『恋愛短編集①』離縁を乗り越え、私は幸せになります──。

Nao*

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夫には義母との隠し子が居た挙句、私が身籠れないならその子を跡取りにすると言い出しました。

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 夫の父親が亡くなると、彼はおかしな事を言い出した。

 このまま私が身籠らないなら、ある人との間に出来た子供を跡継ぎに迎えると言うのだ。

 つまり夫には隠し子が居て、妻の私を裏切って居た事になる。



 しかし夫は、いつまでも子を身籠らないのお前が悪い─。

 俺に見限られても仕方ない、離縁しないだけでも嬉しく思えと開き直った上に私を責めた。

 そしてそんな夫を見ても、彼の継母…義母は全く咎めずむしろ彼の考えを肯定した。



 隠し子と言われても、その相手の女は分からないし…そのような子を母親として温かく迎える事は難しいわ─。

 そう思った私は反対したが、二人はそんな私を無視し話を進めてしまい…私は、夫のお父様がまだ生きてくれて居たらこんな事にはならなかったのにと涙した。



 結婚後、酒癖が悪い事が判明した夫と嫁いびりが好きな義母に悩まされる私を、義父は色々と親身になり支えてくれた。

 だから二人もそれ以上の好き勝手は出来ず、私はこのまま二人が態度を改めてくれるのではないかと期待して居たのだ。


 
 しかし、それは大きな間違いだった─。

 このままでは、素性がハッキリしない子がこの家の跡取りになってしまう。

 そんな事、亡きお父様も絶対に喜ばない。



 そんなふうに思う中、私はお父様から授かった手紙の存在を思い出した。

 自分に万一の事があり窮地に陥ったら、それを読むよう言われて居たのだ。

 ギリギリまで一人で耐えた私だが、もうそれに頼るしかない─。


 
 そうして目にした手紙には、驚くべき事が書かれて居た。
 
 何と、その隠し子を産んだのは義母で…二人はお父様や私に隠れ浮気関係にあったと言う。


 
 だが私のショックを考えたお父様は、二人を表立って責める事は出来ず…その事実に敢えて気付かない振りをし、隠し子を施設に預け絶対にこの家に近づけない事…それを破ったら責任を取る事を夫に約束させたと言う。

 そしてもし万一夫がそれを破ったら、ある人物に後の事を任せてある…だからそれ以上心配しなくても良いとそこには書かれて居た。



 一時義母がお父様に一方的に腹を立て家出して居たが、きっとその時に隠し子を産んだのだろう。
 
 しかし、協力関係にある人物とは誰なのか─。

 私はそこに書かれて居た連絡先を見て、その方に二人の事を相談する事にした。



 それから一週間後…夫と義母が隠し子の訪れを楽しみにする中、ある人物が家にやって来た。
 
 そしてそれは二人が待って居た隠し子では無く…お父様と前妻の間に出来た息子で、この家の長男であった。



 彼はかつて後妻としてやって来た義母と反りが合わず、自ら養子になりたいと家を出て…そのおかげで夫はこの家の財産を全て継ぐ事が出来たのだ。



 しかし夫が隠し子をこの家に迎え入れるなら、長男である彼がこの家の全てを受け継き…夫と義母には身一つでこの家を出て行って貰う事になる。

 そしてそれが、お父様や私を裏切った二人への罰と言う事だった。



 するとそれを知った二人は真っ青になり、そんな事になったら路頭に迷い野垂れ死ぬから辞めてくれと訴えたが…もう決まって居る事だと、私も彼もそれを受け入れないのだった。


 
 その後結局この件は世間に噂される事になり、二人は周りから白い目で見られてしまい…それに耐えきれなくなった二人は、泣く泣く家を出て行った。

 そしてそうなった事で、隠し子はこの家では無く別の家に養子として貰われる事に─。


 
 また私はと言うと…長男である彼と相談してこの家は売る事にし、私は彼の元に身を寄せる事になった。
 
 と言うのも、私と彼は学園時代に出会って居て…私が短期留学をした際彼には色々と助けられ、密かに憧れを抱いた相手だったのだ。


 
 彼がまさか夫の兄で、こうして再び会えると思って居なかったが…あの時よりももっと素敵になった彼に、私は憧れ以上の気持ちをすぐに抱いた。

 そして彼も当時密かに私の事が好きで、その気持ちが今も残って居る事が判明し…私達はこれを機に一緒になる事に─。

 

 これにはきっと、天国のお父様も驚いただろうが…一番は私が幸せになる事だとあの手紙に書かれて居て、それが実現した今きっと納得してくれるだろうと私は思うのだった─。
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