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初夜以来私を抱こうとしなかった夫に迫られましたが、それを拒否し離縁を突き付けます。
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結婚して五年目になる、私と夫。
そんな彼との結婚は親から言われた事だが…私は彼に密かに憧れて居た為、とても嬉しかった。
しかし…そんな彼との仲は、今やすっかり冷え切って居た。
と言うのも、彼に求められたのは初夜の時だけ─。
彼はそれ以降、私を一度も抱こうとはしなかった。
でも、それで彼が欲求不満になる事は無かった。
何故なら、彼には他所に愛人が居たからだ。
夫とその愛人は、実は私達が夫婦になる前からの関係だった。
当時、その女の両親と今は亡き彼の両親同士が不仲で…二人はついに結ばれる事が出来なかったらしい。
きっと夫は初夜の時…流石に最初だけはと、仕方なく私を抱いたのだろう。
でも、その一回で子供が出来てしまうとは…これは、彼も予想外だったに違いない。
私が二人の関係を知りながらも離縁できないで居たのは、この子の為だった。
この子は体が弱く、大きな手術を終えたばかりだ。
まだもう少しだけ、穏やかな生活を送らせてあげたい─。
それから三ヶ月程が過ぎた、ある夜の事─。
夫が急に私の部屋を訪ねて来て、私を求めて来た。
「今日は久しぶりにお前と楽しみたくて─。」
「何故、今なんです?」
「それは…事業が忙しかったし、何より息子が病気ばかりでお前もそんな余裕はなかっただろう?今まで寂しい思いをさせた分、たっぷり可愛がって─」
「お断りです。」
私は、肩に置かれた夫の手を払い除けた。
「あなた…あの愛人と別れたのでしょう?」
「な、何を言って─」
「あなたにそう言う女が居た事など、とっくに知って居ました。あの女の家は…事業の失敗で破産しましたね?それで今日、あの女は娼館に売られる事になって居たそうね。」
「そ、それは…。」
「そんな彼女は、自分と共に駆け落ちして欲しいとあなたに訴えたけれど…そこまで情が無いあなたは、それを拒否して彼女を捨てた。それで次の愛人を探して居るけれど…その間の繋ぎとして、私を抱こうとしてるのよね?」
私の言葉に、夫は何も言えず焦って居る。
「最近、私の従者にあなた達を尾行して貰って居たの。それに、あなたの考えなど大体分かるわ。これでも、私はあなたの妻なのだから…。でも、それも今日で終わりよ。」
「え…?」
「私はあなたと離縁し、息子を連れてこの家を出て行きます。」
「そ、そんな…!」
「あの子の身体ももう元気になったし…この五年の内に、あの子を養えるだけのお金も貯める事が出来た。今あなたと別れたって、私は何も困らないもの─。」
夫が浮気に勤しむ間…私は自身で事業を立ち上げ、今や夫に頼らずとも生きて行ける状態だ。
むしろ、夫の事業の方が最近傾き始めて居て…おまけにこれまで愛人に多額の金を貢いで居た事もあり、彼の方が私を失うとこの先苦しい思いをするはずだ。
すると、夫もそれが分かったのか…離縁だけは嫌だ、これまでの事は謝ると泣きついて来た。
「無理ね…。だってあなたは私だけでなく、息子にももう必要とされて居ないから。」
とその時、ドアをノックする音がし…私はどうぞと答えた。
そして部屋のドアが開き…鞄に荷物を詰めた息子が入って来た。
「手術の時もその後も、ちっとも顔を見せてくれない父上など…僕はもう要りません。僕は、母上だけ居て下さればそれで十分です。」
息子の言葉に、夫はショックを受け固まった。
私はそんな夫を無視し、息子の手を取ると…実家から迎えに来た馬車に乗り込み、彼の元を去ったのだった─。
その後、元夫は復縁を迫って来たが…それに必死になる余り事業が手つかずとなり、やがて多額の借金を抱え破産する事に─。
おまけに、息子と同じ心臓の病になり…彼は苦しむ事になったのだ。
息子の病は遺伝性と言われて居て…私も元夫も過去に検査した際、特に異常は無かったけれど…まさか今になってそんな病を発症するとは─。
お金もなく身寄りもないでは、彼は一体どうするのかしら?
