『恋愛短編集①』離縁を乗り越え、私は幸せになります──。

Nao*

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義母に不貞を疑われた挙句、夫にも庇って貰えないまま家を出される事となりました…。

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 家同士の繋がりで、ある殿方に嫁いだ私。

 すると結婚が決まるまでは優しかった夫の母親は、嫁いだ途端その態度を豹変させた。



 特に彼の父親や私の両親が相次いで急死してからは、姑は毎日のように私に意地悪して来るように─。

 どうせ嫁に貰うならもっと美人で愛嬌がある娘が良かったとか、息子とは釣りわないから早く離縁しろだの散々な事を私は言われて居た。



 それに思い悩んだ私は、思い切って夫に相談してみたが…女同士の事は女同士で解決しろ、嫁ならそこを上手くやれと全く取り合ってくれなかった。



 最近では私に相談されたくないからか、夫は家を空けるようになり帰って来るのも遅いし…そのせいで、私は余計に姑に意地悪される日々を送る羽目になるのだった。



 するとそんな中、私は姑から急に家を出て行くよう命じられた。

 私が夫に隠れ、不貞を働いて居ると言うのがその理由だった。
 


 町で私が見知らぬ男と寄り添い歩いて居る所を見た─。
 
 いくら息子に相手にされないからって、他の男に走るのは如何なものかと姑は私を大層責めた。


 
 確かに、私は数日前に町である殿方と知り合い親しくなったが…別に男女の関係になった訳ではない。

 しかしそれを話しても姑は全く信じてくれず…息子を裏切った慰謝料として両親から貰った遺産の一部を置いて家を出て行けと言って聞かない。



 するとその時…丁度夫が帰宅して来た為、私は彼に助けを求めた。

 あなたのお母様は私が不貞を働いたと勘違いして居るが、私はそんな事はして居ない─。

 それを理由にこの家から追い出されそうになって居るので、どうか助けて欲しい─。



 しかし夫は、俺への当てつけでそんな事をしたのか…もしくは構って欲しかったからかは知らないが、母が出て行けと言うならそれに従え─。

 父が亡くなった事でこの家を仕切って居るのは母なのだから、それに逆らう事は許されないと言い私を全く庇ってくれなかった。


 
 結果、私は姑に無理矢理手持ちの金を奪われ…身一つで家を追い出される事に─。

 そして夫は、そんな私にあっさりと離縁を言い渡すのだった。



 そうして夫の家を追い出された私は、行く当てもないまま町をさ迷う事に─。
 
 両親が亡くなってすぐ実家は売ってしまったし…暫くはどこかで住み込みの仕事でもして働き、今後の身の振り方を考えるしかない─。



 するとそんな私に、ある人物が声をかけて来た。

 それは、数日前に知り合ったあのお医者様で…彼は新しくこの町の診療所の先生を任される事になった方だ。

 しかし彼はこの町に来る途中で地図を落としてしまい、困って居た所を私が声をかけ道案内をしてあげたのだが…それを見た姑が浮気して居ると一方的に決めつけ、あのように大騒ぎしたと言う訳だ。



 すると暗い顔をした私から一部始終を聞いた彼は…自分が原因でそんな事になってしまい申し訳なかったと、お詫びに私を診療所の受付として住み込みで雇うと言ってくれた。

 それを聞いた私は、有難く彼の元でお世話になる事に─。

 

 そして仕事にも慣れて来た頃…ある患者が訪れた事で、私は驚きの事実を知る事となった。

 それはある若い女の患者で…彼女は身籠って居て、そのお腹は大分大きかった。

 するとその彼女の付き添いとして、元夫と姑が揃って姿を見せたのだ。



 それに気づいた私はすぐに先生に事情を話しその場を任せ、診療所の奥に隠れる事に─。

 そしてそんな私に気付かない元夫は、彼女の腹の子は自分だと説明し…この診療所で出産を希望して居ると話し始めた。

 だが子供が生まれる予定日を聞いた時、私は首を傾げた。



 彼と私が離縁したのは、まだ半年くらい前なのに…それなのにもうすぐ出産とはおかしくない?
 
 彼は彼女の腹の子の父親は自分だと言うが、では一体いつ彼女を身籠らせたと言うのか…。

 私とまだ婚姻関係がある内に彼女を身籠らせて居ないと、その出産予定日にならないのでは─。



 そう私が考えて居た時、姑がウキウキとした声でこう言った。

 彼女は私の親しくして居る方の娘さんなの─。

 私は彼女と息子が結ばれて欲しいと常々思って居たけれど、亡き主人が別の女を息子にあてがってしまって…でもその女は排除したから、これで心置きなく二人を夫婦に出来るわ。

 息子も私と同じ気持ちだったようで、前からこっそり子を仕込んで居たようだし…本当によくやったわ。



 それを聞いた私は、やはり元夫は私との婚姻中に彼女と関係を持って居たのだと確信した。
 
 そして姑が私を家から追い出したのは、そんな二人を敢えてくっ付ける為にそうしたのだと言う事も─。
 
 

 全てを知った私は、我慢ならず二人の元へと向かった。

 そして、ここで働いて居たおかげで良い事が聞けた…不貞を働いたのは、私ではなく夫であるあなたの方じゃないか─。

 なのに私を悪者扱いし家を追い出すとは余りに酷いと、元夫と姑に詰め寄った。

 
  
 すると私が現れた事に驚いた元夫と姑は、大慌てて彼女の手を引くと診療所から飛び出し逃げて行った。

 しかし余りに勢いよく道に飛び出したせいで、走って来た馬車に三人とも轢かれてしまった。



 その結果、姑はその場で息を引き取り…元夫は命は助かったものの、身体に大きな損傷を負った。

 そして身籠って居た彼女は、この事故で予定よりも早く子を産み落としてしまい…子は助かったものの、彼女はその後息を引き取った。



 その後、私は生き残った元夫に慰謝料を請求する事に─。

 こんな身体になった俺に金を払わせるなど酷いと元夫は訴えたが、あなたには母親の遺産があるだろう…後遺症と言っても子が作れない身体になっただけで働けるのだから、一生かかっても慰謝料を払うよう約束させた。



 また彼は、浮気相手だった彼女の家に預けられて居る子供の養育費も払う事になって居るらしく、そのせいで金銭的に苦しい生活を強いられる事になったが…生き残った父親としては当然の責任だわ─。
 
 

 一方、私はと言うと…あれから医学を学び先生の助手としても働くようになった。

 そうして彼を手助けする内、私は彼に好意を抱くように─。



 また彼も、公私共に自分を支える私に特別な感情を抱くようになり…この先もずっと自分と一緒に居て欲しいと、私に結婚を申し込んでくれた。



 そして私はその気持ちに喜んで応え、今は彼の妻として彼の傍に居るが…そのお腹には彼の子が宿って居た。

 彼はその事を大層喜んでくれ、自分がその子を取り上げるのだと今から我が子の誕生を心待ちにしてくれて居て…あの時は不貞を疑われ災難だったけれど、彼と出会えて本当に良かったと心の底から思うわ─。
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