『恋愛短編集①』離縁を乗り越え、私は幸せになります──。

Nao*

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病に倒れた夫を急ぎ見舞ったのに、彼が傍に居て欲しかったのは私では無かったようです…。

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 夫が病に倒れたと、隣国に居た私は人づてに知る事に─。

 大事な取引の途中ではあったが…私は相手に事情を説明し予定を切り上げると、夫の元へ駆け付ける事にした。



 しかし、やっとの思いで家に辿り着いた私が見たのは…美しい女に介抱され、だらしない顔をした夫の姿だった。



 それを見て、これは一体どいう事かと私に声をかけられた夫は…この事態に慌ててベッドから飛び起きた。

 

 どうやら彼女は夫の愛人で…夫は愛する彼女に付きっきりで看病して貰う為、わざわざ家に招いたらしい。

 しかも、病と言うのは全くの出鱈目で…ただ彼女を傍に置く為の口実に過ぎなかったと言う。



 それを聞いた私は、夫のした事に大層呆れ…何を馬鹿なやって居るのだとその場に崩れ落ちた。



 するとそんな私を見た愛人は、その隙を見てその場から逃げ出し…夫は慌てて彼女を呼び戻そうと追いかけたが、私がその足を掴んで引き倒した為に叶わなかった。



 夫はこれに対し激怒したが…私はその何倍も怒りが湧いて居た。

 と言うのも、今回私がわざわざ隣国に赴いたのは…夫がその国の言葉が苦手で、代わりに私に行って欲しいと頼んで来たからだ。
 
 こう言う事は今まで何度もあったが…特に今回は事業拡大の為の大事な取引の場で、夫の事業の今後がかかって居たのだ。



 その上、今我が国と隣国は関係が悪く…そこを訪れる事には危険も伴ったと言うのに…。

 それでも夫の役に立つならと、覚悟して旅立ったのだが…そんな私の気持ちも考えず、不貞を働くなど─。


 
 そう言って怒る私の言葉を無視し、もしや取引を中止して来たのか…そこまで行っておきながら何をして居ると夫は怒鳴って来た。

 それを受け、私はとうとう夫に愛想が尽きてしまい…こんな人の為に、もう頑張るのはよそうと思った。
 
 また、夫の今後の事業の事を考え…私はこれを機に、彼との縁を切る事を決めたのだった。
 

 
 そこで、私は夫の不貞を理由に離縁を告げた。

 すると夫は、取引を成功させなかった上に愛人との時間を邪魔した女などもう要らないとあっさりそれを了承した。



 その後、私は僅かだが慰謝料を貰い…彼の家を出て実家に戻る事に─。

 そうなって、元夫は再び愛人を自分の傍に置く事になったのだが…そんな幸せな日々はすぐに終わりを迎えた。



 と言うのも、取引を中途半端な所で終わらせたまま詫びも連絡も取って来ない元夫に、隣国の大商人が激怒─。

 元夫と取引して居る者や支援をする者に裏で連絡を取り、今後彼の事業に関わらない事を約束させてしまったのだ。

 そのせいで、元夫の事業はあっと言う間に傾き…彼は負債を抱え破産する事に─。



 そうなって元夫は、あれだけ傍に置きたがった愛人からあっさり見限られる羽目になってしまった。

 そして路頭に迷う事になった元夫は、あの時くだらない嘘を付いた事…そして有能な私と離縁した事を、心から後悔するのだった。

 

 一方、私はと言うと…隣国の言葉だけでなく複数の国の言葉を理解するその言語力をある大商人に見込まれ、彼の妻に迎えられる事になった。

 
 
 彼は私を公私共に良いパートナーだと言い、大層大事にしてくれた。

 今まで元夫の身勝手に振り回されて居た私にとっては、今の彼とのこの関係が性に合って居る。
 
 仕事の面では対等で…だけど二人きりの時には思い切り甘やかしてくれるそんな彼に、今の私の心は幸せに満ち足りて居る─。
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