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私が婚約者に選ばれたのは妹の代わりだった挙句、彼女が見つかると捨てられてしまいました。

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 ある殿方から、婚約を申し込まれた私。

 それはこの地でとても人気のある殿方だったが、これまで私達に面識は無かった。



 その為、どうして彼が私を求めたのかは分からなかったが…そのような方から好かれた事が嬉しく、私はそれを受け入れた。



 以降、彼は私をとても大事にしてくれた。
 
 特に彼は、私の金の髪を美しいと大層褒めてくれた。

 それに対し私は気恥ずかしくもあったが、素直にありがとうとお礼を伝えて居た。



 だが、最近になり気付いた事が─。

 彼はいつも私の髪しか見て居ない…褒めてくれるのはいつも髪の事ばかりで、それ以外の事にはまるで関心が無い。



 彼はこの髪を見る為に私の後ろ姿ばかり見て居て、顔の方は全くと言っていい程見てくれない。

 それって、婚約して居る仲としてはおかしく無いかしら…彼はそう思わないの─?



 そう疑問に思う中、私は彼とその友人がある話をする所に偶然出くわした。


 
 彼の友人は、いつまで私を婚約者にあてがうのかと彼に問うた。

 すると彼は…私の妹が漸く見つかったので、そろそろ私とは別れるつもりだと答えた。

 そして、私を婚約者に迎えたのは愛する妹と髪の色や質がそっくりだったから…それ以外に理由は無いと断言した。



 実は私の妹は少し前から家出中で、このまま帰って来ないのではないかと言われて居た。

 彼女は私と違い、髪だけでなく顔まで美しく…そのせいで多くの殿方から人気だった。

 

 彼女もそれを良く分かっており、そのせいで男遊びが激しく…その為、今回もどこかの男の家に入り浸って居ると考えられて居たのだ。



 でも、その妹が見つかった…その為彼は代わりだった私がもう要らなくなり、捨てようとして居ると言う事か─。

 こうして全てを知った私は、漸く彼が私を選んだ本当の理由を知る事となった。



 その数日後、妹は何食わぬ顔で家に戻って来て…と同時に、私は聞いて居た通り彼に一方的に婚約破棄されてしまった。


 
 そして彼は、今がチャンスとばかりに妹に婚約を申し込もうとしたのだが…何と妹は予め用意されて居た馬車に乗せられ、山奥の修道院へと送られてしまった。



 これには彼だけでなく私も驚いたが…私の父が言うには、この事は妹が戻って来る前から決めていたとの事だった。



 どうやら妹は、男と遊ぶ金欲しさに悪事に手を染めて居たようで…このままではもっと大きな罪を犯すかもしれないと考えた父は、これ以上家の恥になる前にと妹を修道院へ押し込めてしまう事にしたのだった。



 するとそれを知った元婚約者の彼は絶望し…この先もう彼女と会えないなら、私をもう一度婚約者にしたいと願った。



 だが私は、自身の髪しか好かれて居ない事をもう分かって居た為それを拒否─。

 そしてこれまでの経緯を知った父は、私と婚約した際に結んだある条件は無かった事にすると彼に伝えた。



 実は、彼は父親から事業を受け継いだのだがそれが上手く行っておらず…私の父に支援の協力をお願いして居たらしい。
 


 だがそういう不誠実な理由で私と婚約した事が明らかとなり、また今回私と婚約破棄した事からその約束は無効になってしまった。

 彼は妹と結ばれても、婚約者が姉から妹に変わっただけだからその約束は守られると楽観視して居たらしいが…妹がそんな所に入ってしまい私に拒絶されたのでは、それは叶えられなくても仕方ないわよね─。



 その後、彼は事業を立て直す事が出来ず…そのまま多額の負債を抱え破産してしまった。

 そして彼の一家は離散する事となり、そこからの行方は分かって居ない─。



 一方、私はと言うと…悪評がある妹が居なくなったおかげか身の回りも落ち着き、父の遠い知り合いのある名家のご子息を婚約者に迎える事に─。



 勿論彼は私の髪だけが気に入ったのではなく、私の真面目で優しい所…つまり中身を好きになってくれ、私もそんな彼を大事にし仲良く暮らして居る─。
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