでそれを口にした彼は…何故か急に眠くなり、山道から滑落…かろうじて一命は取り留めたものの、長い間ふもとの村で厄介になる事に─。
そしてやっとの思いで回復し、家に辿り着けば…自分は既に死んだ事になっており、家も土地も人手に渡り、妻である彼女も消えて居たと言う。
「その後、妻の行方を調べる内に色々分かったんですが…彼女は俺の知らぬところで男遊びを繰り返し、借金を重ねて居ました。その返済を迫られ…俺を殺し、主が消えた家と土地を売り払い金を手にする事でそれを返済しようとしたのです。」
それを聞いた私は、彼女の凶悪さに心底恐ろしくなると同時に…これを機に彼女と縁を切る事を決めた。
そして、そんな彼女を愛し関係を持った彼とも別れる事を決意したのだった。
その後、私はすぐに彼女の夫を連れ家に引き返し…未だ行為にふけって居た二人の元へ突入した。
すると、自分の夫がとっくに死んだと思って居た親友はその場で腰を抜かし…婚約者は私に土下座して来た。
しかし私は、そんな彼を決して許さなかった。
「あなたがそうやって私を繋ぎ止めようとするのは、私の家の支援金が目当てでしょう?あなたの私に対する気持ちは、もう分かって居るんですから!あなたとはもう婚約破棄します。当然今後は支援金は出ません…むしろ、あなたに慰謝料を請求させて貰います!」
私の言葉に、彼はその場にガクリとその場に崩れ落ちた。
そして、親友はと言うと…君のやった事は殺人未遂に当たると夫に責められ、憲兵に突き出される事に─。
彼女には、これから長い牢屋での暮らしが待って居るだろう。
すると彼女は、親友のよしみで助けろと私に訴えて来たが…私はもうあなたの親友ではない、今後二度と関わらないと言えば、大粒の涙を流し号泣するのだった。
その後、彼女は一生牢に入る事が決まり…元婚約者は、今回の事で父親から縁を切られ実家を追放となった。
私の家からの支援金が無くなった事で、彼の家は随分苦しむ事になったから…そんな扱いを受けても仕方ないわね。
一方、私はと言うと…元親友の夫を気の毒に思い、せめて傷痕を少しは目立たなくしてくれる名医を紹介してあげた。
するとその事に大層感謝した彼が、私の事をその医者に語ったらしく…そのような優しい女性に是非会いたいと言う医者の希望で、私達は一度会う事に─。
医者と言うだけあり、彼はとても賢く真面目な人で…私はすっかり彼の虜になった。
また、彼も私を一目で気に入ってくれ…私達は交際を始める事に─。
そして交際から一年で、私は彼と結婚する事となった。
まさか、自分が医者の妻になれる日が来るとは…。
親友と婚約者に裏切られるという不幸に遭い、この先良い事など無いだろうとまで思って居たと言うのに…こんな素敵な方と結ばれる事が出来て、私はとても幸せだわ─。
26
お気に入りに追加
356
あなたにおすすめの小説
みんながまるくおさまった
しゃーりん
恋愛
カレンは侯爵家の次女でもうすぐ婚約が結ばれるはずだった。
婚約者となるネイドを姉ナタリーに会わせなければ。
姉は侯爵家の跡継ぎで婚約者のアーサーもいる。
それなのに、姉はネイドに一目惚れをしてしまった。そしてネイドも。
もう好きにして。投げやりな気持ちで父が正しい判断をしてくれるのを期待した。
カレン、ナタリー、アーサー、ネイドがみんな満足する結果となったお話です。
高慢な王族なんてごめんです! 自分の道は自分で切り開きますからお気遣いなく。
柊
恋愛
よくある断罪に「婚約でしたら、一週間程前にそちらの有責で破棄されている筈ですが……」と返した公爵令嬢ヴィクトワール・シャネル。
婚約者「だった」シレンス国の第一王子であるアルベール・コルニアックは困惑するが……。
※小説家になろう、カクヨム、pixivにも同じものを投稿しております。
不愛想な伯爵令嬢は婚約破棄を申し出る
hana
恋愛
不愛想な伯爵令嬢ロゼに縁談が持ち込まれる。
相手は同じ爵位のナイトという青年で、ロゼは彼の婚約者になることを決意する。
しかし彼の幼馴染であるカラフルという女性が現われて……
婚約者の私より彼女のことが好きなのですね? なら、別れて差し上げますよ
四季
恋愛
それなりに資産のある家に生まれた一人娘リーネリア・フリューゲルには婚約者がいる。
その婚約者というのが、母親の友人の息子であるダイス・カイン。
容姿端麗な彼だが、認識が少々甘いところがあって、問題が多く……。
私知らないから!
mery
恋愛
いきなり子爵令嬢に殿下と婚約を解消するように詰め寄られる。
いやいや、私の権限では決められませんし、直接殿下に言って下さい。
あ、殿下のドス黒いオーラが見える…。
私、しーらないっ!!!
婚約は破棄なんですよね?
もるだ
恋愛
義理の妹ティナはナターシャの婚約者にいじめられていたと嘘をつき、信じた婚約者に婚約破棄を言い渡される。昔からナターシャをいじめて物を奪っていたのはティナなのに、得意の演技でナターシャを悪者に仕立て上げてきた。我慢の限界を迎えたナターシャは、ティナにされたように濡れ衣を着せかえす!
金目当ての婚約なんて、二度とごめんだわ!
あお
恋愛
食堂でお昼ご飯を食べていたら、レイリアは婚約者に婚約破棄を突きつけられた。
ラウール様。貴方のお父様が頭を下げて申し込んだ婚約なのに、婚約破棄なんて口にしていいんですか?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる