『恋愛短編集①』離縁を乗り越え、私は幸せになります──。

Nao*

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世間から見れば良き夫でも、私にとっては愛をくれない最低な人でした。

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 私には、結婚して五年になる夫が居るが…未だに子に恵まれず、そのせいもあってか夫婦仲は上手く行って居なかった。

 夫は休日になるといつも一人で出かけてしまい、私の事などほったらかしだ。



 しかし私は、そんな夫におかしな噂がある事を知った。

 どうやら夫は、地元では「愛妻家」として評判らしい。

 しかし私は、あの夫にどうしてそんな噂が立つのか不思議で仕方なかった。



 いつも私を一人家に置き去りにし勝手に出かけてしまうし、普段から私に素っ気ないし…何なら、気に入らない事があればすぐに結婚するんじゃなかったと理不尽な怒りをぶつけてくる始末だ。

 だから間違っても、愛妻家などと呼ばれるような男では無いのに…。

 その噂が気になった私は、詳しく調べる事にした。



 それから一ヶ月後…私は、大事な話があると夫に告げた。

「あなた…私の双子の妹と浮気をして居ますね?」

「と、突然何を言い出す!?」

「あなたは、地元では愛妻家だと評判だそうですね。でも普段のあなたの私への態度は、とてもそんな噂が立つようには思えません。そこで私は、休日のあなたの行動を監視するよう従者に頼みました。その結果…あなたは自身が生まれた地で、私の双子の妹と密会を繰り返して居た。この周辺で会って居ては、すぐに自分達の関係が私に知られてしまうと思ったんでしょうが…田舎は田舎で他所者の事をよく見て居るし、些細な事でもすぐ噂にしますから…結局は、こうして私に知られる事になってしまいましたね。」
 
 私の言葉に、夫は真っ青な顔になり冷や汗を流した。



「この事は、既に父に報告済みです。その結果、妹にはあるお金持ちの殿方から結婚したいと言う話が来て居ましたが…今回の件で、それは白紙になりました。更に、家の恥になると言われ修道院へ送られる事が決まりましたので…妹はこの先、二度とあなたに会う事は無いでしょう。」

「ほ、ほんの出来心だったんだ!お前はいつも事業の事で頭が一杯だし、何よりちっとも子が出来ない。それならいっそ、お前の代わりに彼女に子を産んで貰おうと…。」

「そんな事、絶対に許す訳が無いでしょう!?そもそもあなたが、今は亡きお父様から継いだ事業を傾かせてしまった為に、私が必死に金策に走る事になったんです。事業の事で頭が一杯になるのは当然ですよ。なのにあなたときたら…妹と会う度に何でも好きな物を買ってあげ、至れり尽くせりで…私には、一度もそんな事してくれた事無いのに─。あなたのような甲斐性なしとは、もう夫婦で居られません!」



 そして私は、夫に離縁を告げた。

「賭け事で勝ったお金を、私に内緒でかなり溜め込んで居る事ももう分かって居ます。それで私に慰謝料が払えるでしょう?それから今後のあなたの事業ですが…勿論私はもう手助けしませんし、毎月私の家から送られて居た支援金も取り止めです。」

 私の言葉を聞いた夫は…自分が悪かった、離縁だけは勘弁して欲しいと泣いて謝って来たが…私は決して許しはしないのだった─。



 その後、元夫の事業はどんどん傾いて行き…とうとう彼は破産する事に─。

 最終的に家も手放す事になった元夫は、どこにも行き場がなくなり路頭に迷う事になったのだった。



 一方、私はと言うと…元夫の事業を通じ以前から仲の良かった殿方と、将来を見据えた上でのお付き合いを始めて居た。

 彼は、知り合った当初からとても紳士的で…私は、そんな彼を素敵な人だと思って居た。


 
 彼が言うには、淑やかな私に一目惚れしての事だったと言うが…私は、全く彼の気持ちに気付いては居なかった。

 すると彼は、私が離縁したと知るやその気持ちを私に伝え…是非恋人として付き合って欲しい…結婚したいと言ってくれたのだった。



 そんな誠実な彼の様子にすっかり心奪われた私は、彼の気持ちに喜んで応える事にし…こうして恋人になってからは、そんな彼の魅力をより一層近くで感じて居る。
 
 そしてそんな彼ならば、本物の愛妻家となり私をうんと大事にしてくれるだろうと…やがて来る幸せな未来を想い、私は期待に胸を弾ませた─。
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