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子を授かった私に対し、一方的に不貞を疑った夫が離縁を告げて来ました。
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長らく子に恵まれなかった私が、この度夫の子を妊娠した。
そして、以前よりふっくらとしたお腹となった私だが…それを見た夫が、こんな事を言い出した。
「今までちっとも子に恵まれなかったのに…。それは本当に俺の子か?」
「か、回数は少ないとは言えあなたは確かに私を抱きました。酔った勢いとは言え、覚えて居ないのですか?」
「そ、そうだったか…?しかし…お腹の大きくなったお前は何とも不恰好だな。元々大してスタイルの良い女ではなかったが…ますます魅力の無い身体になった。お前には、女としての魅力はもう何一つ感じない。」
そう言うと、夫は何と私に離縁を突き付けて来たのだ。
「せっかく子が出来たと言うのに…正気なのですか?と言うか、大事な話があるとはこの事だったのですね。」
「そうだ。実は俺は、お前との子などもうとっくに諦めて居たんだ。それを今になって子が出来たと言われても…全く嬉しくもないんだよ。」
そう忌々しそうに話す夫に…私は、やはりこうなったかと思った。
最近、夫が私のお腹を見ては溜息をつく様になったので…彼が私の妊娠を喜んで居ない事、むしろ私とお腹の子の存在を疎ましがって居るのではと感じており…今この瞬間、それを確信する事になったのだ─。
「分かりました…あなたの言う通り、離縁しましょう。ただし…あなたの悪事をハッキリさせとぼけててからですよ?」
そう話す私に、夫は一瞬焦った様な表情を浮かべたが…何の事か分からないと、とぼけてみせた。
「あなたが私の妊娠を喜ばないのは…私に隠れ、愛人を作って居るからです。そしてその愛人に、自分との子を産んで貰う約束をして居るからでしょう?」
私の言葉に、夫はすぐに真っ青な顔になり冷や汗を浮かべた。
実は数か月前…私は、夫が見知らぬ女と密会して居る現場に出くわしてしまった。
そして、二人は愛人関係にあり…私に隠れ子を作ろうとして居るのを知ってしまったのだ。
『あなたとの子は欲しいけれど…もしあなたの奥様が先に妊娠してしまったらどうするの?』
『今までずっと出来なかったんだから、まずそれは無いさ。でももし妊娠したら…不貞の疑惑をかけ堕胎させるか、妊娠した事で女としての魅力を感じなくなったと言っていっそのこと離縁するでも構わない。』
『じゃあそうなったら、私をあなたの新たな妻にしてね!』
そう言って抱き合う夫と愛人に…私は酷くショックを受けると同時に、激しい怒りが湧いて来た。
でも…もし私が夫の不貞を理由に離縁を突き付けても、口が上手い夫はきっと言い逃れするだろう。
そして腹いせに、私の不妊を理由に私を手酷く捨てる可能性だってある─。
そう思った私は、一芝居打ってから彼に別れを告げる事にしたのだった。
「お前、全て知って居たのか!?と言うか、一芝居とはどういう事だ!」
「実は…私は妊娠などして居ないの。」
私は、服の中から水の入った革袋を取り出した。
と同時に、部屋のドアが開き…私の父と彼のお父様が、怒った顔で部屋に入って来た。
「このバカ息子が…。彼女から愛人の話を聞いた時は、まさかと思って居たが…今の様子で、全てが本当だと言う事が分かった。」
「娘から…きっと今日、夫に離縁を告げられるのでその席に立ち会って欲しいと言われて居たんだ。自分一人では、夫に上手く丸め込まれる…むしろ、自分が悪者扱いされ離縁される可能性があると聞き、驚き駆けつけてみれば…なる程、そう言う事だったのか。」
二人の父親の登場に、夫は激しく動揺した。
夫は厳格な自分の父親を恐れて居たし…自分より大柄な私の父も怖がって居たから、そうなるのも無理は無いわ。
そしてそんな二人に同時に責められては…夫は、もう言い逃れする事も出来なかった。
こうして夫は、自分に不貞行為があった事をその場で認めざるを得なくなり…私に多額の慰謝料を払い、離縁する事を約束させられたのだった。
そして夫は、父親から親子の縁を切られ…今後は家の事業に関わる事を一切禁じられた上に、このままこの地に居てはいずれ悪い噂が広まり事業に悪影響を及ぼすと判断され、彼は田舎の空き家に住む事を命じられた。
すると夫は、一人では寂しいからと愛人を連れて行こうとしたが…田舎暮らしなど嫌だと彼女に拒否され、別れを切り出される事になってしまった。
そしてその結果、彼は一人寂しくこの地を旅立つ事になり…そうなって、漸く自分のした事を悔いて居たそうだが…もう何もかもが遅いのだった。
一方、私はと言うと…妊娠して居なかった事が返って幸いし、すぐに新しい再婚相手を見つける事が出来た。
相手は、父の事業を手伝ってくれて居る殿方で…その真面目で誠実な性格は、父のお墨付きでもあった。
そんな彼は、私だけを一途に愛してくれ…今まで夫から大事にされて居なかった私は、すぐに彼の深い愛の虜となった。
