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美しい使用人を愛し、妻である私を大事にしなくなった事が夫の不幸の始まりでした。
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私の家に、使用人として一人の若い女がやって来たが…彼女は、とても美しい容姿をして居た。
そんな彼女は元は名家のお嬢様だったそうだが…事業の悪化で家が破産し、一家離散する事になったと言う。
そし仕事を探し街をさ迷って居る所を夫に声をかけられ、使用人として家に連れて来られたのだ。
それを聞いた私も、夫同様そんな彼女を憐れみ…互いの意見が一致した所で、彼女は正式にこの家で働き始めた。
だが、私は後にそれを後悔した。
と言うのも…夫が彼女をメイドとしてではなく、一人の女として愛する様になってしまったからだ。
彼女はやがて夫の身の回りの世話だけでなく、遂には夜の相手も務めるまでになり…妻の私は、夫にまるで相手にされなくなってしまったのだ。
私は、そんな彼女を咎め…真面目に働く気がないなら、この家から出て行って欲しいと訴えた。
しかし彼女は、私にお金を出してくれて居るのは旦那様で自分は命じられた事をして居るだけ…だからあなたの言う事など聞く気はないと口答えし、全く言う事を聞かないのだった。
するとその夜…私は逆に、夫から叱られる事に─。
「彼女からお前が虐めて来たと聞いたぞ!お前が彼女にあれこれ要求するな!彼女に命令できるのはこの俺だけだ!」
「そ、そんな…。そもそも、あなたが浮気をしたからいけないのですよ?早く彼女を追い出して!」
「誰が彼女を追い出すか!そんなに嫌なら、いっそお前が出て行けばいいだろう!」
私は夫の言葉に腹が立ち、そのまま家を飛び出した。
そしてあてもなく街を彷徨う事となったが…そんな中、ある張り紙を見つけた。
あら、この女って…?
私はそれをもう一度しっかり見ると、再び家へと舞い戻るのだった。
家に戻った時、夫は出かけて居るようで彼女一人だったが…相変わらず仕事もせずゴロゴロとソファーに寝転ぶ彼女に、私は自ら紅茶を入れ渡した。
「あら、気が利くじゃない?旦那様に嫌われて家出したと思ったのに…どうせ行く所がなくて、惨めにも舞い戻って来たんでしょう?」
そう言って、彼女は私が淹れた紅茶を遠慮なくガバガバと飲み干した。
「…行く所が無かったのは、あなたの方だったのに。拾ってあげた恩も忘れ、私を裏切るなんて─。」
「は?何か言った?…あれ、なんだか眠くなってきたわ─。」
そう呟いた彼女は、すぐにそのまま深い眠りにつくのだった。
「おい…彼女の姿が見えないが、一体どこへ行ったんだ!まさか、お前が何かしたのか…?」
家に戻った夫は愛する彼女が自分を出迎えない事を不思議に思い、家の中をくまなく探し回った。
「彼女なら、もう二度とここに帰って来ませんよ?それから私はもうあなたと離縁し、今度こそここを出て行きます。」
「出て行っても一人で生きて行ける金はないだろう?何を偉そうに。」
「いえ、私一人なら十分暮らせるだけのお金を昨日手に入れましたから。」
「はぁ?」
私は昨日、睡眠薬の入った紅茶をたらふく飲んで眠りこけた彼女を憲兵に突き出した。
と言うのも、彼女は犯罪を犯したお尋ね者で…見つけて憲兵に突き出せば、あるお貴族様から莫大な報奨金がもらえる事になって居たのだ。
「あの女が語った経歴はすべて真っ赤なウソ。ついでにあなたは、悪人の彼女を匿った愚か者と昨日からこの辺りで噂になって居ます。」
「そ、それで用事から帰って来た時周りの視線が冷たかったのか…。」
「早速報奨金も貰えたし、世間から評判の悪くなった夫などもう要らないの。今上手く行っている事業も、信頼が亡くなったらどうせ傾くでしょうし…今の内に別れるわ。」
私の言葉に、夫は信じられないと言った顔で見つめて来たが…私はそれを無視し、今度こそ家から出て行くのだった。
その後…やはり私の考え通り元夫は事業が立ち行かなくなり、多額の借金を抱え破産してしまった。
すると元夫は相当ショックを受けた様で…そのせいか、重い病に罹り倒れてしまった。
そうなって彼は、漸く元妻の私の有難味に気付いたようで…私に対し、自分の元に帰って来て欲しいと願うようになった。
だが、私はそれを拒否。
と言うのも…私は報奨金を下さった貴族の家の一人息子に大層気に入られ、彼と再婚する事になって居るからだ。
