『恋愛短編集①』離縁を乗り越え、私は幸せになります──。

Nao*

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夫の愛人に子供ができた事により、妻の私はもう用無しとなったのでした。

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 夫と結婚し三年、私は未だ子に恵まれなかった。

 すると夫は私が年上と言う事もあってか、そんな私に見切りを付けたらしく…若く美しい愛人を作るとすっかり彼女に夢中になった。

 

 そしてそれから少しして、愛人は夫の子を身籠った。

 すると念願だった子を授かった愛人を夫は褒め称え、反対に子が出来なかった私を大層見下すように─。

 

 そして、役目を果たした女では無く果たせなかった女が妻の座に居座って居るのはおかしい…妻として役目を果たせない私とはもう離縁する、この家から出て行けと命じた。

 どうやら夫は私が出て行った後に愛人をこの家に迎え、いずれは妻にするつもりらしい。


 
 私はもう一度考え直して欲しいと夫に縋ったが…彼の決意は固く、私は半ば追放される形で家を去る事に─。

 そして僅かな荷物を手に実家へと向かったが、その道中で夫の愛人とすれ違った。


 
 俯き加減で歩く私の存在に彼女は気付かなかったが…私の方は、彼女に対しある違和感を感じた。



 と言うのも、愛人は子を身籠った事でお腹が出て来たと夫に聞かされて居たが…どう見ても彼女のお腹はペタンコで、とてもそこに子が宿って居るようには見えなかった。
 


 わざわざ彼女に話しかけたくも無いし、私は見間違いだと思いサッサとそこを通り過ぎたが…それでも暫く不思議に思う気持ちは消えなかった。



 そしてそれから季節は巡り…愛人とやがて生まれる我が子と幸せに暮らして居るだろうと思って居た元夫が、とんでもない不幸に見舞われた事を私は知った。



 と言うのも…彼の愛人が赤子を誘拐した罪で捕らえられ、牢に入れられたからだ。

 またそのせいで、彼女を妻に迎えようとして居た元夫も共犯者だと思われ牢に入れられてしまったのだ。



 そして彼女がそんな事をしたのは、本当は元夫の子を身籠っては居なかったからだった。

 一向に妊娠せず子を望む彼に捨てられたくないと思った愛人は、皮の袋に水を詰め服の中に入れ…それでお腹を膨らませ妊娠したように見せかけて居た。

 

 だが、いつまでもそれで誤魔化せれる訳はなく…思い悩んだ彼女は近くに住む夫婦の家から赤子を誘拐、自分が産んだ子に見せかけようと考えたらしい。



 そして私とすれ違ったあの時の彼女だが…そんな物をお腹に詰め長い距離を歩くのは辛いので、丁度それを取り出して居た状態だったのだ。



 後にその犯行は愛人が考えた事だと明らかになり、元夫だけは牢から出される事となったが…そんな彼に待って居たのは辛い現実だった。



 妻を追い出し傍に置いた女が犯罪者になった上…今まで子が出来なかったのは、女の方が悪いのではなく己の身体に原因があった事が判明したからだ。



 こんな事になり新しい女を探そうとして居た元夫は事件を知った世間から冷たい目で見られ、体の事で女達からはとことん避けられ…おまけに今まで上手く行って居た事業も今回の事件で一気に傾き、それは悲惨な生活を送る羽目になった。



 一方、私はと言うと…実家で過ごす内に近くに住む名家のご子息と仲良くなり、彼と再婚する事が決まり幸せの最中に居た。



 元夫との事で、子を産む事に対し消極的になって居た私だったが…自分に原因があった訳ではないと分かり安堵し、ご子息との結婚に踏み切る事が出来た。



 新しく夫となる彼は、事前の主治医の診断で体に何の問題も無い事もハッキリして居るし…念願だった愛する人の子を産み育てると言う望みを、私は今度こそ叶える事が出来そうだわ─。
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