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婚約者に他に好きな女が出来たと捨てられると同時に、妹の妊娠が発覚しました。

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 家同士の関係で、長い間婚約関係にある彼。

 しかしその彼から、私は突然別れを告げられた。

 彼に彼に他に好きな女が出来た事が、その理由だった。



 私は余りに急な話に、どうか考え直して欲しいと彼を説得するも…彼はもう私とこれ以上話をするのも面倒だった様で、一方的に話を切り上げ部屋を出て行った。



 そしてそんな彼と入れ違いに、私の妹が上機嫌で部屋に入って来た。

 その理由を尋ねれば、好きな人の子を身籠ったからだと言う。



 最近の妹は体が怠いと言って寝てばかり居たり、偏食気味だったりと様子がおかしかった。

 まさかそれが、妊娠のせいだったとは─。



 妹は少し前に婚約が決まったが、好きな人と言うのは…お腹の子の父親はその方だろう。

 私はそう思い、彼女に祝福を述べたが…妹はそんな私を見て馬鹿にした様に笑うと、驚くべき事を私に話した。



 このお腹の子の父親は、私の婚約者ではない…お姉様の婚約者だ。
 
 彼とは以前から浮気関係にあったが、何時しか彼の事を本気で愛してしまった。

 そんな彼と確実に結ばれるには、彼との間に子を作る事が一番だと思って居だが…それが叶って本当に嬉しい─。



 それを聞いた私は、彼の好きな女と言うのが妹だった事を漸く理解した。
 
 私はこの二人に、ずっと裏切られて居たと言う訳か─。



 そして妹は、自身の婚約者とは先程婚約破棄して来た。

 気弱な男だったので、強引に婚約破棄を迫たら簡単に折れてくれたとスッキリした笑顔を浮かべた。



 姉の私だけでなく、他の殿方にも辛い思いをさせて…それで自分達だけ幸せになろうだ何て、本当に身勝手だわ!

 私は怒りに震えたが…妹は子を身籠った事で強気になって居る様で、そんな私を嘲笑うだけだった。



 だがそれから数日後…妹の体調が急に悪化し、彼女は寝込んでしまった。

 そして名医に診て貰った結果…妹は本当は妊娠しておらず、大きな病に罹って居た事が発覚した。

 体が怠かったのも偏食になったのも、その病の症状がいくつか出て居ただけだったのだ。
 


 そしてその病は、体を繋げた事で移る伝染性のものだそうで…妹にそんな病を移したのは私の元婚約者だった。
 
 だがそんな彼もまた、私に別れを告げた直後妹と同じ様に急に体調が悪化し寝込んで居たのだった。

 

 そして最悪な事に、その病の治し方までは解明されておらず…二人はもはや死を待つのみとなった。

 すると妹は、私の婚約者と関係を持った事を心から後悔したが…もう全てが遅いのだった。



 それから少しして、二人は死と言う大きな代償を払いこの世を去る事に─。

 だが婚約者が居るのに過ちを起こした二人は、一族からその存在を消されてしまい…その墓もどこにあるのかさえ、私は未だ知らないままだ。




 そしてそんな私だが、ある新しい出会いがあった。
 
 その相手となったのは、妹を診察した名医で…医者としても一人の殿方としても魅力ある彼に、私はすぐに心奪われた。

 そして二人の件が落ち着いた頃、私は彼に気持ちを伝えると…彼も私に惹かれて居たと言ってくれ、私達は結ばれる事に─。



 その後は、彼の婚約者として彼を公私共に支えて居た私だが…この度、私はめでたく彼の子を身籠る事になった。

 勿論、それは妹の様な勘違いでは無く…名医である彼の診察を受け、明らかとなった事だ。



 あの時妊娠に浮かれる妹を、まだ何も知らなかった私は少し羨ましい思いで見て居たが…成程、好きな人の子を身籠る事はこんなにも嬉しいものなのね…。

 でもあの子は、結局それが叶えられなかったけれど…私はこうして、見事叶える事が出来たのね。

 そして私は大きな喜びや感動と共に、彼と彼の子供と共に幸せな人生を歩んで行くと心に誓った─。
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