まぁ…離縁した私には、もう関係のない事だけれど─。
私は今、実家で息子と仲良く暮らして居る。
息子は日に日に逞しく成長し…母上の事業は大きくなったら僕が引き継ぐと言ってくれ、これまで頑張って来て本当に良かったと思えた。
それに…そんな息子や私を大事にしてくれる素敵な殿方と出会い、来年には再婚する事も決まったし…今、私はとても幸せよ─。
そんな彼との結婚は親から言われた事だが…私は彼に密かに憧れて居た為、とても嬉しかった。
しかし…そんな彼との仲は、今やすっかり冷え切って居た。
と言うのも、彼に求められたのは初夜の時だけ─。
彼はそれ以降、私を一度も抱こうとはしなかった。
でも、それで彼が欲求不満になる事は無かった。
何故なら、彼には他所に愛人が居たからだ。
夫とその愛人は、実は私達が夫婦になる前からの関係だった。
当時、その女の両親と今は亡き彼の両親同士が不仲で…二人はついに結ばれる事が出来なかったらしい。
きっと夫は初夜の時…流石に最初だけはと、仕方なく私を抱いたのだろう。
でも、その一回で子供が出来てしまうとは…これは、彼も予想外だったに違いない。
私が二人の関係を知りながらも離縁できないで居たのは、この子の為だった。
この子は体が弱く、大きな手術を終えたばかりだ。
まだもう少しだけ、穏やかな生活を送らせてあげたい─。
それから三ヶ月程が過ぎた、ある夜の事─。
夫が急に私の部屋を訪ねて来て、私を求めて来た。
「今日は久しぶりにお前と楽しみたくて─。」
「何故、今なんです?」
「それは…事業が忙しかったし、何より息子が病気ばかりでお前もそんな余裕はなかっただろう?今まで寂しい思いをさせた分、たっぷり可愛がって─」
「お断りです。」
私は、肩に置かれた夫の手を払い除けた。
「あなた…あの愛人と別れたのでしょう?」
「な、何を言って─」
「あなたにそう言う女が居た事など、とっくに知って居ました。あの女の家は…事業の失敗で破産しましたね?それで今日、あの女は娼館に売られる事になって居たそうね。」
「そ、それは…。」
「そんな彼女は、自分と共に駆け落ちして欲しいとあなたに訴えたけれど…そこまで情が無いあなたは、それを拒否して彼女を捨てた。それで次の愛人を探して居るけれど…その間の繋ぎとして、私を抱こうとしてるのよね?」
私の言葉に、夫は何も言えず焦って居る。
「最近、私の従者にあなた達を尾行して貰って居たの。それに、あなたの考えなど大体分かるわ。これでも、私はあなたの妻なのだから…。でも、それも今日で終わりよ。」
「え…?」
「私はあなたと離縁し、息子を連れてこの家を出て行きます。」
「そ、そんな…!」
「あの子の身体ももう元気になったし…この五年の内に、あの子を養えるだけのお金も貯める事が出来た。今あなたと別れたって、私は何も困らないもの─。」
夫が浮気に勤しむ間…私は自身で事業を立ち上げ、今や夫に頼らずとも生きて行ける状態だ。
むしろ、夫の事業の方が最近傾き始めて居て…おまけにこれまで愛人に多額の金を貢いで居た事もあり、彼の方が私を失うとこの先苦しい思いをするはずだ。
すると、夫もそれが分かったのか…離縁だけは嫌だ、これまでの事は謝ると泣きついて来た。
「無理ね…。だってあなたは私だけでなく、息子にももう必要とされて居ないから。」
とその時、ドアをノックする音がし…私はどうぞと答えた。
そして部屋のドアが開き…鞄に荷物を詰めた息子が入って来た。
「手術の時もその後も、ちっとも顔を見せてくれない父上など…僕はもう要りません。僕は、母上だけ居て下さればそれで十分です。」
息子の言葉に、夫はショックを受け固まった。
私はそんな夫を無視し、息子の手を取ると…実家から迎えに来た馬車に乗り込み、彼の元を去ったのだった─。
その後、元夫は復縁を迫って来たが…それに必死になる余り事業が手つかずとなり、やがて多額の借金を抱え破産する事に─。
おまけに、息子と同じ心臓の病になり…彼は苦しむ事になったのだ。
息子の病は遺伝性と言われて居て…私も元夫も過去に検査した際、特に異常は無かったけれど…まさか今になってそんな病を発症するとは─。
お金もなく身寄りもないでは、彼は一体どうするのかしら?
まぁ…離縁した私には、もう関係のない事だけれど─。
私は今、実家で息子と仲良く暮らして居る。
息子は日に日に逞しく成長し…母上の事業は大きくなったら僕が引き継ぐと言ってくれ、これまで頑張って来て本当に良かったと思えた。
それに…そんな息子や私を大事にしてくれる素敵な殿方と出会い、来年には再婚する事も決まったし…今、私はとても幸せよ─。
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