その彼は、結婚したら君はきっと「良妻」になると今から私の事を認めてくれて居て…そんな彼は優しくて頼りがいのある素敵な夫となるだろうと、私は結婚生活が今から楽しみでならないのだった─。
そんな彼女は元は名家のお嬢様だったそうだが…事業の悪化で家が破産し、一家離散する事になったと言う。
そし仕事を探し街をさ迷って居る所を夫に声をかけられ、使用人として家に連れて来られたのだ。
それを聞いた私も、夫同様そんな彼女を憐れみ…互いの意見が一致した所で、彼女は正式にこの家で働き始めた。
だが、私は後にそれを後悔した。
と言うのも…夫が彼女をメイドとしてではなく、一人の女として愛する様になってしまったからだ。
彼女はやがて夫の身の回りの世話だけでなく、遂には夜の相手も務めるまでになり…妻の私は、夫にまるで相手にされなくなってしまったのだ。
私は、そんな彼女を咎め…真面目に働く気がないなら、この家から出て行って欲しいと訴えた。
しかし彼女は、私にお金を出してくれて居るのは旦那様で自分は命じられた事をして居るだけ…だからあなたの言う事など聞く気はないと口答えし、全く言う事を聞かないのだった。
するとその夜…私は逆に、夫から叱られる事に─。
「彼女からお前が虐めて来たと聞いたぞ!お前が彼女にあれこれ要求するな!彼女に命令できるのはこの俺だけだ!」
「そ、そんな…。そもそも、あなたが浮気をしたからいけないのですよ?早く彼女を追い出して!」
「誰が彼女を追い出すか!そんなに嫌なら、いっそお前が出て行けばいいだろう!」
私は夫の言葉に腹が立ち、そのまま家を飛び出した。
そしてあてもなく街を彷徨う事となったが…そんな中、ある張り紙を見つけた。
あら、この女って…?
私はそれをもう一度しっかり見ると、再び家へと舞い戻るのだった。
家に戻った時、夫は出かけて居るようで彼女一人だったが…相変わらず仕事もせずゴロゴロとソファーに寝転ぶ彼女に、私は自ら紅茶を入れ渡した。
「あら、気が利くじゃない?旦那様に嫌われて家出したと思ったのに…どうせ行く所がなくて、惨めにも舞い戻って来たんでしょう?」
そう言って、彼女は私が淹れた紅茶を遠慮なくガバガバと飲み干した。
「…行く所が無かったのは、あなたの方だったのに。拾ってあげた恩も忘れ、私を裏切るなんて─。」
「は?何か言った?…あれ、なんだか眠くなってきたわ─。」
そう呟いた彼女は、すぐにそのまま深い眠りにつくのだった。
「おい…彼女の姿が見えないが、一体どこへ行ったんだ!まさか、お前が何かしたのか…?」
家に戻った夫は愛する彼女が自分を出迎えない事を不思議に思い、家の中をくまなく探し回った。
「彼女なら、もう二度とここに帰って来ませんよ?それから私はもうあなたと離縁し、今度こそここを出て行きます。」
「出て行っても一人で生きて行ける金はないだろう?何を偉そうに。」
「いえ、私一人なら十分暮らせるだけのお金を昨日手に入れましたから。」
「はぁ?」
私は昨日、睡眠薬の入った紅茶をたらふく飲んで眠りこけた彼女を憲兵に突き出した。
と言うのも、彼女は犯罪を犯したお尋ね者で…見つけて憲兵に突き出せば、あるお貴族様から莫大な報奨金がもらえる事になって居たのだ。
「あの女が語った経歴はすべて真っ赤なウソ。ついでにあなたは、悪人の彼女を匿った愚か者と昨日からこの辺りで噂になって居ます。」
「そ、それで用事から帰って来た時周りの視線が冷たかったのか…。」
「早速報奨金も貰えたし、世間から評判の悪くなった夫などもう要らないの。今上手く行っている事業も、信頼が亡くなったらどうせ傾くでしょうし…今の内に別れるわ。」
私の言葉に、夫は信じられないと言った顔で見つめて来たが…私はそれを無視し、今度こそ家から出て行くのだった。
その後…やはり私の考え通り元夫は事業が立ち行かなくなり、多額の借金を抱え破産してしまった。
すると元夫は相当ショックを受けた様で…そのせいか、重い病に罹り倒れてしまった。
そうなって彼は、漸く元妻の私の有難味に気付いたようで…私に対し、自分の元に帰って来て欲しいと願うようになった。
だが、私はそれを拒否。
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その彼は、結婚したら君はきっと「良妻」になると今から私の事を認めてくれて居て…そんな彼は優しくて頼りがいのある素敵な夫となるだろうと、私は結婚生活が今から楽しみでならないのだった─。
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