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事故を機に私を捨て幼馴染と結ばれようとした夫は、結局全てを失う羽目になりました。
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ある日の事─。
仕事で王都に向かう途中だった夫が、落馬したと家に運ばれて来た。
そして夫はその事故のせいで大事な右手を負傷し、更には私と結婚してからの記憶を失ってしまった。
その為、夫に私が妻である事を説明すると…彼は、そんな私を見て馬鹿にしたように笑った。
「お前の様な地味で冴えない女が、俺の妻だって?そんな馬鹿な。」
「本当です!あなたと私は夫婦となり、二人三脚でここまで頑張って来たんですよ?」
夫は器用な手先を生かし宝飾品の加工し、私はそのデザインを考え…二人で一つの作品を生み出して来たのだ。
そして夫は、これを王都でお金持ち相手に売って居たという訳だ。
しかし…いくら説明しても、夫は私を妻だとは認めなかった。
その上、私のような地味な女の世話にはなりたくない…代わりに、俺の幼馴染を呼べと言った。
「ど、どうしてあなたの幼馴染が出てくるの…?」
「あいつは、俺と恋仲だからだ。それにあいつとは、結婚の約束もして居るんだぞ?だから…お前と結婚したのは、ただの気まぐれだろうな。」
確かに、夫と彼女の仲は良かったが…まさか、そういう仲だったとは─。
それを聞かされた私は、仕方なく幼馴染を呼びに行った。
しかし、彼女は家にはおらず…彼女の両親に聞いても、どこに居るのか分からないと言う。
諦め家に戻ろうとすると…彼女付きの使用人が、こっそり私に話しかけて来た。
「実は…あなたの旦那様の事故は、ただの事故では無いのです。」
「どういう事?」
使用人から聞かされた話は、驚くべきものだった─。
その後…一人で家に戻った私を夫は咎めたが…私は、そんな夫に離縁を突き付けた。
「あなたの事故は、仕事に向かう途中の事故ではなかったのね。」
「…え?」
「あなたは仕事で王都に行く振りをして、本当はあの幼馴染の女と馬で遠乗りに出かけて居たのよ。その時、あなたは誤って馬から落ち記憶を失った。すると彼女は、この事で自分達の関係がバレてはまずいと思い…自分付きの使用人を呼び、後の処理を任せその場から逃げたそうよ。」
記憶を失った夫は、その事実に驚き…そして、彼女は今何処に居るのかと尋ねた。
「あの女は、あなたの他にも付き合って居る男が複数居たそうでね…。その中の誰かに匿って貰って居るとの事よ。」
「何だって!?」
夫は自分だけが彼女に愛されて居るとずっと思って居たようで、酷くショックを受けた。
「それに、彼女は馬から落ちたあなたを見てこう言ったそうよ?そんな不自由な身体になった男など、もう要らない…私はもう、この男とは何の関係も無いって─。つまり、あなたは彼女に見捨てられたという訳。」
「そ、そんな…。」
夫は、それ以上言葉が続かない様だった。
「私も…あなたの様な不貞を働いた上に、体が不自由になり仕事も出来なくなった男など、もう要りません。」
「ま、待て…!俺と離縁し、女一人でどうやって生きて行くと言うんだ!?路頭に迷う位なら、一生俺の世話をして居た方がマシだろう?」
そう言って、夫は私を引き留めようとしたが‥私は、そんな彼を冷たい目で見た。
「私は一人では無いわ。あなたは忘れて居るけれど…あなたには弟子が居てね。しかも、その彼はとても優秀で…この先は、彼と組んで仕事をやって行こうと思って居るの。だから、私が路頭に迷う心配など無いわ。むしろ…私にも彼女にも見捨てられ、仕事も出来なくなったあなたの方が大変よ?でも…妻の私を陰でずっと裏切って居たのだから、そんな目に遭うのも仕方ないんじゃない?」
そして去って行く私に…夫は絶望の涙を流したのだった─。
その後、元夫は幼馴染を探し出し、自分の元へ連れ帰ろうとしたが…とうとう、彼女が戻って来る事は無かった。
と言うのも、元夫はその頃には貯えを全て使い果たし…その上仕事も出来ず、貧乏のどん底に居たからだ。
元夫はそうなって、幼馴染を愛し妻の私を裏切った事を今更ながらに後悔して居るそうだが…全てが遅いのだった。
一方、元夫の弟子と共に仕事をする様になった私は…彼と、公私共に順調な日々を送って居た。
彼は、職人気質で真面目で堅い人だが…ふとした時に見せる優しさに、私はすぐに彼を好きになった。
また、彼も私の仕事熱心で真面目な所を気に入ってくれ…今注文を受けて居る仕事がひと段落したら、私を迎えたいと言ってくれて居る。
