『恋愛短編集①』離縁を乗り越え、私は幸せになります──。

病弱故に子を期待できない筈の夫ですが、実は隠し子が居た事が判明しました…。

　学生時代から交際して居た彼と結婚した私。

　そんな彼は昔から病弱だそうで、それ故に今後子供は望めないと交際当初に宣言して来た。

　しかし私は当時から彼に夢中で…無理に子を作ってあなたに何かあったら嫌だ、あなたさえ一生傍に居てくれればいいとそれを受け入れた。



　そんな彼はとても賢くて、学生の頃の努力が実り今はある研究職に付いて居る。

　一つの物事に熱中する性格の彼だから、身体の問題を除いても子を持たない方が結果的に良かったのだ。

　私も同じ職に就き彼を公私共に支える事に忙しく、子育てをする余裕など持てないし…私達夫婦はきっとこの先も二人で生きて行くのだろうと、私は何時しか当たり前のように考えて居た。



　しかしそんな夫に、実は隠し子が居た事が判明した。

　夫は一時期助手に来て居た若い研究員の娘と良い仲となり、肉体関係を持ってしまったと言う。



　そして彼女は夫の子を身籠り出産…その後、夫は子供の養育費を私に隠れ彼女に払い続けて来たが…うっかり研究資金を使いすぎ、今月分が支払えなくなってしまった。

　するとそれに怒った彼女が私達の家まで押しかけて来て、この事を私に暴露したのだ。

　またそんな彼女から、私は夫に関するある重大な秘密を聞かされる事に─。



　実は夫が病弱だったのは子供の時だけで…それ以降はすっかり健康な体となり、子を作る事に何の支障も無いそうだ。

　しかし彼は自身の研究に一生没頭したく、私にそんな嘘を付いたのだ。

　

　そもそも学生時代に夫が私に声をかけて来たのも、私がお金持ちの令嬢だったからで…私と一緒になれば一生研修資金に困る事は無いと思っての事で、最初からただの金目当てだったらしい。



　だから愛しても居ない女と子供など作りたくないから、子供の時に病弱だった事を利用しあいつを騙してやった─。

　君との間に子が出来たのは予定外だったが…研究資金を増やしたいとあいつに嘘を付き金を出させるから、それを養育費に充ててくれと夫は彼女に話して居たのだ。



　それを知った私は、出会いから今までずっと夫に騙され裏切られて居た事を知り激怒した。
　
　そして、あなたとは今日限りで離縁する…この事は父にすぐ報告するから、今後研究資金は一切出ないだろうと夫に告げた。



　すると夫は、そんな事になったら今やって居る研究が続けられなくなるし養育費も支払えなくなると真っ青な顔で私に泣きついて来た。

　そして夫の浮気相手である彼女も、あの子はこの人に似て体が弱いのだ…養育費が貰えなくなったら大変な事になると涙ながらに訴えた。


　
　だが私はそんなものは自業自得だと言い…二人に浮気をした責任を取って貰う為、それぞれに容赦なく慰謝料を請求するのだった。



　その後、元夫は研究機材を全て売り払い私への慰謝料を支払った。

　と同時に子供の養育費の支払いの為、彼はお金は良いがキツイ肉体労働に就く羽目になった。

　すると不慣れな仕事のせいか、彼はあっという間に体を壊し…昔のようにすっかり病弱になってしまったと言う。



　また浮気相手の彼女も、今までは元夫からの養育費で呑気に子育てして居たが…彼がそんな状態になった為自ら働きに出る事に─。

　だがそのせいで子供の病が悪化…彼女の稼ぎではまともな医療を受けさせる事が出来ず、こちらも大層辛い日々を送って居るらしい。



　一方、私はと言うと…同じ研究職の殿方と偶然あるパーティーで出会い、意気投合してた。

　彼は研究が一旦落ち着き、そろそろ家庭を持ちたいと考えて居ると言う。



　そして彼は子供が大好きらしく、結婚したら早く子が欲しい─。

　今迄のように研究だけに没頭せず、妻や子を大事にしたいと話してくれた。

　
　
　そんな彼は、まさに私の理想の夫そのもので…元々同じ職で気が合うし、将来についての考え方も似て居る私達はすぐに交際を始めた。
　
　そして翌年には結婚式を挙げる事が決まり…私はその日が来るのを、今から心待ちに居て居る─。