そして、それからおよそ一年後…私は彼の子を身籠ると同時に、彼の妻となり…私の少し大きくなったお腹を見て優しい笑みを浮かべる彼に見守れられ、幸せな日々を送って居る─。
そして、以前よりふっくらとしたお腹となった私だが…それを見た夫が、こんな事を言い出した。
「今までちっとも子に恵まれなかったのに…。それは本当に俺の子か?」
「か、回数は少ないとは言えあなたは確かに私を抱きました。酔った勢いとは言え、覚えて居ないのですか?」
「そ、そうだったか…?しかし…お腹の大きくなったお前は何とも不恰好だな。元々大してスタイルの良い女ではなかったが…ますます魅力の無い身体になった。お前には、女としての魅力はもう何一つ感じない。」
そう言うと、夫は何と私に離縁を突き付けて来たのだ。
「せっかく子が出来たと言うのに…正気なのですか?と言うか、大事な話があるとはこの事だったのですね。」
「そうだ。実は俺は、お前との子などもうとっくに諦めて居たんだ。それを今になって子が出来たと言われても…全く嬉しくもないんだよ。」
そう忌々しそうに話す夫に…私は、やはりこうなったかと思った。
最近、夫が私のお腹を見ては溜息をつく様になったので…彼が私の妊娠を喜んで居ない事、むしろ私とお腹の子の存在を疎ましがって居るのではと感じており…今この瞬間、それを確信する事になったのだ─。
「分かりました…あなたの言う通り、離縁しましょう。ただし…あなたの悪事をハッキリさせとぼけててからですよ?」
そう話す私に、夫は一瞬焦った様な表情を浮かべたが…何の事か分からないと、とぼけてみせた。
「あなたが私の妊娠を喜ばないのは…私に隠れ、愛人を作って居るからです。そしてその愛人に、自分との子を産んで貰う約束をして居るからでしょう?」
私の言葉に、夫はすぐに真っ青な顔になり冷や汗を浮かべた。
実は数か月前…私は、夫が見知らぬ女と密会して居る現場に出くわしてしまった。
そして、二人は愛人関係にあり…私に隠れ子を作ろうとして居るのを知ってしまったのだ。
『あなたとの子は欲しいけれど…もしあなたの奥様が先に妊娠してしまったらどうするの?』
『今までずっと出来なかったんだから、まずそれは無いさ。でももし妊娠したら…不貞の疑惑をかけ堕胎させるか、妊娠した事で女としての魅力を感じなくなったと言っていっそのこと離縁するでも構わない。』
『じゃあそうなったら、私をあなたの新たな妻にしてね!』
そう言って抱き合う夫と愛人に…私は酷くショックを受けると同時に、激しい怒りが湧いて来た。
でも…もし私が夫の不貞を理由に離縁を突き付けても、口が上手い夫はきっと言い逃れするだろう。
そして腹いせに、私の不妊を理由に私を手酷く捨てる可能性だってある─。
そう思った私は、一芝居打ってから彼に別れを告げる事にしたのだった。
「お前、全て知って居たのか!?と言うか、一芝居とはどういう事だ!」
「実は…私は妊娠などして居ないの。」
私は、服の中から水の入った革袋を取り出した。
と同時に、部屋のドアが開き…私の父と彼のお父様が、怒った顔で部屋に入って来た。
「このバカ息子が…。彼女から愛人の話を聞いた時は、まさかと思って居たが…今の様子で、全てが本当だと言う事が分かった。」
「娘から…きっと今日、夫に離縁を告げられるのでその席に立ち会って欲しいと言われて居たんだ。自分一人では、夫に上手く丸め込まれる…むしろ、自分が悪者扱いされ離縁される可能性があると聞き、驚き駆けつけてみれば…なる程、そう言う事だったのか。」
二人の父親の登場に、夫は激しく動揺した。
夫は厳格な自分の父親を恐れて居たし…自分より大柄な私の父も怖がって居たから、そうなるのも無理は無いわ。
そしてそんな二人に同時に責められては…夫は、もう言い逃れする事も出来なかった。
こうして夫は、自分に不貞行為があった事をその場で認めざるを得なくなり…私に多額の慰謝料を払い、離縁する事を約束させられたのだった。
そして夫は、父親から親子の縁を切られ…今後は家の事業に関わる事を一切禁じられた上に、このままこの地に居てはいずれ悪い噂が広まり事業に悪影響を及ぼすと判断され、彼は田舎の空き家に住む事を命じられた。
すると夫は、一人では寂しいからと愛人を連れて行こうとしたが…田舎暮らしなど嫌だと彼女に拒否され、別れを切り出される事になってしまった。
そしてその結果、彼は一人寂しくこの地を旅立つ事になり…そうなって、漸く自分のした事を悔いて居たそうだが…もう何もかもが遅いのだった。
一方、私はと言うと…妊娠して居なかった事が返って幸いし、すぐに新しい再婚相手を見つける事が出来た。
相手は、父の事業を手伝ってくれて居る殿方で…その真面目で誠実な性格は、父のお墨付きでもあった。
そんな彼は、私だけを一途に愛してくれ…今まで夫から大事にされて居なかった私は、すぐに彼の深い愛の虜となった。
そして、それからおよそ一年後…私は彼の子を身籠ると同時に、彼の妻となり…私の少し大きくなったお腹を見て優しい笑みを浮かべる彼に見守れられ、幸せな日々を送って居る─。
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