夫の突然の記憶喪失から浮気が発覚…その後離縁という予期せぬ不幸に襲われたけれど…結局これは、私にとっては幸せの始まりに過ぎなかったわ─。
仕事で王都に向かう途中だった夫が、落馬したと家に運ばれて来た。
そして夫はその事故のせいで大事な右手を負傷し、更には私と結婚してからの記憶を失ってしまった。
その為、夫に私が妻である事を説明すると…彼は、そんな私を見て馬鹿にしたように笑った。
「お前の様な地味で冴えない女が、俺の妻だって?そんな馬鹿な。」
「本当です!あなたと私は夫婦となり、二人三脚でここまで頑張って来たんですよ?」
夫は器用な手先を生かし宝飾品の加工し、私はそのデザインを考え…二人で一つの作品を生み出して来たのだ。
そして夫は、これを王都でお金持ち相手に売って居たという訳だ。
しかし…いくら説明しても、夫は私を妻だとは認めなかった。
その上、私のような地味な女の世話にはなりたくない…代わりに、俺の幼馴染を呼べと言った。
「ど、どうしてあなたの幼馴染が出てくるの…?」
「あいつは、俺と恋仲だからだ。それにあいつとは、結婚の約束もして居るんだぞ?だから…お前と結婚したのは、ただの気まぐれだろうな。」
確かに、夫と彼女の仲は良かったが…まさか、そういう仲だったとは─。
それを聞かされた私は、仕方なく幼馴染を呼びに行った。
しかし、彼女は家にはおらず…彼女の両親に聞いても、どこに居るのか分からないと言う。
諦め家に戻ろうとすると…彼女付きの使用人が、こっそり私に話しかけて来た。
「実は…あなたの旦那様の事故は、ただの事故では無いのです。」
「どういう事?」
使用人から聞かされた話は、驚くべきものだった─。
その後…一人で家に戻った私を夫は咎めたが…私は、そんな夫に離縁を突き付けた。
「あなたの事故は、仕事に向かう途中の事故ではなかったのね。」
「…え?」
「あなたは仕事で王都に行く振りをして、本当はあの幼馴染の女と馬で遠乗りに出かけて居たのよ。その時、あなたは誤って馬から落ち記憶を失った。すると彼女は、この事で自分達の関係がバレてはまずいと思い…自分付きの使用人を呼び、後の処理を任せその場から逃げたそうよ。」
記憶を失った夫は、その事実に驚き…そして、彼女は今何処に居るのかと尋ねた。
「あの女は、あなたの他にも付き合って居る男が複数居たそうでね…。その中の誰かに匿って貰って居るとの事よ。」
「何だって!?」
夫は自分だけが彼女に愛されて居るとずっと思って居たようで、酷くショックを受けた。
「それに、彼女は馬から落ちたあなたを見てこう言ったそうよ?そんな不自由な身体になった男など、もう要らない…私はもう、この男とは何の関係も無いって─。つまり、あなたは彼女に見捨てられたという訳。」
「そ、そんな…。」
夫は、それ以上言葉が続かない様だった。
「私も…あなたの様な不貞を働いた上に、体が不自由になり仕事も出来なくなった男など、もう要りません。」
「ま、待て…!俺と離縁し、女一人でどうやって生きて行くと言うんだ!?路頭に迷う位なら、一生俺の世話をして居た方がマシだろう?」
そう言って、夫は私を引き留めようとしたが‥私は、そんな彼を冷たい目で見た。
「私は一人では無いわ。あなたは忘れて居るけれど…あなたには弟子が居てね。しかも、その彼はとても優秀で…この先は、彼と組んで仕事をやって行こうと思って居るの。だから、私が路頭に迷う心配など無いわ。むしろ…私にも彼女にも見捨てられ、仕事も出来なくなったあなたの方が大変よ?でも…妻の私を陰でずっと裏切って居たのだから、そんな目に遭うのも仕方ないんじゃない?」
そして去って行く私に…夫は絶望の涙を流したのだった─。
その後、元夫は幼馴染を探し出し、自分の元へ連れ帰ろうとしたが…とうとう、彼女が戻って来る事は無かった。
と言うのも、元夫はその頃には貯えを全て使い果たし…その上仕事も出来ず、貧乏のどん底に居たからだ。
元夫はそうなって、幼馴染を愛し妻の私を裏切った事を今更ながらに後悔して居るそうだが…全てが遅いのだった。
一方、元夫の弟子と共に仕事をする様になった私は…彼と、公私共に順調な日々を送って居た。
彼は、職人気質で真面目で堅い人だが…ふとした時に見せる優しさに、私はすぐに彼を好きになった。
また、彼も私の仕事熱心で真面目な所を気に入ってくれ…今注文を受けて居る仕事がひと段落したら、私を迎えたいと言ってくれて居る。
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