『恋愛短編集①』離縁を乗り越え、私は幸せになります──。

Nao*

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私の義妹に心奪われ家出した夫ですが、そのせいで完全に居場所を失う事となりました。

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 夫が、私の義妹を愛してしまった。

 だが義妹は、ある理由で私の実家を出る事に。

 その為、彼女はもうここに…私の嫁ぎ先に遊びに来る事は無いと私は夫に伝えた。


 
 すると夫は、彼女に会えなくなるのは嫌だと言い…彼女がここに来ないなら、こっちから会いに行くと言って家を飛び出した。

 それから夫は、もう一ヶ月程戻って来ずに居る。

 

 この間夫の父親が急死し、その葬儀もあったと言うのに…義妹を優先し戻って来ないとは、どうかして居るわ。

 私は、夫にすっかり愛想をつかして居た。



 そんな私だが、夫がここを出て行く時に行くなと一度は引き留めた。

 しかし夫は、妻の妹の元を訪ねる事の何が悪いのか…父親の再婚相手の連れ子で血の繋がりが無いから、お前はそういう意地の悪い事を言うのだと私を責めるだけだった。



 そしてそんな私達を、まだ健在だった彼のお父様は険しい顔で見て居たっけ─。



 それから数日後…突然、夫が家に戻って来た。
 
 そして家にあった金庫の金を鞄に押し込め、また義妹の元へ戻る…そのお金で、義妹と二人自由気ままに暮らすのだと主張した。



「それは、あなたのお父様がこの家の事業の為に遺したお金…そんな物を私の断りもなく持って行くなど許しません!」

 そう言って引き留める私を、夫はギロリと睨んだ、



「嫁の分際で生意気な…この家の息子である俺が、この金をどう使おうが勝手だ!」

「あなたはもう死んだ事になって居て、存在しない人間だからそれは無理です。」

「は?」

 私の言葉に、夫の手から鞄がドサリと床に落ちた。



「義妹の元に入り浸りちっとも帰って来なくなったあなたを、あなたのお父様はこの家の恥だと仰い…急な病で死んだ事にしてしまったのです。」

「何!?」

「お父様が私に教えて下さいました。実はあなたは捨て子で赤の他人だ。でも今までそれを隠し、実の息子として大事に育てて来たが…妻の妹を愛し家を飛び出していくなど馬鹿な事をして…この家の恥になるような人間、もう息子とは言えない。死んだ事にして、存在そのものを抹消したって。」

「そ、そんな…。」

 私の言葉に、夫は真っ青な顔で身を震わせた。



「そしてそんなあなたに、この家や事業を任せておけない…後は嫁の私に託すと言って下さいました。あなたも、それで納得したでしょう?だから、お父様の葬儀にも帰って来なかったのでしょう?私はこれを見て、そう受け取りましたが?」

 そう言って、私はその旨を綴った手紙を夫に突き出した。



 最後の情けとして私は義妹の元に居る夫へ、お父様が急に体調を崩した…今すぐ帰って来なければ、お父様はあなたに大きな決断を下すと手紙に書いて送ったが…夫は封を開ける事もなく、返送したのだった。
 


「は、反省するから俺をここに戻してくれ。お前の義妹の事は忘れるからさ…。」

「今更帰って来られても…。実は、長らく旅先に滞在して居たあなたの弟君がこちらに戻って来る事になりました。おかげで私は、そんな彼を新しく夫に迎える事が出来ます。」

「お、夫…!?」

「まだ若いのに未亡人となる私に、あなたのお父様が死に際に彼を新しく夫に迎えろと言ってくれたんです。あなたには話して居ませんでしたが…私は昔、弟君に告白された事がありましてね。でもその時は、学業に勤しんで居た為お断りするしかなかったのですが…あなたとの事があり、あの時彼を選んでいればと思うようになって居ました。それに気づいたお父様が、弟君と連絡を取り合い帰って来るよう言って下さったの。」



 そう私が説明し終わると同時に、弟君が部屋に入って来て…夫を見るなり、その胸ぐらを掴んだ。

「良妻である彼女を粗末にするなど…あなたは本当に愚か者だ!元々この家の人間じゃないそうだし、早く出て行け!」



 そうして夫は、弟君によって玄関から放り出され…また弟君の従者が常に屋敷を監視するようになった為、二度とこの家に足を踏み入れる事は出来なくなったのだった。



 そして夫はそのまま浮浪者になり、運悪く流行り病にかかり野垂れ死んでしまったそうで…彼との縁は、これで完全に切れる事となった。



 一方、私の義妹はと言うと…元々彼女が家を出されたのは素行が悪く、反省の為に躾の厳しい親戚の家に送られた為だったが…彼女は親戚の監視の目をかいくぐり、私の夫と良い仲になってしまった。



 でも今回の件で、義妹はもっと監視の厳しい場所として修道院へと送られる事が決まり…彼女とも、もう生涯顔を合わせる事はないだろう。

 

 そして私だが、弟君はやはり魅力ある殿方で…そんな彼と一緒になった私は、彼と共に亡きお父様から任された事業に日々励んで居る。



 若くして、実際は相手が生きて居るのに未亡人になるなどおかしな事態に陥ったけれど…でも今はこんな素敵な人を新たな夫にする事が出来て、私は本当に幸せよ─。
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